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AI時代について思うこと

2025-01-12 08:40:22 | ブログ
 人工知能(AI)の発展により、世の中はアルゴリズム万能の時代からコンピュテーショナルあるいはシミュレーショナルな時代に移行しているように感じる。昨年、ノーベル賞の受賞対象となった「アルファフォールド」-たんぱく質の立体構造を高い精度で予測する成果は、ひも状に連なったアミノ酸がどのように折りたたまれるかという難問を解決に導いたということで、改めてAIの威力に感心したが、将棋や囲碁の局面の予測と同様に、もともとアルゴリズムが通用しなかった問題にAIを適用して成果を挙げたということで、驚嘆するというほどではなかった。しかし、天気予報のためのモデル作成というこれまでニュートン力学に依存していた分野にAIが活用され、計算速度と予報精度を向上させた事例を知ると、時代は大きく移り変わり、科学哲学をはじめ一般向けの科学書や気象通論などは改訂する必要がある時代に入ったと考える。

 ネット情報によれば、AIは、膨大なデータを解析し、パターンを見つけ出すことで、天気予報の精度を向上させるという。AIモデルは、物理モデルに基づいて計算する従来のスパコンに比べて、パソコン1台で計算可能であり、数分で結果を得ることができる。また、AIは、過去のデータを基にした予測に加え、リアルタイムのデータを取り入れることで精度を高めているという。特に、上空での予測精度が高いので、台風やハリケーンの進路予測に成功を収めているという事例がいくつか報告されている。また、タイム誌によれば、AIモデルは、短期よりも中期の天気予報の予測精度が高いようだ。短期の大気圏層は大気のゆらぎが大きいが、中期の天気予報となると、天候が比較的安定するので過去データが有効に活用できるのだろうか。850hPa(海抜1500m)以上の上空層でのAIの予測精度が高いということと、短時間で大気圏下部を進む台風の進路予測が高い精度で的中するということがどう関連するのか、詳しいことは分からないので、私の宿題としておきたい。なお、AIモデルによる台風予測は、進路予測の精度は高いが、勢力予測の精度は従来モデルよりも低いとのことである。

 AIの進展によって、たとえば参考文献1,3のような科学哲学に関する話題や参考文献2のような非線形科学がどう進展していくのかについて注目していきたい。

 筑波大学の浦山俊一先生の「自己複製するRNAと生命の深い関係」と題する講演を聴講したことがある。浦山先生のお話によると、数十万種以上あると想定されるRNAウィルスの塩基配列と思われるものが配列空間の中に位置づけられているようだ。そのRNAウィルスの中には、AIが提示したものも含まれるというのも興味深いところである。

 RNAワールドに関する参考文献4の記述を引用する: 「もし体内の酵素をすべてRNAでつくれるとすれば、(遺伝)情報の保持と、生物としてのはたらきの両方をRNAで実行できるかもしれず、RNAだけで生物をつくれるならば、核酸とタンパク質の両方を必要とする生物よりも、偶然に形成される可能性が大きいかもしれないと考える学者が現れ、最初にRNAワールドが出現したという考えに同調する人も多い。しかし、具体的にはなんの証拠もない。」

 RNAワールドが正しいと仮定すると、RNAの起源が生命体の起源を意味することになる。惑星上に存在する化学物質を材料として、自己組織化によってどのようにしてRNAが形成されたかを説明する理論は、多くの人々にとって興味ある問題であろう。生命の起源を説明する理論は、アルゴリズム的ではなく、シミュレーション的であり、その結果、何らかの情報ネットワークが構成され、相転移が生じたものと夢想する。相転移は、シミュレーション的にしか起こらないと考えるからである。そうなると、生命の発生は、AIを抜きにしては考えられない。ただ、そのAIモデルは、過去のデータが証拠として提示されるわけではなく、AI自体がつくり出さねばならないという難関の壁が待ち構える。

参考文献
1. 森田邦久著「科学哲学講義」(ちくま新書)
2. 蔵本由紀著「非線形科学」(集英社新書)
3. 丹羽敏雄著「数学は世界を解明できるか」(中公新書)
4. 野田春彦著「新しい生物学」(ブルーバックス)

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