放菴日記抄(ブログ)

これまでの放菴特集・日記抄から「日記」を独立。
流動的な日常のあれこれを書き綴ります。

石田組!(inふくしん夢の音楽堂)

2024年02月14日 00時37分19秒 | 観劇日記
2024年1月27日。福島・「ふくしん夢の音楽堂(福島市音楽堂)」に石田組のコンサートを浴びに行きました。
 
 福島駅からバスの乗って音楽堂を目指す。
 このバスの運転手さんがとても丁寧。
 「皆さん、今日は音楽堂のコンサートに行かれるんですよね」
 はい、普段よりも乗り具合が多いようで。
 「音楽堂へは〇〇バス停降りましたら左へ行くと近いですよ。帰りは向かいのバス停から駅へ行けますんで。」
 なんて親切・・・。
 タクシーの運転手との会話であれば、このくらいパーソナルな応答はしてくれるだろう。ところがこれは乗合バス・・・!
 バスって他にアナウンスしなければならないことが多いから、それ以上案内できる余裕なんて無いと思っていたけど、この対応はすごい。予め今日はこの路線を利用する人が多いことを把握し、どういう案内をすれば役に立つかという配慮を考えてくれたのだ。仙台ではコンサートあるからってこんな対応してくれるかどうだか・・・。

 さて夢の音楽堂は古関裕而記念館に隣接している。古関への顕彰の意味合いが強い。
 一度中に入ってみたかった。ふくしん夢の音楽堂の大ホール。

 天井高い・・・!
 正面には巨大なパイプオルガン。
 ゴシック建築のピア(束ね柱)を思わせる垂直の装飾壁。それがパイプオルガンを真ん中にずらりと並ぶと、まっすぐ伸びるオルガン金管パイプがさらに際立つ。 
 カトリック聖堂みたい。
 
 時間とともに客席が人で満ちてゆく。
 みんな公演についての期待を仕舞っておくことができず、誰彼ともわならない声が今日の話題を口にする。それがさざめく波のようにホールのあちこちから湧いては消え、また湧いて消えてゆく。
 まるで開演前のルーティン。
 
 間もなくブザー。
 登場する10人の演奏者。もちろん最後にゆっくり出てくるのが石田組長さん。
 今日もカッコイイ。

 弓を構えると小さくチューニング。ホントにちょっと音を出すだけ。これだけで10人の音色がピタッと合ってしまう。これはもはや調律というより規律に近い。
 すぐに音楽が始まる。冒頭はシベリウス「アンダンテ・フェルボージョ」。仙台で聴いて以来すっかり大好きになった一曲。
 
 おや。

 音が深い。リバーヴが効いている。
 「アンダンテ・フェルボージョ」が別物に聴こえる。
 これがこの音楽堂の特徴なのか。

 きっとこの音楽堂はパイプオルガンの残響をより深くするために設計されているのだろう。
 音楽ホールによって音の響きが違うということなのだろうけど、おんなじ奏者でおんなじ曲を聴き比べるなんて滅多にできる体験ではない。すごくおもしろい。
 
 きょうもプログラムはさくさく進む。
 前半はノーМC。こういう小気味よさはクラシック慣れしていない自分にはありがたい。

 大好きな「アンダンテ・フェルボージョ」に「ニュー・シネマ・パラダイス」も聴ける。
 でも今日の最大の楽しみは、なんと「ボヘミアン・ラプソディ」。
 言わずと知れたクイーンの名曲。
 とにかく石田組は音がキレイ。だから一層楽しみ。(つづく)
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石田組2023-The First Inpact

2023年12月02日 23時31分43秒 | 観劇日記
2023年12月1日、東北電力ホールにて19:00開演。
それは、おもむろに始まった。
シベリウス「アンダンテ・フェスティーヴォ」。
その瞬間に僕は天上高く舞い上げられたような錯覚に包まれた。

空はいちめんエメラルドグリーン、藍色、孔雀石色、あらゆる種類の青と緑がきらきらと鋸歯形、あるいはあらゆる抽象的なモザイクに編み上げられてゆく。たえず色彩は透明でうつろい、模様はゆらめく。天地というものはなく、ただひたすらに輝く空だけがうごめいている。

なんだこれは。
目を開けると、木目調の茶色いステージに黒い服を来た奏者が10人立っている。
(正確にはコントラバスとチェロ✕2の合計3人は座っていた・・・)
目を閉じると再びターコイズ色の光のモザイクが頭上を覆ってくる。

それが弦楽器の奏でる音から来る幻覚のようなものだと気がつくのにしばらく時間がかかった。
仕事帰りで直行したので確かに綿のように疲れてはいたが、こんな不思議な体験をするとは思わなかった。

その繊細で緻密な音は奇跡に近い。
これが形も大きさも制作時代も異なる弦楽器が一斉に奏でていることを思えば、奇跡の度合いはますます大きい。

クラシックのコンサートはほぼ初めて。聴き方もエチケットも知らない。
とにかく咳払いなどしないで、じいっと聴こうと思っただけ。
最初の一曲目からその鮮烈な世界観に一瞬で連れて行かれた。

石田組長・石田泰尚さんのことはNHKのコンマス特集の番組で知った。
その硬派(?)な風貌と繊細な音色のギャップに驚かされた。
で、BELAちゃんが石田組コンサート情報のリサーチを始め、仙台公演を察知。チケット確保に至る。毎度ながらBELAちゃんの「引き」の強さは驚異的。ありがとう。

前置き無しでおもむろに始まった演奏。
前半MC一切なしでプログラムがどんどん進んてゆく。
合間のチューニング(調律)も手早い。
勿体ぶっているところが一秒もない。
「とにかく聴け。そして感じろ」という風で小気味よい。
ステージは一切の飾りつけがない。照明も動かない。
楽器用のマイクもない。
ただ、名器と超一流の技術で紡ぐ音だけがホールを満たしてゆく。

この上ないほど贅沢なひと時でした。
弦楽器って、こんなに自由なの?こんなに表現できるの?

アンコールで「津軽海峡・冬景色」を、まさかのナマ声でご披露いただいたのは驚きました。
組長さん最高。会場も大喝采。

世の中にはまだまだいい音楽がいっぱいありますね。
であえてよかった。
来年の福島公演も行きたい!
パイプオルガンのあるホール「夢の音楽堂」へ!
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ゴホン!と言えば、「田沢湖ビール」4

2022年09月18日 23時54分38秒 | 観劇日記
 七頭舞(ななずまい)の梵天が頭の中でヒラヒラしている気分で劇場の外に出ると、やっぱり雨でした。
 止むはずないか・・・むしろさっきより強い?
 二人で傘を差して温泉ゆぽぽへ移動。っても入浴じゃあないです。併設されているお食事処「ばっきゃ」へ。
 ばっきゃ、て何? フキノトウのことです。ワラビじゃあないです。
 東北地方の方言でフキノトウは「ばっけ」「ばっかい」などと言います。語源は不明(諸説あり)。アイヌ語説もあり、時空のロマンさえ感じます。
 角館-田沢湖周辺の地名にはアイヌ語源と思われるものが多いし。あ、あんまり関係ないか。

 食事処「ばっきゃ」には公演を観終えたお客さんと思われる組がいくつか見えました。我々もその一組。
 さっそくメニューを開きます。お目当てはもちろん田沢湖ビール!
 すると、龍のロゴが大きく描かれたビールに目が行きました。
 なに、ドラゴンハーブヴァイスとな?
 妙に清涼感のあるロゴで、ビールらしくない?
 とんでもないコラボをしましたね。と思わず思いました(なんじゃソレ)。

 現在わらび座ではミュージカル「ゴホン!といえば」を上演中です。
 これは秋田出身の蘭学医・藤井玄信が秋田藩の秘薬「龍角散」を世に広めてゆくお話だそうです。
 
 なるほど。つまり、ドラゴンハーブヴァイスとは? このミュージカル上演で実現した、あの喉飴とヴァイスビールのコラボ・・・?
 ・・・どんだけチャレンジャーよ。ここを。この2つを掛合わせるなんてスゴいな。
 いやそれよりも、今は飲むか飲まないかだ。どっち?オイどっちにするの?
 「飲む?ドラゴンハーブ。」
 BELAちゃんが訊く。はい・・・。飲みましょう。
 「私は別のにする。」
 えぇぇ・・・。
 
 注文したドラゴンハーブヴァイスは美しいビアジョッキで来ました。
 背が高くてスリム。普通のジョッキと違い、スリムは泡が消えにくいようです。
 こういう酒器、憧れるんですけどねぇ。でもウチ置くところないし。

 BELAちゃんは「桜こまち」。かわいいグラスで登場。口当たりの柔らかいビールです。

 さて、いただきましょうか。ドラゴンハーブヴァイス!
 まずは香り。
 そのまんまの香りです。よく口にするのど飴の香り。
 ビアグラスに口をつけます。味もそのまんま。
 ビールなのに喉飴。いや喉飴なのにビール。ってどっち?
 すこし混乱している。鼻にハーブの爽快感が抜けてゆく。
 マズイとは思わない。むしろこれはこれでアリです。少なくとも清涼飲料としては成立していると思います。
 思いっきり汗かいて、喉が渇いてヒリヒリするくらいの時に飲んだら楽しそう。
 逆を言えば、肉料理を食べながらは難しいのかな。個人的な感想ですが。

 BELAちゃんは「桜こまち」に続いて「ブナの森」を注文。
 こちらもエレガントな小グラスで登場。このビールもおいしいんですよ。
 ビールの歴史を語るまでもなく、ヴィルヘルム純粋令(1516)を引き出すだけでビールは説明できてしまうのですが、要するにビールは「麦芽・ホップ・水・麦芽」だけを原料とするものです。日本では、ここにお米が入ったり、または別なもので発酵させたりして一時期ビールはどんどん変態化していきました。
 ビールの原点回帰を目指す「クラフトビール」という産業が各地で成功するようになってきて、しみじみビールって美味しいなぁと思って飲むようになりました。やっと日本にもホンモノのビール文化が開花したのです。ありがとう!クラフトビール。
 
 お食事処「ばっきゃ」の極上メニューといえば「御狩場焼き」。
 鋤鍬を模した鉄板の上で肉がジュウジュウ言っているところに箸を突っ込みます。
 お次のビールはヴァイス。無濾過なので少し酸味があります。
 すべてを平らげるころにはお腹がはち切れそうになっていました。ビールだけで1リットル呑んだ・・・。
 そりゃ苦しいわけだ。
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ゴホン!といえば、「田沢湖ビール」3

2022年09月14日 01時18分07秒 | 観劇日記
 「わらび座 夏の特別公演」はこれまで上演してきた演目からのオムニバスという形で進行されます。劇団の総力が結集された、全力全開のパフォーマンスが次から次へと展開します。まずミュージカル「銀河鉄道の夜」のオーバチュアで始まると、劇場は一気に四次元幻想の世界へ旅立ちます(そういえば、さっきまで列車に乗ってたっけ)。
 旅は東北の各地を皮切りに全国の現在・過去へと時空を超えて繋がってゆきます。
 
 わらび座がすごいのは、劇団であり歌舞団であること。
 歌い、唄い、謡い。踊り、躍り、舞う。
 男踊り、女踊り、手踊り、
 死者の踊り、生者の舞踏、そして神の舞い。
 海の恵みがたっぷり詰まった重い網をひく手。
鋭く突き出した櫂。
 一糸乱れぬ樽太鼓。
 神降らすような波動で空へ伸びる声。
 一個の虎になりきる合せ技。
 全方位の表現力を観せるため、少しも手を抜いていない。その研鑽はとてつもなく深いのです。「藝能」とは、理に叶った美しさとあらゆるものを超えて顕れる驚きと明快さ。簡単に云うと、んー難しい。要するに「すごい」。
 唄は日高見へ、または琉球へ。
 
 究極の技ではないかと思ったのが「盆舞」。
 手のひらにお盆を載せて踊ります。盆を握っているのではありません。手のひらに、載せているだけ。
 次の瞬間、手のひらをくるっと下へ、そのままくるくるっと一回り。
 今度は手を上からぶぅんと下までお盆を載せたまま振ります。何度も何度も。

 ど、どうなってんの?
 普通こんなことすれば、お盆を落としたりどっかに吹っ飛んでいっちゃうような気がするのですが、どういうわけかお盆は手のひらにぴたりと貼りついて離れない。
 今度はお盆を持ったままでんぐり返り。あり得ない!あり得ない、コレはあり得ない!
 もう一度でんぐり返り。両手にお盆を載せたキレイに廻ること・・・。
 つぎの瞬間、ポロッとお盆が手のひらから落ちました。素早く拾い何事もなかったようにお盆を振り回す。
 実はここのところすごく大事。
 もしもここをノーミスで演ったなら、綺麗すぎて、恐らくどれだけ難しいことをやっているのか判らなかったでしょう。
 演者には悪いのですが、このアクシデントには盆芸のリアリティを裏付けた大きな意味があります。
 お盆が手のひらからこぼれたからこそ、これがトリックでもズルでもなく、シンプルに難しい技の披露であることを理解できたのです(あれだけお盆を載せて舞ったのに、お盆が離れたのがあの一瞬だけだったことにも驚きです)。やっぱりすごい。
 
 ずうっと圧倒されたままいつの間にかフィナーレへ。
 身体はすっかり熱くなり、お尻までむずむずです。あまり感情を表に出す習慣のない自分にとって、誰かが爆発的な表現をするのにシンクロして、内面でカタルシスが起きる場合があります。劇場ではそれが罪ではない気がして、こっそり発散しています。

 今日は良かった! すごく楽しかった。
 まだ身体が熱い。劇場はもうすっかり幕が降りているのに、膝がしびれているような気がして、さっと立ち上がれません。
 ありがとう。来てよかった。

 おっと、まだタイトルの謎解きしていないですね。
 それはこの後で。
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ゴホン!といえば「田沢湖ビール」2

2022年09月11日 18時16分09秒 | 観劇日記
 劇場に足を運ぶ人には、いろいろなタイプがあるでしょう。
 劇場の雰囲気が好きな人。
 上演する演目に興味がある人。
 出演者に興味がある人。
 誰かに誘われた。
 もの好き。
 逆を言えば、これらのどれにも該当しない人は劇場に足を運ぶことはないかもしれません。けど、声を大にして言いたい。一度行ってご覧なさい。

 「献身」、という言葉が適切かどうかわかりませんが、この場を創り出すためだけに、どれほどの準備、鍛錬があったことか。それを劇場で惜しげもなく放出する。この行為は少なくとも「献身」という行為にとても良く似ています。そこから感じられるのは、パワー、躍動、またはあらゆる感情。不思議なことにそれらは、舞台からではなく、観ている我々の心の底から沸き上がってきます。まるで操られているよう。歳を取れば取るほど、現実でいろいろな物を見れば見るほど、容易く、いろいろなスイッチが勝手に入ってしまう。これが演劇であれば、あらゆる感情が勝手に出てくる。感情を抑え込む方法もあるのでしょうが、わざわざ劇場に来てそんなことするのはお金の無駄っていうものです。演者の献身を受け止めてこそ、劇場という空間は成り立つのです。

 前置きが長くなりました。勿体ぶった言い方でごめんなさい。
 では、「わらび座 夏の特別公演2022」について、ゆっくり語りたいと思います。
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ゴホン!といえば「田沢湖ビール」1

2022年09月11日 11時05分15秒 | 観劇日記
 「ゴホン!といえば・・・」
 昔からよく観た喉のお薬のCMです。
 そう「龍角散」。
 これは秋田藩の秘薬「龍角散」が基になっているそうです。
 横手で高速道路を降りて、みずほの里ロードをあきた芸術村めざして走ると、美しい田園地帯が広がっています。CMでも取り上げられていましたが、今でもハーブを栽培しているそうです。

 前置きが長くなりました。
 2022年8月18日、「わらび座 夏の特別公演」を観に行きました。
 久しぶりBELAちゃんと二人旅。子育てが終盤になってくるとこういうことが出来るようになります。
 みずほの里ロードの話をしましたが、今回は田沢湖ビールという楽しみがあるので秋田新幹線で移動。
 大雨が通り過ぎたばかりの東北地方。車窓から見える江合川も鳴瀬川も北上川もみんな茶色い水であふれそうです。まわりは一面肥沃な耕土。大事な季節だから水は欠かせないけれども怖くもある。被害の少ないことを祈るばかりです。
 仙岩トンネルを抜けてからも見える山の川はやはり濁流。岩を噛むというよりは茶色い爪で岩を鷲掴みにしているよう。この茶色い水があきた芸術村のすぐそばにも流れているはずです。怖い思いをしたかもしれません。
 角館駅に到着。仙台からは90分くらいで着いてしまいます。新幹線って速い。車と違って楽。

 駅舎から出ると少し雨が降っていました。今日も天気は良くないようです。
 急いで角館のクーポン券を買い、待っていた送迎車に乗り込みました。開場まであまり時間は無いようです。
 あきた芸術村-わらび劇場は、雨の中、大屋根を濡らしてどっしりと立っていました。 (つづく)
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唐招提寺御影堂障壁画

2020年09月24日 23時55分30秒 | 観劇日記
連休最終日に行ってきました。宮城県美術館。
現在、震災復興祈念企画として東山魁夷の唐招提寺御影堂障壁画展(9/19-11/1)が開催されています。

日本人なら一生のうちに見ておいたほうがいい、または行ってみたほうがいいものがありますが、この障壁画も間違いなくその一つ。特に唐招提寺の御影堂は一般公開されていないので、奈良に行ったって見ることができないのです。
こういう特別展こそが貴重な機会。
以前、仙台市博物館で唐招提寺展を開催しており、その時には鑑真和上の尊像が来仙してます(なんと露出展示でした!)。
不思議な尊像で、ぼうっと眺めていたら、肩のあたりがゆっくり動いているのが見えました。まるで呼吸しているよう。それを特に奇異とも思わず、生き写しだからまぁそんなモンだろうと理解(?)したのを覚えています。幻でも見たのでしょうが、あまりにも自然すぎて、自分の見たものをそのまんま信じています。

で、今回はその尊像を取り囲む障壁画です。
展示室に入り、仕切り壁の向こうに歩を進めると、そこに障壁画が。
「濤声」と題する大画面が、自分という存在を一瞬にして消し去ってしまいました。
そこには逆巻く波の音と、
引き波の静寂と、
また岩礁に打ちつける轟音と、
波の音を吸い込む砂浜と、
そして少し鹽の焦げたような磯の香りでいっぱいでした。

それにしてもなんて綺麗な碧色でしょう。しばらく磯の風に包まれて、碧を堪能していました。

裏に廻ると一転して水墨画の世界。
「桂林月宵」「揚州薫風」「黄山暁雲」と大陸の景色が続き、再び「山雲」では群青から紺碧、碧と移り変わる山の気配が包み込みます。
霊山の巒気(らんき)を知っている人ならば、山全体が呼吸しているかのような、ただならぬ気配に囲まれて、畏怖の感情が湧き起こってくるのではないでしょうか。

絵についての解説はしません。
多くの方がよくご存知でしょう。ただこの壮大な空間と出会えた奇跡だけが、今も僕の身体の中に泉のように清く湧き出ています。



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マハーバーラタ(~憎しみの連環から~)

2018年09月17日 03時20分53秒 | 観劇日記
 まだ神と人との境界が明確でない遠い遠い昔。
 物語は破滅へと疾走していた。
 憎しみは煮えたぎって、醜く爛(ただ)れて、膨れ上がり、連鎖する。
 そして発する者、堪える者に熱き喘ぎをもたらす。
 人は、こんなにも誰かを憎むことができるのか。
 この感情を理解できるならば、私たちもいつか同じことを誰かにしてしまうのだろうか。


 平成30年9月16日(日曜日)、仙台市青年文化センターにて「幻祭前夜―マハーバーラタより」を観てきました。
 世界三大叙事詩のひとつにしてヒンドゥーの聖典「マハーバーラタ」より、一族が二つに割れて憎しみ合い、激しく争う過程を切り取って今回は上演しています。ある意味この叙事詩の主題と言ってもいい部分だろうと思います。
 「だろう」とは、「マハーバーラタ」自体をはじめて観るから。
 聞けば内容は聖書の四倍。登場人物も多くて、しかも複雑。その一部だけ切り取ったといっても、かなりの人数です(しかもヒンドゥーの名前なので覚えにくい)。
 それをたった9人の演者と2人の演奏だけで表現しているのです。時には仮面を被ることで人物を演じ分けたり。驚異的かつ緻密な構成と言ってよいのではないでしょうか。
 さらに驚異的なのは演者の身体能力。
 バリ舞踊、京劇、琉球舞踊、バレエ、フォンジューン、柔術(やわら)、そして超人的な舞踏。
 圧巻でした。そしてその動き中に、確かに「アジアの野趣」のようなものを見かけた気がします。
 体軸を立て、深く腰を落とし込む。跳んでも跳ねても最後は地に踏み込む舞踏。
 それは舞踊と武術が表裏一体であることも示唆しています。労働も然り。
 西洋のバレエやダンスも入りますが、やはり漂うのは「アジアの野趣」。
 これに沖縄の舞踊と謡いがよく合います。同じ野趣を受け継いでいるのでしょう。                                    
 激しい動き(カラミ)、激しいパーカッション。飛ぶかう異なる言語。
 どこまでもどこまでも太古の叙事詩に引きずり込まれてゆきます。


 まだ神と人との境界が明確でない遠い遠い昔。
 物語は破滅へと疾走していた。
 疾走は続き、今も続いている。
 願わくば、幻祭たることを。
 そのことなら、ユディシュティラがすでに死王にお答えしております。
 豊かさ、幸せ、
 みんな正しい方法で求めていないのです。
 願わくば、幻祭たることを。
 どうか。どうか。
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観劇日記「シネマ歌舞伎 阿弖流爲」

2016年07月18日 01時58分35秒 | 観劇日記
観ました。
劇団☆新幹線エンパワメントした歌舞伎「阿弖流爲」。

阿弖流爲は市川染五郎
坂上田村麻呂に中村勘九郎
謎の女・立烏帽子に中村七之助。

新橋の演舞場に19台もカメラを置いて上演(撮影)されたそうで。

まぁー殺陣がすごい。
みんなよく動く。
(直刀の時代にあんな円を描くような刀の使い方したか疑問だけど)

エミシの剣も鉄器だという割に青銅剣みたいなのはなんでだろう?って思うけど。

阿弖流爲の強さと悲しみが不思議な色を放っている。
田村麻呂の飄々としていて、だけど正義感の塊みたいなエネルギーが気持ちよかった。
そして謎の女・立烏帽子。
一言で言えば美しい。世話物とかで見る若娘よりもずっとキレイだったかも。歌舞伎ってなんでもアリなんですね。

御霊御前と右大臣の底知れぬ恐ろしさも、うん、恐ろしかった。

大掛かりな構成で、時間も長い。
あんまり長いから、映画なのに休憩が入る。

コレ、ナマで観たかったなぁ。
東北には来てくれないもんなぁ。そんなステージ組める舞台もないし。

ずしん、と来る満足度でした。
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室生寺展 いきました

2014年08月26日 01時04分08秒 | 観劇日記
2014年8月24日、仙台市博物館で開催されていました「室生寺展」を観覧しました。

実はこの日が展覧会最終日。

夏の盛りは過ぎたとはいえ、30度超えの真夏日。駐車場もいっぱいで、追廻(おいまわし)住宅の方に臨時駐車場ができていました。
そうなると、正面まわるより巽門(たつみもん)跡から入った方が近かったりします。木陰多いし・・・。

で、館内に入ってびっくり!!!

行列だぁぁ!
それもトエハタエ(一重二重)に。
幸いBELAちゃんパスのおかげで早めに入れましたが。

で、中に入ったら、やけに背の高い黒福の人が数人。
なにこれ、SPじゃん?

なんと、某大臣が観覧していました。
お側にはなんと、室生寺の座主さまとおぼしきお姿。

これは博物館はシッチャカメッチャカだったんじゃぁなかろうか。
ただでさえ今回の展示は露出展示が多い。

圧巻の十二神将(精悍で愛嬌もあって、質感、バランス、発するエネルギー、紛れもない一級品!!!)
ふくよかな頬の十一面観音。しかも光背を取り外しているから、後部のお顔もしっかり拝めます。暴悪大笑面は一生拝めるかどうかもわからない貴重なもの!!!
そして地蔵菩薩に文殊菩薩。(よーするに本尊以外は全部来ているってこと。 しかもコレ全部、露出展示。)

っていう・・・、ただでさえ神経磨り減るような展示なのに、そこへ大臣!座主!SP!トドメに最終日を惜しむ観覧客!!

誰です? こーいうブッキングしちゃったの。

こっちは観覧二回目なのでつぶさに見るようなことはせずに、もういちどじっくり見たい、というものばかりを見てきました。

ちょっと疲れた。
来てくれた室生寺の仏様たちには感謝だけど・・・。
博物館も大変だっただろうな・・・。




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