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格子多角形の世界に遊ぶ

2025-02-02 11:04:20 | ブログ
 格子点とは、平面上で座標成分がすべて整数となる点のことである。頂点がすべて格子点である多角形を格子多角形と呼ぶ。任意の格子多角形Pについて、その内部の点の数をN、周上の点の数をSとすると、Pの面積は
   A=N+S/2-1
になるという公式がある。

 一方、格子多角形Pに対し、Pをn倍(nは正の整数)に膨らませたものnPを考える。ただし、nPとはPの頂点の座標をそれぞれn倍して得られる格子多角形のことである。nPの周上および内部に含まれる格子点の個数をf(P,n)で表し、nPの内部の点の個数をg(P,n)で表すとする。つまり、f(P,1)=N+S, g(P,1)=N; f(P,n)=N’+S’, g(P,n)=N’に相当する。

 ここで、f(P,n)およびg(P,n)は、次の多項式で表せることが知られている。
  f(P,n)=an^2+bn+1
  g(P,n)=an^2-bn+1

 以上の前提の下に、多角形nPの面積A’はAn^2となることを証明してみた。

 n=1の場合のf(P,1)およびg(P,1)は、
  f(P,1)=a+b+1; g(P,1)=a-b+1
となる。

 面積AとA’を計算すると、
  A=g(P,1)+{f(P,1)-g(P,1)}/2-1=a
  A’=g(P,n)+{f(P,n)-g(P,n)}/2-1=an^2
となる。

 よってA’=An^2であることが証明できた。

 参考文献
 遠山啓著「現代数学対話」(岩波新書)
 数学セミナー2017年9月号(日本評論社)

AI時代について思うこと

2025-01-12 08:40:22 | ブログ
 人工知能(AI)の発展により、世の中はアルゴリズム万能の時代からコンピュテーショナルあるいはシミュレーショナルな時代に移行しているように感じる。昨年、ノーベル賞の受賞対象となった「アルファフォールド」-たんぱく質の立体構造を高い精度で予測する成果は、ひも状に連なったアミノ酸がどのように折りたたまれるかという難問を解決に導いたということで、改めてAIの威力に感心したが、将棋や囲碁の局面の予測と同様に、もともとアルゴリズムが通用しなかった問題にAIを適用して成果を挙げたということで、驚嘆するというほどではなかった。しかし、天気予報のためのモデル作成というこれまでニュートン力学に依存していた分野にAIが活用され、計算速度と予報精度を向上させた事例を知ると、時代は大きく移り変わり、科学哲学をはじめ一般向けの科学書や気象通論などは改訂する必要がある時代に入ったと考える。

 ネット情報によれば、AIは、膨大なデータを解析し、パターンを見つけ出すことで、天気予報の精度を向上させるという。AIモデルは、物理モデルに基づいて計算する従来のスパコンに比べて、パソコン1台で計算可能であり、数分で結果を得ることができる。また、AIは、過去のデータを基にした予測に加え、リアルタイムのデータを取り入れることで精度を高めているという。特に、上空での予測精度が高いので、台風やハリケーンの進路予測に成功を収めているという事例がいくつか報告されている。また、タイム誌によれば、AIモデルは、短期よりも中期の天気予報の予測精度が高いようだ。短期の大気圏層は大気のゆらぎが大きいが、中期の天気予報となると、天候が比較的安定するので過去データが有効に活用できるのだろうか。850hPa(海抜1500m)以上の上空層でのAIの予測精度が高いということと、短時間で大気圏下部を進む台風の進路予測が高い精度で的中するということがどう関連するのか、詳しいことは分からないので、私の宿題としておきたい。なお、AIモデルによる台風予測は、進路予測の精度は高いが、勢力予測の精度は従来モデルよりも低いとのことである。

 AIの進展によって、たとえば参考文献1,3のような科学哲学に関する話題や参考文献2のような非線形科学がどう進展していくのかについて注目していきたい。

 筑波大学の浦山俊一先生の「自己複製するRNAと生命の深い関係」と題する講演を聴講したことがある。浦山先生のお話によると、数十万種以上あると想定されるRNAウィルスの塩基配列と思われるものが配列空間の中に位置づけられているようだ。そのRNAウィルスの中には、AIが提示したものも含まれるというのも興味深いところである。

 RNAワールドに関する参考文献4の記述を引用する: 「もし体内の酵素をすべてRNAでつくれるとすれば、(遺伝)情報の保持と、生物としてのはたらきの両方をRNAで実行できるかもしれず、RNAだけで生物をつくれるならば、核酸とタンパク質の両方を必要とする生物よりも、偶然に形成される可能性が大きいかもしれないと考える学者が現れ、最初にRNAワールドが出現したという考えに同調する人も多い。しかし、具体的にはなんの証拠もない。」

 RNAワールドが正しいと仮定すると、RNAの起源が生命体の起源を意味することになる。惑星上に存在する化学物質を材料として、自己組織化によってどのようにしてRNAが形成されたかを説明する理論は、多くの人々にとって興味ある問題であろう。生命の起源を説明する理論は、アルゴリズム的ではなく、シミュレーション的であり、その結果、何らかの情報ネットワークが構成され、相転移が生じたものと夢想する。相転移は、シミュレーション的にしか起こらないと考えるからである。そうなると、生命の発生は、AIを抜きにしては考えられない。ただ、そのAIモデルは、過去のデータが証拠として提示されるわけではなく、AI自体がつくり出さねばならないという難関の壁が待ち構える。

参考文献
1. 森田邦久著「科学哲学講義」(ちくま新書)
2. 蔵本由紀著「非線形科学」(集英社新書)
3. 丹羽敏雄著「数学は世界を解明できるか」(中公新書)
4. 野田春彦著「新しい生物学」(ブルーバックス)

コミュニティふらっとを訪ねる

2024-12-22 08:21:58 | ブログ
 今年の初めに、住んでいる地域の人々の間の交流を深めるという目的で「コミュニティふらっと」が開設された。人によって状況は異なるとは思うが、自分の住居の近くに住む人たちとも交流が少ない地域にあって、当初、話したことのない人たちと話をする機会があるのではないかと思って一度この出会いの場を訪ねてみたいと考えていた。

 しかし、それから10ヶ月以上経つが、まだこの施設を訪ねたことはない。書道教室、折り紙教室、ダンスや体操の会など、次々とイベントが開催されるのだが、どのイベントにも参加したいという意欲はなく、せめてスタッフさんと話をしてみたいという意気も消沈するばかりである。これでは、人と数学や自然科学の話をするのは論外、政治や社会について議論するのも「およびでない」のであろう。どうも「意識高い系」が参入する場ではないようだ。

 知識を求めるのが教養であるとすれば、生成AIによって強化されたネット情報で充分であり、コミュニティふらっとは教養を求める場ではないのであろう。単に見知らぬ人と交流する場ということであれば、SNSやネット上の出会い系サイトがその役割を果たしているが、顔見知りの人たちもいる同じ地域に住む人々との交流となると、地域コミュニティの場の存在価値が小さくないのであろう。そこはムラ社会であるから、対話や議論の場ではなく、同じ趣味をもつ人々が集まる同好会の場となるのであろう。

 ネット情報だけでは満足できず、専門家の指導の下に対話的な教養を享受したい人には、放送大学やカルチャーセンターの場が用意されている。私は、自然科学の講演を聴講するためにカルチャーセンターを利用しているとき、聴講者からサイエンスカフェを紹介され、サイエンスカフェに移ることにした。その後、サイエンスカフェの幹事さんが亡くなるとともにカフェが閉設したので、次のカフェを求めているときに、友人の紹介により現在の自然科学カフェを知り、このカフェに移ることにした。自然科学カフェが掲げる理念に賛同するとともに、事務局が招聘する専門家の講演と主催するダイアログに満足している。私が初めてサイエンスカフェに参加してから今日まで10年以上経過している。自然科学カフェには約7年通っている。

 自然科学に執着するのは、何らかの宗教に執着するのと似ているのかも知れない。住んでいる地域の近くには、大きな神社と大きな寺院のほかに宗教団体の大施設がある。また私の住み家の近くを散歩していると、住居から漏れてくる読経の声を聞くことがある。住んでいる地域が属している区域には、学問や芸術に執着する人と宗教に執着する人のほかに、特にこれらに執着するわけでもない普通の人々が住んでいるのであろう。コミュニティふらっとに集まる人々は、普通の人々かも知れない。また、地域には多くのマンションやアパートが存在する。マンションやアパートの住人には、他の区域に通勤・通学している人も少なくないとみるので、このコミュニティふらっとに関心がない人も多いと推測する。こうなると、地域や区域の郷土史よりも住んでいる地域・区域のリアリティを反映する社会学が面白いのかも知れない。

 英語の「エンゲージメント」という単語には、「愛着」「思い入れ」「意欲」などの意味があることを知った。この単語には日本人の集団でよく使われる「頑張る」という意味はないし、独立した個人がやりたいことを尊重する気持を表現しているようで好ましいと思う。

 コミュニティふらっとの表向きのイベントとは別に、奥座敷もあり、同好のメンバーがクラブをつくって何かやっているようだ。スタッフさんに、何をやっているのか尋ねたところ、囲碁クラブ、卓球、輪投げなどを挙げていたが、参加メンバーを登録しているが何をやっているのか分からないクラブもあるそうだ。数学や自然科学についてダイアログするクラブがあるか聞いてみたが分からないようで、他の同好会の様子からみてないと判断してよいようだ。自分から新しいクラブを立ち上げる元気はなくなった。

 その後、ふらっとでもらってきたIMAGINUSという科学体験ラボのパンフレットを見ていて、科学ゲーム展のゲームコーナーで「スイングバイ チャレンジ」というゲームに目が止まった。一度このラボを訪ねて、このゲームを見学しながらラボのスタッフさんと科学について話してみるのが交流のよいアプローチらしいと気付いた。

結び目理論をのぞく

2024-12-01 10:13:26 | ブログ
 三次元空間内で共有点をもたない単純閉折線と呼ばれる多辺形を「結び目」という。この結び目をz軸と平行に二次元平面上に射影すると、一般に多重点をもつ閉折線が得られる。空間上の単純閉折線の辺の位置を移動することによって、二次元平面上の閉折線が有限個の2重点のみをもつようにできる。平面上の2重点、すなわち交差点は、空間上でz座標の大きい方の上交差点と、小さい方の下交差点とが重なった点である。

 結び目の射影像の各2重点について、下交差点を含む辺に対応する辺に図のように切れ目を入れて空間的な感じを出すように表示する。なお、位相幾何学では直線と曲線の区別はないので、閉折線を閉曲線に代えて表示している。



 図の1に示す結び目は5個の交差点をもち、2に示す結び目は6個の交差点をもつ。結び目には、交差点のいくつかを解消できるタイプと、解消できないタイプとがある。交差点を解消できずに残る交差点の個数を最小交差数という。最小交差数は、結び目の型を決める最も単純な不変量となる。一方、交差点が解消されてその個数がゼロになった結び目は、単純閉曲線、すなわち円であり、平凡型と呼ばれる。

 図1(a)(b)の一方は最小交差数をもつ結び目、他方は平凡型である。図2(a)(b)および図3(a)(b)についても同様である。ここで(a)(b)のうち、どちらが平凡型かを当てるのが演習問題である。

 図1(b)は、下図に示すように、領域Aの外周線が上交差線なので、下交差線より内側に引き込むと領域Bと合併するとともに、交差点が2つ消える。領域ABの外周線は、もう一つの下交差線の外に移動できてさらに交差点が2つ消えて交差点はただ1つだけとなる。この形の結び目は、交差点なしと同値なので、結局、平凡型であることが分かる。図1(a)は、どの交差点も解消できないので、最小交差数5の結び目型である。

 図2(a)は、領域Aの外周線を移動することによって交差点を2つ消すことができる。領域Bの外周線も同様の移動によって、さらに交差点2つを消せる。領域Aと領域Bは合併できて、交差点が1つ消え、領域ABとなる。これは交差点なしの結び目と同値なので、結局、平凡型となる。図2(b)は、最小交差数6の結び目型である。

 図3(b)の領域AとBは合併によって交差点が2つ消え、同値関係からさらに交差点が1つ消える。領域CとDは合併によって交差点が2つ消え、残った1つの交差点も同値関係から消えて、結局、平凡型となる。図3(a)は、最小交差数6の結び目型である。



 参考文献
 鈴木普一著「結び目理論入門」(サイエンス社)

宇宙探査機のスイングバイについて考察する

2024-11-10 10:43:31 | ブログ
 今年の10月に生命の存在を求めて木星の衛星エウロパに向けてNASAが探査機エウロパ・クリッパーを打ち上げるということで、その飛行経路と平均秒速などを追求したくなった(まだ探査機の打ち上げが予定通り行われたというニュースが入ってこないので、延期になっているようだ)。

 タイム誌によれば、クリッパーは、地球を出発してから太陽の周囲を2回まわった後、25年2月27日に火星を通過し、26年1月12日に地球に戻ってその近くをUターンした後、木星に向けて飛行し、30年4月11日に木星に到着する予定である。探査機が太陽を周回するのは、火星の公転運動に合わせる時間待ちのためか。また、火星のそばを飛行し、地球に接近するのは、スイングバイによってそれぞれの惑星から「重力アシスト」を受けるためである。

 火星―地球間の最短距離は7.8×10^7kmなので、この間の経過日数319日で割ると、探査機の平均秒速は、2.83km/sとなる。また、地球―木星間の最短距離は5.5×10^8kmなので、この間の経過日数1569日で割ると、探査機の平均秒速は4.04km/sとなる。実際には、惑星間の飛行距離は最短距離より長くなるだろうから、確かなことは言えないが、これらの平均秒速を信じるなら、火星と地球のスイングバイによって、探査機は加速されると言える。

 ここで、日本の探査機「はやぶさ」が地球に3700kmまで近づいてスイングバイを行ったときのデータが参考になる。このスイングバイによって、はやぶさは、秒速30kmから同34kmに加速して地球を通過したという。スイングバイを実行するためには、精密な軌道制御をする必要があるようだ。

 はやぶさが地球の重力を利用して加速するのであれば、簡単なコンピュータ・シミュレーションによってその様子を確認できるのではないかと考えて実行してみた。初速30kmで飛行していた探査機が地球の中心に向かう鉛直線に沿って自由落下し、地球上空3700kmの近地点まで飛行させる。この近地点で探査機の速度は約40kmと計算された。その後、探査機を水平方向に方向転換させて、探査機が地球から充分遠く離れるまでその速度を計算した。その計算結果は、約30kmと元の速度に戻っていたので、地球の重力によって探査機が受ける加速のゲインは0になる。また、近地点以後の探査機の飛行経路を上記の鉛直線と水平線の中間であるy=xの45度線に沿ったものにして再計算した。その結果は同じく約30kmに戻るものであった。

 ここで初めて気が付いた。探査機が遠くから地球に接近して再び地球から遠く離れる場合、探査機がどのような飛行経路をとろうと、地球の重力による加速のゲインはないという計算結果になるということを。これは探査機の飛行経路が角運動量保存則という自然法則に支配されるためであることを認識した。

 そこで、ネット検索によってスイングバイの参考文献を参照することにした。これにより、探査機の速度を加速させるためには、地球の公転速度が必要であることを知った。つまり「重力アシスト」とは、地球の重力だけでなく、太陽の重力あってのアシストなのである。無意識のうちに天動説に陥っていて、地動説まで考え及ばなかったということだろうか。

 探査機が公転する地球の後ろ側を近地点として通過する場合に加速スイングバイができるということで、このコースをとることにする。探査機は、地球が近づくのを待ち構える態勢では、探査機の速度と地球の公転速度とは無関係なはずである。探査機が近地点を通過して地球の公転に伴走するような経路に進入するとき、探査機は、一時期、あたかも地球の人工衛星になったかのような状態となって、加速分を受け取ることになり、その加速分は地球から遠く離れた後も保存されるということであろう。

 地球の公転速度は、およそ30km/sである。地球のまわりを周回する人工衛星は、地球と一体となっているので、太陽に対する公転速度は30km/sである。探査機は、地球の公転の角運動量の一部を譲り受けて、いわば中途半端な形で地球の人工衛星となるので、30km/sの一部を速度のゲインとして受け取ることができるのだろう。どの程度のゲインになるのかは、飛行経路と軌道制御のよしあしに依存するのであろう。

 なお、探査機に公転運動のエネルギーの一部を渡した地球は、公転の角運動量のわずかな減少によって、その公転速度がわずかに増える結果となるが、その増分は無視できるので、公転速度は変わらないとみなしてよい。太陽系の一員であり、公転運動に参加している地球がその角運動量の減少によって速度が増えるのに対して、公転運動に参加していない流れ者の探査機が太陽系に寄生してその運動量を増やすところが面白い。

 参考文献
 ウィキペディア「スイングバイ」などのネット情報