河童アオミドロの断捨離世界図鑑

ザスドラス博士の弟子の河童アオミドロの格安貧困魂救済ブログ。

切望と希望の薄切りパック

2016年01月30日 | ZIZY STARDUST
「あんた、酒の肴、買うてきましたで、
『絶望』は売り切れやったさかい、『切望』と『希望』の薄切りパック買うてきましたえ、
『切望』が薄さ0.2mm、『希望』が0.1mmらしいですえ」

「なり、れつぼうわ、なかっらんか、もうれつぼうわ今は人気ないろあろあ、
酒のみすぎて、べろべろや、その『切望』とかゆゆツマミ開けてくれら
もう、なにしゃべてるらわけわからん、れろがおからみすごからい」

「これわえらい薄いなあ、向こうが透けて見えるれれ」

「説明書きに書いてありますえ、
『陽にかざすと未来が見えます』と書いておます」

「ほんまらいな、ちょうと見てみるわら
ほんまや、向こうから天使みたいな人がこっちに来るら」

「あ、あれどすか、市役所の福祉局の人ですわ
医者の診断が必要やさかい、お医者さん同行ですよってに
あれは天使ではおません、心療内科のお医者さんですわ」


絶望を薄く薄く切ってスライスしていくと、やがて切望になるのだという。
さらにそれを薄くすると希望という希薄なフィルムになって、
絶望のどん底からそのフィルムを見ると、
頭の中に幸福な映像が映し出されるのだという。

人はそうやって、なんとか、絶望という黒いカタマリにラップをかけて、
死ぬまで生きていくのだと、古代ケルトの賢人たちは言っていた。

絶望という翼

2016年01月30日 | ZIZY STARDUST
「絶望や、絶望や、とし子、酒の肴に絶望を買うてこい」

「どこのおつまみなんですか、なとりの新製品ですか」

「このへんのスーパーには売ってないんや、東京に行けばなんぼでも売っとったんや」


「あれは、わてが東京の学生下宿で昼寝をしてる時やった」


「八田さん、ゆうぱっくです。神様から八田さんあてに無料プレゼントが来てますよ。
受け取りのハンコかサインお願いします」

「なんやて、無料プレゼントやて、受け取るわ」

「着払なんで送料1600円になります」


「わては、大急ぎで箱を開けた、そしたら、中に閉じ込められた、
無数の虫たちが、わさわさーと出てきて、羽のあるものは空に飛び立ち、
イモムシのようなものは地にもぐったり、部屋の天井でサナギになった」

「そして、最後に箱の中に残ったものが『絶望』という翼だけやったんや」

「翼、というと絶望っていうのはフカヒレか手羽先みたいなもんなんやな」

「そうや、決して飛ぶことのできない、翼の折れたエンジェルなんや」


いつの時代も、デザイナーやミュージシャンやIT起業家やタレントや気象予報士に、
なることを目指して、多くの若者が東京にやってくる。

そして、ある日、着払いで送られてくる神様からのプレゼントを開けてしまい、
その、決して飛ぶことのできない絶望の折れた翼を肩甲骨に突き刺して、
一生を終えてしまうのだった。

一月の終わりの夕暮れは、その寒さとは裏腹に暖かい色をしていた。