4月は、5500万光年離れた銀河M87にあるブラックホールの直接観測に成功したとの報道があり、このところ天文界は初観測のニュースで賑わっている。
さらに、先日、NHKの科学番組を見ていたら、120~100億年前に天の川銀河に他の銀河が衝突したという話題を紹介しており、天の川銀河の歴史も次第に明らかになりつつあるようだ。
天の川銀河は、多数の恒星が渦を巻いて自転している円盤の部分と、ハローと呼ばれる銀河中心を中心とする球状の空間とから成っている。
ハローには、球状星団や単独の恒星が散在しており、円盤部の引力の支配を受けて、ハローの中を公転している。
ハローの球状星団や単独恒星の年齢は、120億年ぐらいであり、円盤部にある恒星の平均年齢に比べて古い恒星が多いというのも謎であった。
そもそも天の川銀河が一枚岩の渦巻銀河として形成されたものであるならば、ハロー部分に恒星が存在していること自体が不思議である。すべての恒星が円盤部に収まっているならば、ほとんどないと考えるが、たとえ恒星間で衝突があったとしても、恒星が円盤部を離れてハロー部分に飛び出すことは考え難いことである。なお、二つの恒星が連星系を成している場合には、一つの恒星のごとくにまとまっているので、ハロー空間に飛び出す理由は何もない。
ヨーロッパ宇宙機関(ESA)が打ち上げた天文衛星「ガイア」を使った観測により、天の川銀河の歴史は、銀河どおしの衝突というドラマチックなイベントを秘めていることを明らかにしつつある。
120億年前に、他の銀河が斜め方向から天の川銀河に衝突し、それがもっていた恒星を今のハロー部分に位置づけることになった。その当時はまだ他の銀河の形状が見えていたのであろうが、次第にそれら恒星の寿命が尽きて消えていき、今ではその一部の恒星だけが生き残っているということなのであろう。
他の銀河が衝突したとき、天の川銀河の円盤部の重力ポテンシャル場は激しくかき乱され、円盤部は大きく波打つように揺れ動いたことであろう。衝突は100億年前に完了したとみられているので、他の銀河の衝突に起因する円盤の振動は次第に収まっていったようである。
ただ、他の銀河の衝突がなくても円盤部の振動が起こることが知られている。銀河の中の星の分布に偏りがあると重力不安定となり、円盤部は振動するという。そうなると、天の川銀河の振動は、渦巻銀河本来のものか他の銀河の衝突の名残りを含むのか判然とはしない。
天の川銀河に他の銀河が衝突しても、恒星どおしの衝突はほとんどないと考えられるが、水素ガスなどの星間物質の密度は増大し、場所によっては倍以上の物質密度になったところもあるだろう。
他の銀河に属する恒星は、どの恒星とも衝突せずに円盤部を通過してハロー空間に飛び出すと、円盤部からの引力を受けて円盤部に引き戻され、再び円盤部を通過して反対側のハロー空間に飛び出してこの運動を繰り返すだろう。すなわち、この恒星はハロー空間内を公転するようになる。
一方、他の銀河中の星間物質は、円盤部の星間物質と衝突して散乱し、円盤部の中に取り込まれることになるだろう。
星間の物質密度の増大によって巨大な恒星が生成される可能性が高くなり、寿命の短い巨大恒星が次々と超新星爆発を起こしたようである。
我々の太陽は、銀河の衝突完了から50億年ぐらい経過してから誕生した恒星であるが、我々の太陽系は、関与した超新星の数はともかくとして、そのような超新星爆発によってまき散らされた元素を素材として形成されたはずである。
そういうことになると、もしこれら銀河の衝突がなければ、地球上の生物はおろか地球さえ存在していないかも知れない。
参考文献
家正則著「銀河が語る宇宙の進化」(培風館)
さらに、先日、NHKの科学番組を見ていたら、120~100億年前に天の川銀河に他の銀河が衝突したという話題を紹介しており、天の川銀河の歴史も次第に明らかになりつつあるようだ。
天の川銀河は、多数の恒星が渦を巻いて自転している円盤の部分と、ハローと呼ばれる銀河中心を中心とする球状の空間とから成っている。
ハローには、球状星団や単独の恒星が散在しており、円盤部の引力の支配を受けて、ハローの中を公転している。
ハローの球状星団や単独恒星の年齢は、120億年ぐらいであり、円盤部にある恒星の平均年齢に比べて古い恒星が多いというのも謎であった。
そもそも天の川銀河が一枚岩の渦巻銀河として形成されたものであるならば、ハロー部分に恒星が存在していること自体が不思議である。すべての恒星が円盤部に収まっているならば、ほとんどないと考えるが、たとえ恒星間で衝突があったとしても、恒星が円盤部を離れてハロー部分に飛び出すことは考え難いことである。なお、二つの恒星が連星系を成している場合には、一つの恒星のごとくにまとまっているので、ハロー空間に飛び出す理由は何もない。
ヨーロッパ宇宙機関(ESA)が打ち上げた天文衛星「ガイア」を使った観測により、天の川銀河の歴史は、銀河どおしの衝突というドラマチックなイベントを秘めていることを明らかにしつつある。
120億年前に、他の銀河が斜め方向から天の川銀河に衝突し、それがもっていた恒星を今のハロー部分に位置づけることになった。その当時はまだ他の銀河の形状が見えていたのであろうが、次第にそれら恒星の寿命が尽きて消えていき、今ではその一部の恒星だけが生き残っているということなのであろう。
他の銀河が衝突したとき、天の川銀河の円盤部の重力ポテンシャル場は激しくかき乱され、円盤部は大きく波打つように揺れ動いたことであろう。衝突は100億年前に完了したとみられているので、他の銀河の衝突に起因する円盤の振動は次第に収まっていったようである。
ただ、他の銀河の衝突がなくても円盤部の振動が起こることが知られている。銀河の中の星の分布に偏りがあると重力不安定となり、円盤部は振動するという。そうなると、天の川銀河の振動は、渦巻銀河本来のものか他の銀河の衝突の名残りを含むのか判然とはしない。
天の川銀河に他の銀河が衝突しても、恒星どおしの衝突はほとんどないと考えられるが、水素ガスなどの星間物質の密度は増大し、場所によっては倍以上の物質密度になったところもあるだろう。
他の銀河に属する恒星は、どの恒星とも衝突せずに円盤部を通過してハロー空間に飛び出すと、円盤部からの引力を受けて円盤部に引き戻され、再び円盤部を通過して反対側のハロー空間に飛び出してこの運動を繰り返すだろう。すなわち、この恒星はハロー空間内を公転するようになる。
一方、他の銀河中の星間物質は、円盤部の星間物質と衝突して散乱し、円盤部の中に取り込まれることになるだろう。
星間の物質密度の増大によって巨大な恒星が生成される可能性が高くなり、寿命の短い巨大恒星が次々と超新星爆発を起こしたようである。
我々の太陽は、銀河の衝突完了から50億年ぐらい経過してから誕生した恒星であるが、我々の太陽系は、関与した超新星の数はともかくとして、そのような超新星爆発によってまき散らされた元素を素材として形成されたはずである。
そういうことになると、もしこれら銀河の衝突がなければ、地球上の生物はおろか地球さえ存在していないかも知れない。
参考文献
家正則著「銀河が語る宇宙の進化」(培風館)