放菴日記抄(ブログ)

これまでの放菴特集・日記抄から「日記」を独立。
流動的な日常のあれこれを書き綴ります。

角館ー花巻紀行(マルカンビル三たび)

2018年11月27日 00時19分40秒 | あんなこと、こんなこと、やっちゃいました

 一遍行ってみたかった「志波城」。まさかこんな突然に出会えるとは思っていなかった。ノーマークだっただけに本当に嬉しい。資料館で情報収集してから城壁へ向かう。なんだか中国の城塞都市みたい。要するに築地塀なんだけど、重厚かつ高い。雨のせいか、土肌が濡れて黒い。それがまるで実戦の兵煙に耐えたかのような凄みを醸している。
 正門前に小川が流れている。防御としてあった堀川を復元したものだ。木の橋をわたり、城門に近づく。楼門造りなので圧迫感がある。きっと戦のときは楼門の高層部から矢が雨のようにふり注ぐのだろう。
 しかしここはいわゆる砦城ではない。官衙である。
 おそらく当時この地に住んでいた人々は刃物・飛び道具を人に向けるという概念はなく、あくまでも狩猟に用いるために山刀を持ち歩く程度だったのだろう。人に刀を向けて乗り込んできた朝廷軍は、大した争乱もなく鉱物資源を獲り、食料を取った。もちろん、アテルイのような戦士もあらわれて朝廷軍を大いに悩ませたが、やがてエミシの英雄は討たれた。志波城はアテルイの死後に造られたものだ。
 それにしても古代城塞遺構をここまで空想できる施設はなかなか無い。ここが志波城と確認されるまでは「方八丁」と呼ばれる遺跡の一つと考えられてきた。「方八丁」遺跡は地方官衙の遺跡のこと。丹念に調べれば、それぞれが重要な朝廷の拠点だったのだろうが、残念だけど今解明できることは限られている。
 雨がひどくなってきた。

 再び車上の人となる。時刻はもう正午を回っていた。
 この道はどうやら東北道と並走して南へ向かうらしい。県道13号線かな。信号も少ないし、往来もそんなに多くない。時々スコールのような雨がさあっと降るが、大粒になることもない。マイルドな時間の中を車は滑るように駆けてゆく。
 さて、
 花巻で何見る?

 しばらく沈黙。やがて、マルカンビル、童話村、羅須地人協会との声が挙がった。花巻市内に分散しているぞ。廻れっぺが?
 マルカンビルへ行くのは巡礼のようなもの。
 実は旧マルカンデパートが閉館する直前に名残を惜しんで来た以来である。
 改装・補強されて、どのくらい変化があったのかと思いつつ市街地へ入る。

 マルカンビルは、そのまんまだった。

 花巻の風雪に耐え続けている外壁。
 決してぴかぴかとは言えない、けれどもランドマーク的な建物。
 中に入るとところどころに写真が貼ってある。よく見ると閉館するまでの様子を撮ったものばかり。そうそう。あの時レストランで並んだっけ。長蛇の列すぎて、階段と上階のフロアにぎっしり並んだ。人の重みで倒壊するのではないかと心配するくらい密集していたっけ。

 さてレストラン階(大食堂)。再開してから初の来店。うわぁ変わってない。お店の照明も、テーブルも椅子も、仕切りも。がやがやした雰囲気。そして窓の向こうに花巻市街地が広がっている。
 食券を買い求める。結構並んだ。お目当ては名物ナポリカツ、オムライス、サイコロステーキ、そしてソフトクリーム!
 ん-洋食レストランへのあこがれそのまんま。

 昭和レトロな大衆レストランの特徴って、ナイフ・フォークそして「お箸」という違和感を無理やり通用させていることではないだろうか。そして壁紙までもが調理中の香りを吸いまくった独特の油臭さ。オレンジの照明だったであろう傘がだんだん茶色になってゆく独特の劣化美。タイプこそ分かれるが、老若男女あらゆる人々に喜ばれるお店って、やっぱり共通点がある。さらに老若男女だれでも楽しめるメニューということになると、必ずカレー、ラーメンが登場してくる。あとカツ丼か。洋食の王道ナポリタンと中華の重鎮ラーメン、そして和食のあこがれカツ丼。こういったメニューを無理矢理一同に揃えるのが大衆レストラン・・・っって小難しい御託を並べたけど、要するに隣に座った爺ちゃんがうまそうにマルカンラーメンを食べていて、こっちまで食べたくなっただけのこと。
 でもナポリカツは評判に違わずボリュームすごいし、サイコロステーキは肉が柔らかいらしい。オムレツもソフトクリームも期待通り。まあ、隣のラーメンに目がちらちら行っちゃうけど。
 どうもまた花巻に来なくちゃらいけないらしい。今度はラーメン食いに。

 

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角館ー花巻紀行(雨の一日1)

2018年11月12日 01時29分13秒 | あんなこと、こんなこと、やっちゃいました

 「夏の雨は馬の背を分ける」とはよく落語で聞くことわざ。雨雲がはっきりとした形(積雲)をしていて、そのため雨の降る範囲もはっきりしている。その境にいると、あちらは晴れているのにこちらは急に大雨なんて現象に出くわすことになる。「馬の背」は稜線形なので、その片一方の斜面だけが濡れていて、もう一方は雨が当たっていないという情景を想像しやすい。べつに猫の背でもいいのだが、丸すぎてよく区別がつかないのだろう。猫背だけに・・・。
 バカ話していて気がついたが、雨の中、まだグラウンドから金属バットの快音や声援が聞こえてくる。大丈夫か。大雨だぞ。きっと練習とかではなく、少年野球の大会なのだろう。雨を押して続けているということは、公式戦か。
 風呂に入ろうと様子を見に行くと、いくつかの少年野球チームが宿泊していることに気がついた。なるほどやはり大会だったんだ。後で調べたら、軟式野球の県大会があって、その予選が行われていたらしい。雨の中お疲れ。選手も大変だけど、応援に来た保護者も大変だ。スポ小父母の会経験者として敬意を表します。
 子どもたちをやり過ごして入浴。すっかり暗くなっていた。雨は相変わらず降っている。露天風呂に行くとやや肌寒い。猛暑なのに何だか岩手に入ってから今日はずうっと涼しいまま。浴槽に身を沈めてほっと一息。あれれ、それでもグラウンドが賑やか。
 ・・・熱心なのは子供なのか大人なのか。答えのでない議論が、そこにあります。

 さてあらためて今日のお宿「赤い風車」。
 お目当ては大きなラドン岩盤浴と「九州・沖縄うまいものバイキング」。
 なぜに岩手で「九州・沖縄」?と思ってしまうが、そこはホレ、岩手県民目線なわけで。県内にいながら南国の料理が楽しめる、という趣向だと理解すればそりゃー楽しいわけで。ところがそこに県外から泊まりに来るもんだから話がややこしく・・・ん、「ひゅうが丼」?「ラフテー」?「日向夏ゼリー」?
 難しい話はナシだ。ご飯が呼んでいる。
 
 食事を済ませ、客室でビールを開ける。さっき道の駅で買ってきたビール。岩手のクラフトビールはホップを褒めるべき。キリッと効いていてうまい。防腐剤という役にとどまらず味にも大きく寄与している。利他の精神。さすが賢治のふるさと(そこか?)。もうグラウンドは静かになっていた。雨はどうどうと降りつづけている。

 明くる日(8/5)、世間では日曜日という。
 昨日の子どもたちが風邪引かなかったか心配。おそらく今日も戦いがあるのだろう。
 
 早めに宿を出る。
 すこし雨が残っていたが、昨日ほどひどくない。農道を御所湖方面へ。
 雨にうすくけぶる農道が林のあいだをすり抜けて小さな谷の方へおりてゆく。谷にはこじんまりとした橋が掛かっていて、その先はまた登り道になっている。緑や青の色鮮やかな森や山や谷を乗り越えて、まるでおとぎ話のイメージスクロールが浮かんでくる。実際、絵本のような雫石の森たちは、たとえ小雨日和でも十分に美しいということを知った。
 やがて木々のあいだから湖らしきものが見えてきて、それが進行方向左手に大きな湖として形成されたことを知る。御所湖だ。

 ここからどこへ向かおう。いろいろ案が出たが、花巻に行きたいポイントが集中していることに気がついた。今夜のお宿も花巻だし。
 一旦国道に出て、小岩井農場入り口を過ぎて県道16号に左折。すこし紆余曲折すること暫く、突然大きな城壁のような構造物に出会った。え、ナニコレ。
 旗を見ると「志波城古代公園」となっている。うわ、すごいトコロに出たぞ。

 

 

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角館ー花巻紀行(仙岩峠越え)

2018年11月10日 18時25分26秒 | あんなこと、こんなこと、やっちゃいました
 国道46号線をひたすら東進する。
 はじめはなだらかな田園風景だったが、だんだん勾配がついてきて、周囲も隆起したような地形になってくる。
 山かげから特急列車らしきものが過ぎてゆく。よく見ると秋田新幹線だ。高架橋の新幹線専用架線ではなく、在来線のように地レールの上を疾走する。このあたりは新幹線の路線しかない。在来線はないのだ。これから越える仙岩峠が過酷すぎて、在来線では止まってしまうのかもしれない。だから秋田新幹線が半分在来線のような役割を担っているのだろう。この路線は停車駅も多いし、車両も、やや小柄かな。
 峠の茶屋を過ぎてトンネルに入る。はじめはトンネルも短く断続的だったが、やがて出口をも知れぬ長い長いトンネルに入る。ごうごうと走る車たちの音だけが響く。窓をあけると排気ガスがすごい。ここがいわゆる仙岩トンネル。長さ2.5キロもある。よく掘ったなぁ。このキセキのトンネルのおかげで、秋田-岩手間は冬季も往来できるようになった。ニッポンの背骨、奥羽山脈を貫く長いトンネル。日本の土木技術はすごい。
 トンネルの中で県境を越えた。ここからは岩手県。道も少しずつ下り勾配になってゆく。トンネルの中で下り勾配は意外と怖い。
 やがてトンネル突破。しばらくカーブの多い下り坂が続く。難所だとは思う。それでも仙岩峠をトンネルで真っ直ぐ通過しているので負担軽減にはなっているのだろう。さすがに目が疲れてきたけど。
 やがて道の駅発見。「雫石あねっこいで湯の里」という。ここでトイレ休憩。「いで湯」だから楽しみたいところだが、いかんせん時間がない。それに・・・、だんだん小雨が降ってきた。
 トンネルを出たところから何となく雨雲が広がっている感じがしていたが、やはり天気予報どおりの天気になりそう。東北地方は太平洋側を中心に夕方から雨が降る予報なのだ。さあアイス食って出発だ。
 雫石に入ってから標識が少なくなっていた。この状態は小岩井に近づくまで続くだろう。いちおうお宿までの道は覚えてきたつもりだが、田んぼばかりの道である。ひとつ道を間違えれば日の暮れる頃に全く違う集落に入り込んでしまうだろう。土地勘のない者には恐怖だ。ここはナヴィゲーションの力を借りよう。
 ナヴィの指示に従い、農免道路と思われる道に出た。それをまっすぐ森へ向かうとその向こうに「鶯宿温泉郷」の案内板が出てきた。お宿は近い。もう小雨とは言えないくらいの雨粒。
 グラウンドで少年野球大会らしき集団がいた。雨のなか大変だな。と思ったらグラウンドの後ろに見覚えのある(ストリートビューでだけど)建物が。
 今日のお宿、「赤い風車」到着。わあ、駐車場が土だぁ・・・。
 まごついていると、どんどん雨は強くなるだろう。駐車場は雨土砂まじりになる。建物の脇の方に停めていそいで荷物を下ろす。他の車も同じことを考えているようで後方に車の列ができてくる。家族に荷物を任せて雨土砂の駐車場へ車を向ける。そして本降りになる前に自分も建物に入ることができた。
 実際、これが最良の選択だった。客室に上がる頃にはものすごい大雨になっていた。
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