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活版印刷を体験する

2018-09-23 08:21:07 | ブログ
 「大人の科学」という雑誌がまだ発行されていることを知り、そのふろくで、たまには「ものづくり」をしてみようとして購入した。ふろくは、「小さな活版印刷機」で、卓上型の印刷機を組み立て、印刷用の活字を拾って、活版印刷を体験するものである。

 そう言えば、子供の頃、「少年クラブ」という雑誌を購読し、次のふろくは何だろうとわくわくしながら待っていた思い出がある。

 ふろくの印刷機を組み立てるのは比較的容易である。しかし、それから先の工程が大変で、ここから「ものづくり」の本番が始まることを知る。プラスチックの活字板から個々の活字を切り取る。考えていた文言に使う活字を拾って活字台にセットする。インキ台にインキをのせ、インキローラーで練る。インキローラーを回転させて活字台の活字にインキをのせる。印刷機のハンドルを操作して、圧盤上の紙が活字群に密着するようにプレスする。

 活字の種類として、ひらがなと英大文字、英小文字の162個の活字が用意されているが、原則として一文字は一個しかないので、同じ文字を繰り返し使うときには、活字台上の活字を組み替えて複数回印刷しなければならない。

 また、活字は左右反転しているので、活字台に活字をセットすることに慣れてなく、活字の種類や上下方向を間違えることが多い。

 さらに、活字を活字台にセットするための軸足が一本なので、印刷中に活字が抜け落ちたり、向きを変えたりしやすい。このため、一単語が一文字で成る場合などにダミーの活字を隣接させることにした。ダミーの活字は、使わないと思われる活字の文字部分を削って作った。

 印刷機は、ハンドル操作によってインキローラー上にインキを充填したり、そのインキを活字にのせたりするようになっているが、これは多くの印刷物をつくる印刷機をモデルにしたためと思われ、活字に充分なインキをのせるのが難しい。この印刷機では、できるだけきれいな印刷物を一枚だけつくればよいので、ハンドル操作ではなく、手作業で活字にインキをのせた。

 ひらがなの活字を用いて和文の格言を印刷しようと試みたが、思うような印刷物ができなかったので、次の日に再試行しようとしてインキローラーや使用した活字の水洗いをしていた。その作業の途中で、うっかり一個の活字を排水口に落としてしまい、失ってしまう。そうなると、和文の格言の印刷はあきらめざるを得なかった。

 そこで、気をとりなおして、英文字の活字を用いる英文の格言を試みることにした。

 なんとか印刷物らしいものができたので、これをスキャナーでスキャンして画像イメージをつくった。



 幸いなことに、母音のa,i,eの活字が2個ずつ用意されているので、1個の活字だと6回印刷しなければならないところを、3回の印刷で済ませる。

 出来上がった印刷物を見ると、活字によってインキののり具合にバラツキが生じている。また、版を重ねたことによる文字のずれが生じている。

 ディジタル技術の時代にあって、我々が毎日目にするのは、整然としてはいるが画一的な表示文字の配列をもつディスプレイや印刷物である。そのような環境の中で、たまには手づくりによる活版印刷のプロセスを楽しむのもいいのでは?

報酬学習とドーパミン放出

2018-09-09 08:29:53 | ブログ
 自然科学カフェで、筑波大学の松本正幸教授から「ドーパミンは快楽物質?」と題する講演を聴く機会を得た。

 先生のお話では、脳の中でドーパミンをつくるドーパミンニューロンは二種類ある。一つは、「強化学習」と呼ばれる報酬学習の動機づけをするためのものであり、動作の結果の良否は、報酬や罰として与えられる。もう一つは、運動制御や認知機能に関係するものであり、与えられた刺激が行動にとって重要であるという理由で活性化されるという。後者のドーパミン放出は、必ずしも報酬機能と関係するわけではないようだ。

 報酬学習の理論として、次の式が知られている。
   報酬予測誤差=実際に得られた報酬-予測された報酬

 サルなどを使った実験で、次の事実が確かめられている。報酬予測誤差>0の場合は、予想外に良い報酬が得られたケースであり、多くのドーパミンが放出される。ほぼ報酬予測誤差=0の場合は、予想した通りの報酬が得られたケースであり、ほぼ通常通りのドーパミンが放出され、突出したドーパミン放出はない。報酬誤差<0の場合は、予想より悪い報酬か罰を受けたケースであり、通常のドーパミン放出が抑制される。

 参考文献では、囲碁や将棋などのゲームを例にとって強化学習の説明をしている。

 これらのゲームでは、現在の局面を前にして次の一手を考えることになる。次の手を打ったときに現在の状態が変わり、次の状態に遷移するが、多くの場合次の一手には複数の選択肢があり、選んだ手によって局面が有利な状態になるか否かは確率的である。このようにアクションを起こすごとに確率的に状態が変わっていくプロセスを、「確率過程」と呼んでいる。

 このとき、予想された報酬と実際の報酬との差が多量のドーパミン放出か、現状維持か、ドーパミン放出の抑制かを決める動機づけになると考えられる。予想された報酬とは、現在の局面がどのくらいよいのかの評価に相当する。また、実際の報酬とは、実際に現れた局面の評価に相当する。つまり、局面が現段階での予想よりもよい方向へ進んだとき、すなわち期待よりもうまくいったときに、多量のドーパミンが放出される。

 囲碁や将棋を行う人工知能も、現在の局面の評価を行い、次の一手として、複数の選択肢の中から最も評価点の高い手を選んでいる。すなわち、報酬予測誤差ができるだけ大きくなるような手を選んでいる。言い換えれば、この誤差値を教師信号として学習を行っている。

 このような強化学習は、報酬学習の理論通りのものか否か、先生に質問した。先生の回答は、この理論を肯定するものと受け取ったが、ただし書きのつくものであった。なるほどと思われるが、このようなゲームの局面において、人間の脳でもドーパミン放出の制御が行われているか否かについての観測データはない。

 とはいえ、報酬学習の動機づけとして行われるドーパミン放出の理論は、ほぼ落着の方向にあるとみた。今後は、運動制御や認知機能に関係するドーパミン放出の謎の解明に向けて研究が進められるようだ。

 参考文献
 甘利俊一著「脳・心・人工知能」(ブルーバックス)

報酬学習とドーパミン放出

2018-09-09 08:13:10 | ブログ
 自然科学カフェで、筑波大学の松本正幸教授から「ドーパミンは快楽物質?」と題する講演を聴く機会を得た。

 先生のお話では、脳の中でドーパミンをつくるドーパミンニューロンは二種類ある。一つは、「強化学習」と呼ばれる報酬学習の動機づけをするためのものであり、動作の結果の良否は、報酬や罰として与えられる。もう一つは、運動制御や認知機能に関係するものであり、与えられた刺激が行動にとって重要であるという理由で活性化されるという。後者のドーパミン放出は、必ずしも報酬機能と関係するわけではないようだ。

 報酬学習の理論として、次の式が知られている。
   報酬予測誤差=実際に得られた報酬-予測された報酬

 サルなどを使った実験で、次の事実が確かめられている。報酬予測誤差>0の場合は、予想外に良い報酬が得られたケースであり、多くのドーパミンが放出される。ほぼ報酬予測誤差=0の場合は、予想した通りの報酬が得られたケースであり、ほぼ通常通りのドーパミンが放出され、突出したドーパミン放出はない。報酬誤差<0の場合は、予想より悪い報酬か罰を受けたケースであり、通常のドーパミン放出が抑制される。

 参考文献では、囲碁や将棋などのゲームを例にとって強化学習の説明をしている。

 これらのゲームでは、現在の局面を前にして次の一手を考えることになる。次の手を打ったときに現在の状態が変わり、次の状態に遷移するが、多くの場合次の一手には複数の選択肢があり、選んだ手によって局面が有利な状態になるか否かは確率的である。このようにアクションを起こすごとに確率的に状態が変わっていくプロセスを、「確率過程」と呼んでいる。

 このとき、予想された報酬と実際の報酬との差が多量のドーパミン放出か、現状維持か、ドーパミン放出の抑制かを決める動機づけになると考えられる。予想された報酬とは、現在の局面がどのくらいよいのかの評価に相当する。また、実際の報酬とは、実際に現れた局面の評価に相当する。つまり、局面が現段階での予想よりもよい方向へ進んだとき、すなわち期待よりもうまくいったときに、多量のドーパミンが放出される。

 囲碁や将棋を行う人工知能も、現在の局面の評価を行い、次の一手として、複数の選択肢の中から最も評価点の高い手を選んでいる。すなわち、報酬予測誤差ができるだけ大きくなるような手を選んでいる。言い換えれば、この誤差値を教師信号として学習を行っている。

 このような強化学習は、報酬学習の理論通りのものか否か、先生に質問した。先生の回答は、この理論を肯定するものと受け取ったが、ただし書きのつくものであった。なるほどと思われるが、このようなゲームの局面において、人間の脳でもドーパミン放出の制御が行われているか否かについての観測データはない。

 とはいえ、報酬学習の動機づけとして行われるドーパミン放出の理論は、ほぼ落着の方向にあるとみた。今後は、運動制御や認知機能に関係するドーパミン放出の謎の解明に向けて研究が進められるようだ。

 参考文献
 甘利俊一著「脳・心・人工知能」(ブルーバックス)