道を間違えて、右の方へ行ってしまったはずなのに、なぜ本日のお宿に到着できたのか、しばらく解らなかった。てっきり山中で立ち往生しちゃうかと思っていたのに・・・。この謎は、あとで分かった。要するに一本道なのだ。花巻温泉郷から伸びる山道は、Y字に分かれているが、それはどちらから行ってももう一方の道にたどり着くだけ。台温泉をぐるりと回る輪のような道なのだ。
雨がひどくなってきた。
この日も昨日と同じ。夕方になってから本降りになった。
中嶋旅館前で路駐して荷物をおろす。旅館の人も手伝いに出てきてくれた。あんまり広い道ではないので路駐していて不安。荷物をおろしてから旅館脇の駐車場へ車を廻す。雨はかなり大粒で、車のドアを開けただけで流れ込んできそう。しまった。カサはトランクルームだ。
決心して飛び出す。とたんにシャワーのように雫を浴びる。トランクルームからカサを取り出してやっとさす。カサなしでどこへもいけないようだ。っても隣の建物なんだけどね。
雨だったのでゆっくり建物の外観を眺める余裕がない。急いで玄関に飛び込む。
玄関から中をみて驚いた。
こりゃすげー。
口で行っても伝わりにくいので、画像をどうぞ。
白無垢材それも柾目のいいところをふんだんに使っている。ところどころ材が入り組んでいて、丸木をそのまま使っていたり、黒光りする希少材木も(もしかして埋れ木か?)ある。階段もすごい。肉厚の手すり。擬宝珠つきの欄干。
宮大工が高級木材をこれでもかとばかりに駆使して、贅沢に贅沢に造った建造物であることがよくわかる。
圧倒されすぎてため息しか出てこない。
案内されたのは3階の「蓬莱」というお部屋。
入り口の引き戸がまた・・・、なんとも。これは「雪紋」だろうか。
中に入ると、八畳敷の座敷とその奥にも一室。広い。四人で泊まるには贅沢すぎる。
欄間には透かし彫りの彫刻。奥の部屋はなんと漆喰を彫刻のように盛り上げた青海波模様。これ気仙大工の「鏝絵」とよばれる技法じゃないかしら。
奥の一室は東と南にに広い窓を備えているから建物を上から展望するためのものだろう。あいにくの雨だが・・・。
はた、と気づき、座敷の中央で正座する。みんなも並んで正座した。
「一晩ご厄介になります。よろしくお願いします。」
部屋の「主(ヌシ)」へご挨拶。これが僕らの儀式なのだ。