放菴日記抄(ブログ)

これまでの放菴特集・日記抄から「日記」を独立。
流動的な日常のあれこれを書き綴ります。

「四十(しじゅう)の手習い」

2008年12月21日 02時49分31秒 | Weblog
 保育園の発表会の終了の後、一週間くらいは周囲からの反響があった。
 保育園の先生からも「年長組保護者の出し物、よかったよ」とお褒めのコトバを頂いた。
 魔女のすがたで進行役をしていたBELAちゃんも、意外にもある園児から「Mクンのお母さん、『魔女』可愛かったよ。」といわれご満悦。
 僕も先生からピアノをホメられたときには、「いや、四十の手習いですから」とやらしー謙遜をして見せた。

 しかしあれ以来ピアノを弾いていなかった。
 弾きたい曲も見つからないし、弾く理由も特にない。「弾く理由」とはつまり、「誰が聴いてくれるのか?」ということ。あさましいけれど、これがないと弾く方としては萌えないらしい。発表会の前までは、表には出さないまでも神経過敏になって一人テンパっていたくせに・・・。

 そんなある日、「Mクンのパパ、卒園式で『Let it be』弾かない?」と保育園の先生に言われた。
 「はあ、」
 「誰ぞ聴いてくれんモンかいな」とか考えているくせに、いざお誘いがかかると、「いや、発表会はみんなでやったのに、ピアノだけ目立つのは本意じゃない」という、堅苦しい考えが影を落とす。(つまり、他のパパママさんとあんまり親しくないからこーいうクサいとこを無視できないわけで。)

 それでもその夜は、久しぶりにピアノのフタを開けた。
 発表会いらい、4~5日ぶりだった。
 えーっと、「Let it be」の出だしって、たしかこう・・・。あれ・・・?
 
 指が乗らない。指が思うように動かない。ぎこちなく、たどたどしい。
 ええーっ、ONEフィンガーに逆戻りかよっ。
 
 ためしに「ポニョ」を弾いてみる。やっぱり弾けない。指が止まってしまう。
 こりゃ驚いたね。「ポニョ」まで身体から出ていっちゃった。せっかく指が動くようになったのに、毎日鍵盤にさわっていないと指はすぐにサビつくらしい。
 なるほど、良くも悪くも「四十の手習い」。毎日鍛錬していないとすぐ無に帰するのか。

 翌朝、次男Mクンに「ポニョ弾けなくなっちゃたよ」と話すと、すごくがっかりしたような顔をした。
 自分だってがっかり。それにしても勿体無い。できることならば「四十の手習い」を継続したい。ピアノは指の運動を通して脳の活性化にもよさそうだ。最近めっきり記憶力が落ちてきた。思考力の継続性も悪い。ブログ書いていても能率がわるいったらありゃしない。何かで自分の内部を鍛えなきゃ。

 I still gonna be charanger!

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コムギコとケダマは違う!

2008年12月06日 16時02分15秒 | Weblog
 COZY、BELA、次男坊Mとベーカリーコーナーのパンを買って食べた。その時の会話。

 BELA「最近、やっぱり不況なのかしらねー、パン食べてても何だか小麦粉の量が少ないような気がする。」
 COZY「そうだね。」
 M「コムギコってなーにー?」
 COZY「パンの中に入っている白いのだよ。」
 M「このコナコナ(パンくず)のこと?」
 COZY「そうそう、」
 M「これって、靴下にもくっついてるよねー」
 COZY「それは毛玉。」

 以上、昼下がりの他愛もないボケでした。
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ポニョ戦紀7(最終回)

2008年12月06日 00時32分44秒 | あんなこと、こんなこと、やっちゃいました
 12月に入った。
 ここまできたらもう、やり残したことなんて何もない。本番で全てを出し切るだけ。
 の、筈だったが、実は二週間前から不思議なジレンマに悩まされていた。

 ピアノに向かって自己完結しちゃうのがなんとも淋しくなってきたのだ。
 演目では、いくつかの流行曲を披露する。「ポニョ」はそのラスト。つまりラストまで僕の出番はない。それに振り付けとかをにぎやかに話し合っているママさん達(一部パパさん)と違って、こっちは黙々とピアノに向かい合うだけ。練習もウチで一人で出来てしまう。この自己完結っぷりに何ともいえない物足りなさを感じはじめていたのだ。

 淋しさは、ときには大人気ない妄想を生む。
 ― もしかして「ポニョ」にピアノは要らないんじゃないの ―
 ― 誰も「ポニョ」を伴奏付きで歌うってこと知らないんじゃないの ―
 ― いつの間にか、「ピアノはナシってことで」とか決まっちゃっていたりして! ―
 小心物である。
 表面上は気にかけないようにしていたが、こういう妄想は、自律神経に悪さをする。
 動悸、めまい、頭痛、便秘。
 以前はたまらなくなって文句を言ったり、自分を激しく嫌悪したり、そりゃーもう大騒ぎをした。

 けどさすがに40歳。ここは耐えなくちゃ。大丈夫、大丈夫。なすべき事を、なすべきタイミングですればいい。

 12月5日、いよいよ本番。
 と、ここでアクシデント発生。
 保育園でインフルエンザ罹患児童が発生した。
 ― ○○ちゃんのパパさんが発表会に出場できない ― 
 こりゃ大変だ。三人トリオで練習してきたチームのパパさんが心配している。
 
 そうだ、代わりに出ちゃお!
 自分でも信じられないことだけど、突然、そう思った。多分、この八方ふさがれたような状況をなんとかしたかったのだろう。
 流行曲にうといのに、ほとんどぶっつけ本番で踊ることにした。
 もちろんまともに聴いたこともない曲。
 
 駆け足でフリをレクチャーしてもらう。
 とにかく三人トリオであればいいのだ。あとは見よう見マネでなんとかしちゃえ!

 ガウンジャケットの代わりに白衣(笑)を着て、ボアはクリスマスモールを首に巻いて完成。
 曲と同時にステージに飛び出した。
 パパさんたちの出す小さな合図を見逃さないようにしながらも、とにかく手を振り腰を振りくるくる回ってついでにモールも振り回してさっとソデに引っ込んだ。
 短い時間なのに汗びっしょり。短時間に集中するのって、消耗するねぇ!
 でも気を抜いている場合ではない。
 
 すぐ「ポニョ」の衣装に着替える。チョコレート色の三つボタンスーツ、赤い蝶ネクタイ。
 一曲はさんで次が「ポニョ」だ。すでに「ポニョ」衣装をきたママさんたちがスタンバっている。 

 いよいよピアノの前に座る。
 ママパパさん達がステージに並ぶ間に。息を整える。いつもはカサカサしている指だけど、上気した身体から出た脂汗でじっとりしている。これなら鍵盤の上でつるっといくこともない。ペダルの踏み位置を確認。気持ちが落ち着いたところでステージを見る。まだOKが出ない。
 おそらく保育園のピアノの前に男性が座ることはほとんどないのではないだろうか。背後で見に来てくれた人たちがなんとなくザワザワする。こんな状況でも不思議とアガっていない。緊張と脱力が不思議なバランスで背中を支えている。先に一発出番があってよかった。

 OKが出た。
 指をオクターヴに構える。
 そこから一気に鍵盤を叩いた。
 最後まで自信が持てなかった前奏の部分。ここでコケるとすべてが台無し。
 オクターヴを勢いよく弾き上げる。ここで勢いに乗れれば曲のリズムが生きてくる。
 これが終わりの始まりだー。

 次の瞬間、子供達の元気な歌声が背中にどん、とぶつかってきて驚いた。
 すごい、大人よりうまいかもしれない。 
 ああ、そうだ。そうだよね。「崖の上のポニョ」には子供の歌声がいちばん気持ちいいもんな。
 よし、この声にリズムをシンクロさせよう。
 曲は一回目の間奏に入った。ここではじめてペダルを使う。さらに鍵盤ハーモニカも登場。
 ここから少し鍵盤のトーンを落とす。
 曲のメロディーラインはここからはじまるといっていい。だからここは歌声の邪魔しないように弾く。
 子供達の声が背中にピンピン響く。それにしても、よく歌詞を憶えたな。
 二回目の間奏。ここでトランペットのソロ。上手いんだヨこれが!
 みんな踊る。みんな歌う。だから弾いているコッチが音楽の渦の中にいる。

 さあラストのONEコーラス。「元気に、元気に」と心がけながら(ポニョのカカトが背中を踏みつけるように)弾き上げる。ここを乗り切れば、もう一つの難関、エンディングだ。
 エンディングも入り方が難しい。ここは右手がオクターヴ。ここで音が決まらないとエンディングそのものが始まらない。
 ここを丁寧に弾き通す。焦らず、リズムを崩さず、自信たっぷりに、なによりも元気に!
 静かに鍵盤ハーモニカとトランペットが入ってくる。リズムが崩れていない。すごいよすごいっ。
 最後のFまでしっかり決まった。会場がどよめく。

 おわった。

 BELAちゃんが最後に出演者を紹介する。これにあわせてビートルズの「Ledy Madonna」を弾いた。いぜん楽器屋で楽譜を立ち読みして憶えたフレーズ。それを崩してくずして、わざとラフに弾く。
 額や頬がほてってどうしてよいのかわからない。指も乳酸が溜まりまくっている。ラフに弾く気がなくてもラフになってゆく。んー、だんだんツラくなってきた。
 指が止まっちゃいそうになるのを手首に反動をつけてごまかしつつ弾き続ける。覚悟はしていたけど、やっぱり長いね・・・。
 
 かなり指がダルくなってきたころにようやく紹介は終わった。最後のフレーズをわざとねっちりと弾いて、ステージが終了した。

 ピアノを閉めて、ぴょこっと御辞儀をして、ソデに引っ込んだ。
 おわった。
 おわったね。
 ママパパさんたちとおたがい労をねぎらう。
 おわった。
 おわったね。
 
 これでもう毎晩ピアノに向かわなくていいんだ。
 動悸、めまい、頭痛もこれで解消されるだろう。
 はてしなく続くと思われた、言いようのない焦燥感もどこかへ行ってしまった。
 
 おわった。
 おわったね。

 ふと見ると、BELAちゃんがむこうで笑っていた。
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