今年の10月に生命の存在を求めて木星の衛星エウロパに向けてNASAが探査機エウロパ・クリッパーを打ち上げるということで、その飛行経路と平均秒速などを追求したくなった(まだ探査機の打ち上げが予定通り行われたというニュースが入ってこないので、延期になっているようだ)。
タイム誌によれば、クリッパーは、地球を出発してから太陽の周囲を2回まわった後、25年2月27日に火星を通過し、26年1月12日に地球に戻ってその近くをUターンした後、木星に向けて飛行し、30年4月11日に木星に到着する予定である。探査機が太陽を周回するのは、火星の公転運動に合わせる時間待ちのためか。また、火星のそばを飛行し、地球に接近するのは、スイングバイによってそれぞれの惑星から「重力アシスト」を受けるためである。
火星―地球間の最短距離は7.8×10^7kmなので、この間の経過日数319日で割ると、探査機の平均秒速は、2.83km/sとなる。また、地球―木星間の最短距離は5.5×10^8kmなので、この間の経過日数1569日で割ると、探査機の平均秒速は4.04km/sとなる。実際には、惑星間の飛行距離は最短距離より長くなるだろうから、確かなことは言えないが、これらの平均秒速を信じるなら、火星と地球のスイングバイによって、探査機は加速されると言える。
ここで、日本の探査機「はやぶさ」が地球に3700kmまで近づいてスイングバイを行ったときのデータが参考になる。このスイングバイによって、はやぶさは、秒速30kmから同34kmに加速して地球を通過したという。スイングバイを実行するためには、精密な軌道制御をする必要があるようだ。
はやぶさが地球の重力を利用して加速するのであれば、簡単なコンピュータ・シミュレーションによってその様子を確認できるのではないかと考えて実行してみた。初速30kmで飛行していた探査機が地球の中心に向かう鉛直線に沿って自由落下し、地球上空3700kmの近地点まで飛行させる。この近地点で探査機の速度は約40kmと計算された。その後、探査機を水平方向に方向転換させて、探査機が地球から充分遠く離れるまでその速度を計算した。その計算結果は、約30kmと元の速度に戻っていたので、地球の重力によって探査機が受ける加速のゲインは0になる。また、近地点以後の探査機の飛行経路を上記の鉛直線と水平線の中間であるy=xの45度線に沿ったものにして再計算した。その結果は同じく約30kmに戻るものであった。
ここで初めて気が付いた。探査機が遠くから地球に接近して再び地球から遠く離れる場合、探査機がどのような飛行経路をとろうと、地球の重力による加速のゲインはないという計算結果になるということを。これは探査機の飛行経路が角運動量保存則という自然法則に支配されるためであることを認識した。
そこで、ネット検索によってスイングバイの参考文献を参照することにした。これにより、探査機の速度を加速させるためには、地球の公転速度が必要であることを知った。つまり「重力アシスト」とは、地球の重力だけでなく、太陽の重力あってのアシストなのである。無意識のうちに天動説に陥っていて、地動説まで考え及ばなかったということだろうか。
探査機が公転する地球の後ろ側を近地点として通過する場合に加速スイングバイができるということで、このコースをとることにする。探査機は、地球が近づくのを待ち構える態勢では、探査機の速度と地球の公転速度とは無関係なはずである。探査機が近地点を通過して地球の公転に伴走するような経路に進入するとき、探査機は、一時期、あたかも地球の人工衛星になったかのような状態となって、加速分を受け取ることになり、その加速分は地球から遠く離れた後も保存されるということであろう。
地球の公転速度は、およそ30km/sである。地球のまわりを周回する人工衛星は、地球と一体となっているので、太陽に対する公転速度は30km/sである。探査機は、地球の公転の角運動量の一部を譲り受けて、いわば中途半端な形で地球の人工衛星となるので、30km/sの一部を速度のゲインとして受け取ることができるのだろう。どの程度のゲインになるのかは、飛行経路と軌道制御のよしあしに依存するのであろう。
なお、探査機に公転運動のエネルギーの一部を渡した地球は、公転の角運動量のわずかな減少によって、その公転速度がわずかに増える結果となるが、その増分は無視できるので、公転速度は変わらないとみなしてよい。太陽系の一員であり、公転運動に参加している地球がその角運動量の減少によって速度が増えるのに対して、公転運動に参加していない流れ者の探査機が太陽系に寄生してその運動量を増やすところが面白い。
参考文献
ウィキペディア「スイングバイ」などのネット情報
タイム誌によれば、クリッパーは、地球を出発してから太陽の周囲を2回まわった後、25年2月27日に火星を通過し、26年1月12日に地球に戻ってその近くをUターンした後、木星に向けて飛行し、30年4月11日に木星に到着する予定である。探査機が太陽を周回するのは、火星の公転運動に合わせる時間待ちのためか。また、火星のそばを飛行し、地球に接近するのは、スイングバイによってそれぞれの惑星から「重力アシスト」を受けるためである。
火星―地球間の最短距離は7.8×10^7kmなので、この間の経過日数319日で割ると、探査機の平均秒速は、2.83km/sとなる。また、地球―木星間の最短距離は5.5×10^8kmなので、この間の経過日数1569日で割ると、探査機の平均秒速は4.04km/sとなる。実際には、惑星間の飛行距離は最短距離より長くなるだろうから、確かなことは言えないが、これらの平均秒速を信じるなら、火星と地球のスイングバイによって、探査機は加速されると言える。
ここで、日本の探査機「はやぶさ」が地球に3700kmまで近づいてスイングバイを行ったときのデータが参考になる。このスイングバイによって、はやぶさは、秒速30kmから同34kmに加速して地球を通過したという。スイングバイを実行するためには、精密な軌道制御をする必要があるようだ。
はやぶさが地球の重力を利用して加速するのであれば、簡単なコンピュータ・シミュレーションによってその様子を確認できるのではないかと考えて実行してみた。初速30kmで飛行していた探査機が地球の中心に向かう鉛直線に沿って自由落下し、地球上空3700kmの近地点まで飛行させる。この近地点で探査機の速度は約40kmと計算された。その後、探査機を水平方向に方向転換させて、探査機が地球から充分遠く離れるまでその速度を計算した。その計算結果は、約30kmと元の速度に戻っていたので、地球の重力によって探査機が受ける加速のゲインは0になる。また、近地点以後の探査機の飛行経路を上記の鉛直線と水平線の中間であるy=xの45度線に沿ったものにして再計算した。その結果は同じく約30kmに戻るものであった。
ここで初めて気が付いた。探査機が遠くから地球に接近して再び地球から遠く離れる場合、探査機がどのような飛行経路をとろうと、地球の重力による加速のゲインはないという計算結果になるということを。これは探査機の飛行経路が角運動量保存則という自然法則に支配されるためであることを認識した。
そこで、ネット検索によってスイングバイの参考文献を参照することにした。これにより、探査機の速度を加速させるためには、地球の公転速度が必要であることを知った。つまり「重力アシスト」とは、地球の重力だけでなく、太陽の重力あってのアシストなのである。無意識のうちに天動説に陥っていて、地動説まで考え及ばなかったということだろうか。
探査機が公転する地球の後ろ側を近地点として通過する場合に加速スイングバイができるということで、このコースをとることにする。探査機は、地球が近づくのを待ち構える態勢では、探査機の速度と地球の公転速度とは無関係なはずである。探査機が近地点を通過して地球の公転に伴走するような経路に進入するとき、探査機は、一時期、あたかも地球の人工衛星になったかのような状態となって、加速分を受け取ることになり、その加速分は地球から遠く離れた後も保存されるということであろう。
地球の公転速度は、およそ30km/sである。地球のまわりを周回する人工衛星は、地球と一体となっているので、太陽に対する公転速度は30km/sである。探査機は、地球の公転の角運動量の一部を譲り受けて、いわば中途半端な形で地球の人工衛星となるので、30km/sの一部を速度のゲインとして受け取ることができるのだろう。どの程度のゲインになるのかは、飛行経路と軌道制御のよしあしに依存するのであろう。
なお、探査機に公転運動のエネルギーの一部を渡した地球は、公転の角運動量のわずかな減少によって、その公転速度がわずかに増える結果となるが、その増分は無視できるので、公転速度は変わらないとみなしてよい。太陽系の一員であり、公転運動に参加している地球がその角運動量の減少によって速度が増えるのに対して、公転運動に参加していない流れ者の探査機が太陽系に寄生してその運動量を増やすところが面白い。
参考文献
ウィキペディア「スイングバイ」などのネット情報