カツラオオクワガタは
ベトナムのカオバンの標高約1500㎜地点の灯火で採集された個体をもとに
2000年に池田晴夫氏によって記載されました。
カツラオオクワガタ Dorcus katsurai Ikeda,2000
分布:ベトナム北部,中国
体長:オス23.3〜45.0㎜ メス24.0〜29.0㎜
池田晴夫,2000.「北ベトナム産オオクワガタ属の1新種」(月間むし(350):28-29.)によると
「♂.頭部は凸状であり、同属の別種と比較して厚みがある。
複眼はやや小さく、眼縁突起に完全に覆われる。大アゴは細く、著しく扁平である。
上翅の基部両角が顕著に突起する。前脚節が幅広く、やや内側に曲がり、
外縁に3個の大きな突起を具える。符節は、いずれも著しく短い。」(2000.池田晴夫)とあります。
また、Huang Hao & Chen Chang Chin, 2013. Stag Beetles of China Ⅱ中華鍬甲には
同種或いは近縁と思われる個体群が中国の広範囲に分布する図があり
採集難易度はさておき、それらしいものが、それなりの数いると思えるため
この系統に関しては、混沌として暫定的な状況がしばらく続くように思います。
↓ 雲南省産野外個体オス 約22㎜
カツラオオクワガタが記載された2000年頃は、さながらクワガタブームの中にあり
カツラオオクワガタや、ノセオオクワガタはそのうち入ってくるだろうと思っていたら
いつの間にか20年ほどが過ぎてしまいました。
つまり、カツラオオクワガタやノセオオクワガタは、それほどめでたいわけであります。
↓ 雲南省産野外個体 オス約22㎜・メス約23㎜
↓ オス
↓ メス
上翅点刻列について
入手した雲南省産カツラオオクワガタ(22㎜)オスの上翅点刻列は
上翅会合線から4列目と5列目の点刻が繋がるような曲線になっており
インターネット上でも同様の特徴を持った
広西省産(28㎜)・四川省産(24㎜)とされる画像を見ることができました。
そして、スキットオオクワガタでも探してみたのですが
同様の点刻列は、見つけることができませんでした。
↓ 点刻は途中で途切れる
↓ 上翅会合線から4列目と5列目の点刻が繋がるように接近
↓ オス・メス
カツラオオクワガタとよく比較される種に
スキットオオクワガタ Dorcus sukkiti Fukinuki,2004 があります。
今回もカマキリ名人Kさんにスキットオオクワガタの画像をいただきました。
ありがとうございました。
↓ スキットオオクワガタ カチン産飼育個体オス約36㎜ メス約30㎜
↓ 36㎜オスの上翅
↓ メスの腹面
カツラオオクワガタ・スキットオオクワガタともに前脚を伸ばして硬直することがあり
仮に、移動手段に歩行が優先されるなどして行動範囲が狭い場合
地域差の出やすいことも考えられます。
↓ 前脚を伸ばして硬直するスキットオオクワガタとカツラオオクワガタ
飼育開始
入手した野外個体は現在ゼリーを食べていますが
産地の気候は7・8月が18〜27度ほど、12・1月が2~16度程度です。
標高を無視して緯度だけ見れば、奄美大島と同じくらいに位置します。
現地でも今は冬季にあたると思われ、早々の産卵は厳しいかもしれませんが
念のための産卵セットは、コナラ産卵木と大きめのブナ朽ち木をマットで埋めました。
↓ コナラとブナの朽ち木をマットで埋めただけのセット
↓ 交尾時間は短く、多回
小屋の温度は、冬季16〜19度くらい、夏季25度前後です。
めでたいカツラオオクワガタには少し大きめの容器で欲張り
棚の隙間を一つ埋めました。
参考・引用文献:
池田晴夫,2000.北ベトナム産オオクワガタ属の1新種.月刊むしNo.350..むし社.
藤田宏,2010.世界のクワガタムシ大図鑑・6.むし社.
Huang Hao & Chen Chang Chin, 2013. Stag Beetles of China Ⅱ中華鍬甲.
Formosa Ecological Company.
2015.BE・ KUWA No.54.むし社.