放菴日記抄(ブログ)

これまでの放菴特集・日記抄から「日記」を独立。
流動的な日常のあれこれを書き綴ります。

雨の角館

2022年09月24日 03時13分37秒 | あんなこと、こんなこと、やっちゃいました
 ビールを愉しんでから数十分後、もう角館駅にいました。
 雨はだんだん強くなっています。
 お目当ての和菓子屋さんまでいけるかなぁ。
 まずは比較的駅から近い「新潮社記念文学館」へ行きましょう。
 
 ちょっと入り口間違えちゃって仙北市総合情報センターの方から入りました。
 エントランスには自習用デスクがソーシャルディスタンス確保しながら設置されており、学生さんが自習していました。
 邪魔しないように足音も少し抑え気味にそっと通り過ぎます。お、あっちは図書館だね。
 脇の連絡通路を通って新潮社記念文学館へ。
 受付で入館の申込み。するとカウンターに復刻版「橡の木の話」(富木友治・作、勝平得之・画)がありました。
 この本は秋田の誇る美術品と言っても良いのではないかと思います。角館の昔話を題材としており、秋田魁新報に掲載されたものです。のちに味わい深い版画が挿絵として装丁されて版行されました。作者の富木は角館出身。版画家の勝平は秋田市出身です。
 角館の文学・美術については平福穂庵・百穂親子が欠かせない存在ですが、「橡の木の話」のように豊かな文学風土があることも角館の自慢としてよいのではないでしょうか。
 そして新潮社を生んだ創業者・佐藤義亮もまた角館の出身です。
 
 雨の日は、本に囲まれるのも悪くない。
 少しカビ臭くて、インク匂いの染みた紙を繰って知らない世界に潜り込むのがまた良い。
 そう、新潮文庫の古い本はそんな匂いがしていた。 
 創業者・佐藤は、出版社で本を刊行する度に必ずこの記念文学館に寄贈していたそうです。
 その中には、今となっては大変貴重な書籍も含まれているのです。
 多くの書籍が新潮文庫として世に出ていく中で、ここ新潮社記念文学館は同じものを蔵し続けているのです。まるで砂時計のように。またはタイムカプセルのように。
 
 タイムカプセルからそっと降りて、元の連絡通路を戻ります。
 折角だから図書館の方も見てみたい。あ、仙北市民じゃないと閲覧できないかな?
 いやいや、そんなことないみたいですよ。
 早速「銀河鉄道の父」を速読。実感としては賢治の死後も賢治の顕彰と高村光太郎への支援を惜しまなかった姿も描いてほしかった。
 BELAちゃんも何か調べ物。ちょっと司書さんにコピーをお願いしたりしていました。

 雨の日に、お互いに本の世界を愉しみました。さあ、そろそろ角館ともお別れです。
 弾丸ながら楽しい旅でした。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ゴホン!と言えば、「田沢湖ビール」4

2022年09月18日 23時54分38秒 | 観劇日記
 七頭舞(ななずまい)の梵天が頭の中でヒラヒラしている気分で劇場の外に出ると、やっぱり雨でした。
 止むはずないか・・・むしろさっきより強い?
 二人で傘を差して温泉ゆぽぽへ移動。っても入浴じゃあないです。併設されているお食事処「ばっきゃ」へ。
 ばっきゃ、て何? フキノトウのことです。ワラビじゃあないです。
 東北地方の方言でフキノトウは「ばっけ」「ばっかい」などと言います。語源は不明(諸説あり)。アイヌ語説もあり、時空のロマンさえ感じます。
 角館-田沢湖周辺の地名にはアイヌ語源と思われるものが多いし。あ、あんまり関係ないか。

 食事処「ばっきゃ」には公演を観終えたお客さんと思われる組がいくつか見えました。我々もその一組。
 さっそくメニューを開きます。お目当てはもちろん田沢湖ビール!
 すると、龍のロゴが大きく描かれたビールに目が行きました。
 なに、ドラゴンハーブヴァイスとな?
 妙に清涼感のあるロゴで、ビールらしくない?
 とんでもないコラボをしましたね。と思わず思いました(なんじゃソレ)。

 現在わらび座ではミュージカル「ゴホン!といえば」を上演中です。
 これは秋田出身の蘭学医・藤井玄信が秋田藩の秘薬「龍角散」を世に広めてゆくお話だそうです。
 
 なるほど。つまり、ドラゴンハーブヴァイスとは? このミュージカル上演で実現した、あの喉飴とヴァイスビールのコラボ・・・?
 ・・・どんだけチャレンジャーよ。ここを。この2つを掛合わせるなんてスゴいな。
 いやそれよりも、今は飲むか飲まないかだ。どっち?オイどっちにするの?
 「飲む?ドラゴンハーブ。」
 BELAちゃんが訊く。はい・・・。飲みましょう。
 「私は別のにする。」
 えぇぇ・・・。
 
 注文したドラゴンハーブヴァイスは美しいビアジョッキで来ました。
 背が高くてスリム。普通のジョッキと違い、スリムは泡が消えにくいようです。
 こういう酒器、憧れるんですけどねぇ。でもウチ置くところないし。

 BELAちゃんは「桜こまち」。かわいいグラスで登場。口当たりの柔らかいビールです。

 さて、いただきましょうか。ドラゴンハーブヴァイス!
 まずは香り。
 そのまんまの香りです。よく口にするのど飴の香り。
 ビアグラスに口をつけます。味もそのまんま。
 ビールなのに喉飴。いや喉飴なのにビール。ってどっち?
 すこし混乱している。鼻にハーブの爽快感が抜けてゆく。
 マズイとは思わない。むしろこれはこれでアリです。少なくとも清涼飲料としては成立していると思います。
 思いっきり汗かいて、喉が渇いてヒリヒリするくらいの時に飲んだら楽しそう。
 逆を言えば、肉料理を食べながらは難しいのかな。個人的な感想ですが。

 BELAちゃんは「桜こまち」に続いて「ブナの森」を注文。
 こちらもエレガントな小グラスで登場。このビールもおいしいんですよ。
 ビールの歴史を語るまでもなく、ヴィルヘルム純粋令(1516)を引き出すだけでビールは説明できてしまうのですが、要するにビールは「麦芽・ホップ・水・麦芽」だけを原料とするものです。日本では、ここにお米が入ったり、または別なもので発酵させたりして一時期ビールはどんどん変態化していきました。
 ビールの原点回帰を目指す「クラフトビール」という産業が各地で成功するようになってきて、しみじみビールって美味しいなぁと思って飲むようになりました。やっと日本にもホンモノのビール文化が開花したのです。ありがとう!クラフトビール。
 
 お食事処「ばっきゃ」の極上メニューといえば「御狩場焼き」。
 鋤鍬を模した鉄板の上で肉がジュウジュウ言っているところに箸を突っ込みます。
 お次のビールはヴァイス。無濾過なので少し酸味があります。
 すべてを平らげるころにはお腹がはち切れそうになっていました。ビールだけで1リットル呑んだ・・・。
 そりゃ苦しいわけだ。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ゴホン!といえば、「田沢湖ビール」3

2022年09月14日 01時18分07秒 | 観劇日記
 「わらび座 夏の特別公演」はこれまで上演してきた演目からのオムニバスという形で進行されます。劇団の総力が結集された、全力全開のパフォーマンスが次から次へと展開します。まずミュージカル「銀河鉄道の夜」のオーバチュアで始まると、劇場は一気に四次元幻想の世界へ旅立ちます(そういえば、さっきまで列車に乗ってたっけ)。
 旅は東北の各地を皮切りに全国の現在・過去へと時空を超えて繋がってゆきます。
 
 わらび座がすごいのは、劇団であり歌舞団であること。
 歌い、唄い、謡い。踊り、躍り、舞う。
 男踊り、女踊り、手踊り、
 死者の踊り、生者の舞踏、そして神の舞い。
 海の恵みがたっぷり詰まった重い網をひく手。
鋭く突き出した櫂。
 一糸乱れぬ樽太鼓。
 神降らすような波動で空へ伸びる声。
 一個の虎になりきる合せ技。
 全方位の表現力を観せるため、少しも手を抜いていない。その研鑽はとてつもなく深いのです。「藝能」とは、理に叶った美しさとあらゆるものを超えて顕れる驚きと明快さ。簡単に云うと、んー難しい。要するに「すごい」。
 唄は日高見へ、または琉球へ。
 
 究極の技ではないかと思ったのが「盆舞」。
 手のひらにお盆を載せて踊ります。盆を握っているのではありません。手のひらに、載せているだけ。
 次の瞬間、手のひらをくるっと下へ、そのままくるくるっと一回り。
 今度は手を上からぶぅんと下までお盆を載せたまま振ります。何度も何度も。

 ど、どうなってんの?
 普通こんなことすれば、お盆を落としたりどっかに吹っ飛んでいっちゃうような気がするのですが、どういうわけかお盆は手のひらにぴたりと貼りついて離れない。
 今度はお盆を持ったままでんぐり返り。あり得ない!あり得ない、コレはあり得ない!
 もう一度でんぐり返り。両手にお盆を載せたキレイに廻ること・・・。
 つぎの瞬間、ポロッとお盆が手のひらから落ちました。素早く拾い何事もなかったようにお盆を振り回す。
 実はここのところすごく大事。
 もしもここをノーミスで演ったなら、綺麗すぎて、恐らくどれだけ難しいことをやっているのか判らなかったでしょう。
 演者には悪いのですが、このアクシデントには盆芸のリアリティを裏付けた大きな意味があります。
 お盆が手のひらからこぼれたからこそ、これがトリックでもズルでもなく、シンプルに難しい技の披露であることを理解できたのです(あれだけお盆を載せて舞ったのに、お盆が離れたのがあの一瞬だけだったことにも驚きです)。やっぱりすごい。
 
 ずうっと圧倒されたままいつの間にかフィナーレへ。
 身体はすっかり熱くなり、お尻までむずむずです。あまり感情を表に出す習慣のない自分にとって、誰かが爆発的な表現をするのにシンクロして、内面でカタルシスが起きる場合があります。劇場ではそれが罪ではない気がして、こっそり発散しています。

 今日は良かった! すごく楽しかった。
 まだ身体が熱い。劇場はもうすっかり幕が降りているのに、膝がしびれているような気がして、さっと立ち上がれません。
 ありがとう。来てよかった。

 おっと、まだタイトルの謎解きしていないですね。
 それはこの後で。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ゴホン!といえば「田沢湖ビール」2

2022年09月11日 18時16分09秒 | 観劇日記
 劇場に足を運ぶ人には、いろいろなタイプがあるでしょう。
 劇場の雰囲気が好きな人。
 上演する演目に興味がある人。
 出演者に興味がある人。
 誰かに誘われた。
 もの好き。
 逆を言えば、これらのどれにも該当しない人は劇場に足を運ぶことはないかもしれません。けど、声を大にして言いたい。一度行ってご覧なさい。

 「献身」、という言葉が適切かどうかわかりませんが、この場を創り出すためだけに、どれほどの準備、鍛錬があったことか。それを劇場で惜しげもなく放出する。この行為は少なくとも「献身」という行為にとても良く似ています。そこから感じられるのは、パワー、躍動、またはあらゆる感情。不思議なことにそれらは、舞台からではなく、観ている我々の心の底から沸き上がってきます。まるで操られているよう。歳を取れば取るほど、現実でいろいろな物を見れば見るほど、容易く、いろいろなスイッチが勝手に入ってしまう。これが演劇であれば、あらゆる感情が勝手に出てくる。感情を抑え込む方法もあるのでしょうが、わざわざ劇場に来てそんなことするのはお金の無駄っていうものです。演者の献身を受け止めてこそ、劇場という空間は成り立つのです。

 前置きが長くなりました。勿体ぶった言い方でごめんなさい。
 では、「わらび座 夏の特別公演2022」について、ゆっくり語りたいと思います。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ゴホン!といえば「田沢湖ビール」1

2022年09月11日 11時05分15秒 | 観劇日記
 「ゴホン!といえば・・・」
 昔からよく観た喉のお薬のCMです。
 そう「龍角散」。
 これは秋田藩の秘薬「龍角散」が基になっているそうです。
 横手で高速道路を降りて、みずほの里ロードをあきた芸術村めざして走ると、美しい田園地帯が広がっています。CMでも取り上げられていましたが、今でもハーブを栽培しているそうです。

 前置きが長くなりました。
 2022年8月18日、「わらび座 夏の特別公演」を観に行きました。
 久しぶりBELAちゃんと二人旅。子育てが終盤になってくるとこういうことが出来るようになります。
 みずほの里ロードの話をしましたが、今回は田沢湖ビールという楽しみがあるので秋田新幹線で移動。
 大雨が通り過ぎたばかりの東北地方。車窓から見える江合川も鳴瀬川も北上川もみんな茶色い水であふれそうです。まわりは一面肥沃な耕土。大事な季節だから水は欠かせないけれども怖くもある。被害の少ないことを祈るばかりです。
 仙岩トンネルを抜けてからも見える山の川はやはり濁流。岩を噛むというよりは茶色い爪で岩を鷲掴みにしているよう。この茶色い水があきた芸術村のすぐそばにも流れているはずです。怖い思いをしたかもしれません。
 角館駅に到着。仙台からは90分くらいで着いてしまいます。新幹線って速い。車と違って楽。

 駅舎から出ると少し雨が降っていました。今日も天気は良くないようです。
 急いで角館のクーポン券を買い、待っていた送迎車に乗り込みました。開場まであまり時間は無いようです。
 あきた芸術村-わらび劇場は、雨の中、大屋根を濡らしてどっしりと立っていました。 (つづく)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする