河童アオミドロの断捨離世界図鑑

ザスドラス博士の弟子の河童アオミドロの格安貧困魂救済ブログ。

八田八郎物語 3 なんちゃってSTAP細胞

2014年06月16日 | 八田八郎物語
西暦2300年の現在、STAP細胞は実用化されている

約200年の間、捏造の汚名をかぶったままだったが
今では全国のすべての小学校の校庭に
割烹着を着てワカメを水で戻しているオモダカ博士の銅像が建っている

これには、父、八田二郎のSTAP細胞啓蒙活動が大きく貢献した
八田二郎は常日ごろから不老不死を願っていた
アンドロイドであっても寿命はいつかくるのだ

西暦2014年の春、テレビのワイドショーを見ていた二郎は
「酸性の液体にマウスを漬けるとSTAP細胞になる」
と聞き、梅干の瓶にドブネズミを一晩漬けておいた
すると、翌朝、瓶を開けてみると
梅干とネズミに加えて猫が入っていたのだ

これで二郎は確信した
「酸で刺激を受けたネズミが分裂して猫になったのだ」と
それからというもの、二郎は、全国の大学と病院を行脚し
梅干の瓶とネズミで公開実験を繰り返したのだった

そして、ついに西暦2200年
STAP細胞は機械の体にさえ変化することを発見した
梅干の瓶にドラえもんが入っていたからである

だからこそ、僕、八田八郎は誕生したのだ

何事も不可能なことは無い
無いはずのSTAP細胞も心で強く念じれば
その時から世界に出現するのである

八田八郎物語 2 再起動

2014年06月16日 | 八田八郎物語
長崎造船所の秘密の地下室は、この梅雨の季節独特のにおいがする
何百年も前の古いコンクリートがカマンベールチーズのような香りを発するのだ
いや、これは、僕自身を覆っている青カビの匂いかもしれん、加齢臭かもな

無くなったスタートボタンから「再起動」を押した
幽体離脱した僕の下に見える八田二郎の体はたぶんの僕のサナギだ
父、八田二郎の部品をオモダカ博士のなんちゃってSTAP万能細胞によって
すべてを複製することで僕は再起動した

還暦というのはたぶん再起動のことだ

自分自身とそれを外から見ている別の自分がいるというのは不思議な気分だ
まるで国際宇宙ステーションの窓から地球を見ている気分だ

目の前が真っ青になった
これは再起動に失敗した時のブルースクリーンだ

この青はどこかで見た事がある
そうだ、八田二郎が記憶している六月の初めのアジサイの花の色だ
初夏の富良野のラベンダーの色だ

長崎造船所の秘密の地下室は湿った空気をかき混ぜる
冷却ファンの音だけが低くうなっていた