金なし芳一 第二話

「のぼる師匠様、私はこのままでは悪魔に金を奪われてしまいます
どうすればいいのでございましょうか」

「体中いたるところに油性マジックで『アッラーアクバル』と経文を書きなさい
それで悪魔にはそなたの姿が見えなくなるとです」

「油性マジックでないといけないのですか」

「だいじょうぶだよ。次のソンクランできれいに洗い流される
それと、もし金が奪われては大変だ。
財布の中身を今のうちにすべて私に預けなさい
キャッシュカードも渡すとです、パスワードも教えるとです」

「師匠、ありがとうございます
これで金の亡者どもから身を守ることができます
おかげさまで今晩もベンチュラハイウェイの練習ができます」

芳一は足速に銀行のATMに向かう師匠を見送った
師匠の後ろには金色の後光が差しているようだった

金なし芳一 第一話

それは風の強い夜だった
芳一はいつものように海辺の岩場に立ちサイレントギターで
ベンチュラハイウェイのイントロの練習をしていた
すでに芳一に耳は無かったから
音の無いギターでも充分に練習が出来た

そこに悪魔がやってきた

「これ、芳一よ、お前に金をやろう
これで株やFXをするのだ
金は何倍にも膨れ上がり、お前はすぐに幸福になる
耳の手術もできるし
ギブソンのギターだってすぐに買えるぞ」

「いいえ、私に金は不要です
金で未来を買えたとしても
その未来は本当にやってくるのでしょうか
私はそれよりも今の不幸を大事にしたいのです」

「ははは、お前は馬鹿だな
それじゃあ、お前の持っている金をすべて奪ってやろう
金がどんなに大事なものかがわかるだろうて
明日の夜にまた来るぞ」

そう言い残すと悪魔は夜の闇に消えていった

御祓い

他の人には見えないものが
時々見えるのでしんどい

ルルドの聖水

新しい部屋には前の悪霊が棲んでいるので
まずこの聖水でお清めをする
それ以外には
ご飯にかけて
水茶漬けにもする