「今晩のおかずは里芋の煮っ転がしだけだわね
これも父さんが倒産するからいけないのよ
自分の会社なら最後まで自分で守るべきだったのよ
少しは半沢直樹を見習えって話だわ
父さんは仕事の中身なんてどうでもよかったのよ
ただ、お金の数字が増えることなら、株でも土地でも
何でも良かったのよ
企業を支えるのは人だって事に気づきもしなかったのよね」
奥の部屋から父親の大きなクシャミが聞こえた
母親は目の前の里芋に向かってたてつづけにしゃべり始めた
里芋だけは素直に聞いてくれた
「こうなったら、フェイスブックに、恨みつらみをみんな書いてやるわ
もともと、私は文章書くのは家系的に得意だったのよ
安雄には国立大学を出て、東京中央銀行みたいなところに就職してほしかったのよ
お隣の奥さんに『うちの息子は、火星のスパイダーバンドのリードボーカルです』って
そんな事言えるはずないじゃないの、頭おかしいと思われるわよ
お隣のご主人は航空会社のパイロットなのよ
高校じゃ半沢君より安雄のほうが成績は上だったはずよ
まあ、今のうちは、火星のスパイダーバンドでも許すとして
30歳までにはきっちりカタを付けるのよ
才能の賞味期限は30歳なのよ
30歳でだめだったら、きっちりサラリーマンになりなさい
厚生年金基金と健康保険組合を持ってる程度の大きな会社のね」
母親はたてつづけにフェイスブックに投稿すると
新宿でエレキギターをじゃかじゃかやってる安雄がこれを読んで
きっと改心してくれるに違いないと信じた
目の前の里芋は
「あいつは改心しやしねえよ」
そう言っているように見えた
カッとなった母親は里芋をみじん切りにした
これも父さんが倒産するからいけないのよ
自分の会社なら最後まで自分で守るべきだったのよ
少しは半沢直樹を見習えって話だわ
父さんは仕事の中身なんてどうでもよかったのよ
ただ、お金の数字が増えることなら、株でも土地でも
何でも良かったのよ
企業を支えるのは人だって事に気づきもしなかったのよね」
奥の部屋から父親の大きなクシャミが聞こえた
母親は目の前の里芋に向かってたてつづけにしゃべり始めた
里芋だけは素直に聞いてくれた
「こうなったら、フェイスブックに、恨みつらみをみんな書いてやるわ
もともと、私は文章書くのは家系的に得意だったのよ
安雄には国立大学を出て、東京中央銀行みたいなところに就職してほしかったのよ
お隣の奥さんに『うちの息子は、火星のスパイダーバンドのリードボーカルです』って
そんな事言えるはずないじゃないの、頭おかしいと思われるわよ
お隣のご主人は航空会社のパイロットなのよ
高校じゃ半沢君より安雄のほうが成績は上だったはずよ
まあ、今のうちは、火星のスパイダーバンドでも許すとして
30歳までにはきっちりカタを付けるのよ
才能の賞味期限は30歳なのよ
30歳でだめだったら、きっちりサラリーマンになりなさい
厚生年金基金と健康保険組合を持ってる程度の大きな会社のね」
母親はたてつづけにフェイスブックに投稿すると
新宿でエレキギターをじゃかじゃかやってる安雄がこれを読んで
きっと改心してくれるに違いないと信じた
目の前の里芋は
「あいつは改心しやしねえよ」
そう言っているように見えた
カッとなった母親は里芋をみじん切りにした