予報は曇り雨だったが、日がさしていて降りそうにない。
密を避け山里を歩くことにした。
人には誰一人として会うことはなかったが念のためマスクは
用意しておいた。
山の片側が急な斜面になっている。
卯木(うつぎ)が群生していた。
白い花がほろほろとこぼれるように咲いている。
ところが急に木の枝が揺れ出したのでヘンだなと思っていると
猿が一匹山を登ろうとしているのが目に入った。
風もないのに枝が揺れて不自然だった理由がわかった。
猿はあっというまに崖のような斜面を垂れているツルなどに
つかまりながら登ってゆき姿を消してしまった。
このスピードはすごい。
オリンピックでボルダリングにでも出たら金メダルまちがいなしだ。
もっともホールドと呼ばれる突起がなくて、かわりに木の
ツルがぶら下がっていただけだったのだが。
卯の花を 散らして猿の 逃げにけり