「おじさん、ボウイが死んだらしいよ、おじさんの親友だったんだろ」
「もう、遥か昔の事だ、新宿の事務所でボウイとよく遊んだが、息子のゾウイの話ばかりしていた
俺はもっと音楽の話がしたかったんだ、グラムロックのな」
「でも、上昇したり下降する火星から来た蜘蛛の群れを、おじさんは実際に見たんだよね」
「あれは、レコードを聴く前に急いで書いたフレーズだ。今となっては後悔してるが
あの誤訳だからこそボウイの本質を表すことができたのかもしれない」
「でも、ボウイはアメリカに行ってから普通のおっさんになってしまった
そこらへんが、おじさんの不満なところなんだよね」
「しかたないことだ、人は誰しも老いてしまい、グラムロックの本質を忘れてしまう
でもな、四郎、忘れるんじゃないぞ、グラムロックっていうのはな
夏の初めのプールの匂いなんだ、誰よりも一番先に飛び込んだ時、鼻にツンとくる塩素の匂いだ
この事を忘れるんじゃないぞ」
「わかったよ、プールの青は嘘の青なんだよね、本当の青はその上にある
宇宙の空色なんだよね」
八田四郎はプールに張った氷の上を滑りながら、この氷の下にある青い水は
いつまでも空の青さを記憶していて、また夏になると
忘れかけていた宇宙の空色とボウイの蜘蛛の群れをよみがえらせてくれるものだと
固く信じて、四回転トゥーループをきっちり決めた。
ヒノキの花粉とともに光の春はもうすぐそばまで来ていた。
「もう、遥か昔の事だ、新宿の事務所でボウイとよく遊んだが、息子のゾウイの話ばかりしていた
俺はもっと音楽の話がしたかったんだ、グラムロックのな」
「でも、上昇したり下降する火星から来た蜘蛛の群れを、おじさんは実際に見たんだよね」
「あれは、レコードを聴く前に急いで書いたフレーズだ。今となっては後悔してるが
あの誤訳だからこそボウイの本質を表すことができたのかもしれない」
「でも、ボウイはアメリカに行ってから普通のおっさんになってしまった
そこらへんが、おじさんの不満なところなんだよね」
「しかたないことだ、人は誰しも老いてしまい、グラムロックの本質を忘れてしまう
でもな、四郎、忘れるんじゃないぞ、グラムロックっていうのはな
夏の初めのプールの匂いなんだ、誰よりも一番先に飛び込んだ時、鼻にツンとくる塩素の匂いだ
この事を忘れるんじゃないぞ」
「わかったよ、プールの青は嘘の青なんだよね、本当の青はその上にある
宇宙の空色なんだよね」
八田四郎はプールに張った氷の上を滑りながら、この氷の下にある青い水は
いつまでも空の青さを記憶していて、また夏になると
忘れかけていた宇宙の空色とボウイの蜘蛛の群れをよみがえらせてくれるものだと
固く信じて、四回転トゥーループをきっちり決めた。
ヒノキの花粉とともに光の春はもうすぐそばまで来ていた。