500m美術館の展示を見終えてから、未来劇場にやって来た。
この会場のテーマは「これからの100年、さらにその先を考えて見てもらいたい」ということらしい。これを見に来た人で、これから100年後に生きている人はほぼいないと思うが、想像力を巡らせるということは重要である。
KOMAKUS「ウコウク」:まだ暗闇に目が慣れない導入部にある作品。弦を鳴らすかのような音は、ムックリの音を想像させるところがある。
チェ・ウラム「無限の穴」「穴の守護者」「素敵に枯れていきたい、君と。」:天井から下がる白い花がいつか枯れ、それが無限の穴に吸い込まれていき再生する。そしてそれを機械の守護者が見守っているというストーリーらしい。人類が滅びた後に、AIや機械が残ることは容易に想像ができるが、SF小説のようにそれらが何万年も活動を続けるということは、現在の技術では実現困難であろう。
後藤映則「in motion」:回転する造形物に光が当たり、人が歩いているように見えるという作品。私たちは果たして前進しているのだろうか。
■青木美歌「starting from light coming back to light、他」:人類が滅んだあと、原始的な生命体が跡を継ぐということは当然想像しえることだろう。そしてそれは何千万年と続くのだろうか。
また再び、意識を持つ存在が現れるのだろうか。人間に意識があるかどうかという問題はさておいてだが…。
この会場が劇場であるだけに、作品ならずともいろいろと面白いものが周りにもある。
エイミー・カール「存在の谷からのエコー」:最初に何やら動画があるのに気を取られてしまったが…。
この会場では、人間が入力したメッセージを保存している。
さらに希望者はDNAを提供することも可能である。
さらに後から気がついたのだが、自分の顔かたちもキャプチャされてデジタル保存され、メッセージやDNAと共に2026年に打ち上げられるロケットにより月に保存されるというのだ。部屋を出る時に「入室は、あなたの顔と身体がデジタルでキャプチャされることへの同意を意味します」って書いてあるのに気がついたけど、ちょっと説明不足だな(文章が周りに沢山あって、見てない人も大勢いそう。メッセージとDNAの提供は能動的に何かしないと行われないからそれでいいけど、個人を特定できる情報の収集をするには告知が不十分であると思う)。
テガ・ブレイン+ジュリアン・オリヴァー+ベングト・ショーレン「Asunder」;世界の環境問題をAIが管理したらどうなるのかというコンセプト。「都市や河川、森林の移動、国同士の統合、海岸線の直線化などの不条理な解決策が提示されていきます」とあるが、「国同士の統合」はシンプルかつ、合理的な解決策ではなかろうか(人種主義者、国粋者には不条理かもしれないが)。
まあ、普通のAIだったら、人類抹殺を考えると思うけどなあ。または、このシミュレーターに人類の意識を住まわせる時代があっという間に来るかもしれないね。
シン・リウ「Gleaming Bodies」:白い部屋を見ると「2001年宇宙の旅」を思い出す人はおじいさん。
長谷川愛「Multiple Futures」:2124年の札幌は雪がほとんど降らない世界になっていた。その世界にVRで入り込むという作品なのだが、どうもVRを試す気にあまりならないんだよね。他の人が「やりたい」というのを聞いてみると、待ち時間が結構あるようだった。
スーパーフラックス「Refuge for Resurgence, Window View」:文明世界が海中に沈み、それを廃墟となった高層ビルの窓から眺めるという作品。
ジョヴァンニ・ベッティ+カタリーナ・フレック「Invisible Mountain」:イタリアのアルプス山脈で氷河がとけるのを防止するために、白い布で氷河を覆うという活動を紹介したもの。この布は環境負荷が高いプラスチック製であり、2年に1回交換しなければならないくらい、すぐに劣化するという皮肉な現実なのである。
その時の山の稜線を再現するように布が展示されている。
キャシー・ジェトニル=キジナー+アカ・ニワイアナ「Rise:From One Island to Another」:マーシャル諸島の詩人とグリーンランドの作家が共同で作成した詩を朗読する作品。島は氷河と並んで環境変化が最も早く出やすい場所の一つなのだろう。
クアヨラ「Remains:Vallee de Joux」:スイス山奥の森を記録したもの。遠くから見ると森に見えるが、近くに寄ってみるとデジタル処理されたポリゴンであることが分かる。何となく「松林図屏風」のことを思い浮かべる。
国松希根太「WORMHOLE」:北海道の巨木を使った彫刻。無言ながらに何かを語りかけてくるかのような存在感がある。
チェ・ウラム「Red」:開いたり閉じたりする赤い花。生と死の境目を行き来しているかのようだ。
ワビサビ「LAST SNOW」:札幌と世界各都市の積雪量を表現したり、中谷宇吉郎の研究紹介などの展示。
h.o「WRITING THE FUTURES」:未来の人に手紙を書き、またその返事を受け取るというコーナー。
WACOM「Last Ink」:展示会場を出ると、いろいろ書き込みのできる、参加型コーナーがあった。
フジ森「自分だけの雪の結晶、ゆきフレーム」:画像の真ん中にある緑色のモヤっとしたものは、私の姿が取り込まれたものらしい。
これにて終わり。
現在を起点にして、人の未来を考えさせるということでは、非常に示唆に富んだ展覧会であったと思う。そしてなおかつ、アート作品としての力に優れたものも多く、良い展覧会だったと思う。写真では伝えきれないものが多く、ぜひ興味を持った人には現物を見てほしいものである。
この会場のテーマは「これからの100年、さらにその先を考えて見てもらいたい」ということらしい。これを見に来た人で、これから100年後に生きている人はほぼいないと思うが、想像力を巡らせるということは重要である。
KOMAKUS「ウコウク」:まだ暗闇に目が慣れない導入部にある作品。弦を鳴らすかのような音は、ムックリの音を想像させるところがある。
チェ・ウラム「無限の穴」「穴の守護者」「素敵に枯れていきたい、君と。」:天井から下がる白い花がいつか枯れ、それが無限の穴に吸い込まれていき再生する。そしてそれを機械の守護者が見守っているというストーリーらしい。人類が滅びた後に、AIや機械が残ることは容易に想像ができるが、SF小説のようにそれらが何万年も活動を続けるということは、現在の技術では実現困難であろう。
後藤映則「in motion」:回転する造形物に光が当たり、人が歩いているように見えるという作品。私たちは果たして前進しているのだろうか。
■青木美歌「starting from light coming back to light、他」:人類が滅んだあと、原始的な生命体が跡を継ぐということは当然想像しえることだろう。そしてそれは何千万年と続くのだろうか。
また再び、意識を持つ存在が現れるのだろうか。人間に意識があるかどうかという問題はさておいてだが…。
この会場が劇場であるだけに、作品ならずともいろいろと面白いものが周りにもある。
エイミー・カール「存在の谷からのエコー」:最初に何やら動画があるのに気を取られてしまったが…。
この会場では、人間が入力したメッセージを保存している。
さらに希望者はDNAを提供することも可能である。
さらに後から気がついたのだが、自分の顔かたちもキャプチャされてデジタル保存され、メッセージやDNAと共に2026年に打ち上げられるロケットにより月に保存されるというのだ。部屋を出る時に「入室は、あなたの顔と身体がデジタルでキャプチャされることへの同意を意味します」って書いてあるのに気がついたけど、ちょっと説明不足だな(文章が周りに沢山あって、見てない人も大勢いそう。メッセージとDNAの提供は能動的に何かしないと行われないからそれでいいけど、個人を特定できる情報の収集をするには告知が不十分であると思う)。
テガ・ブレイン+ジュリアン・オリヴァー+ベングト・ショーレン「Asunder」;世界の環境問題をAIが管理したらどうなるのかというコンセプト。「都市や河川、森林の移動、国同士の統合、海岸線の直線化などの不条理な解決策が提示されていきます」とあるが、「国同士の統合」はシンプルかつ、合理的な解決策ではなかろうか(人種主義者、国粋者には不条理かもしれないが)。
まあ、普通のAIだったら、人類抹殺を考えると思うけどなあ。または、このシミュレーターに人類の意識を住まわせる時代があっという間に来るかもしれないね。
シン・リウ「Gleaming Bodies」:白い部屋を見ると「2001年宇宙の旅」を思い出す人はおじいさん。
長谷川愛「Multiple Futures」:2124年の札幌は雪がほとんど降らない世界になっていた。その世界にVRで入り込むという作品なのだが、どうもVRを試す気にあまりならないんだよね。他の人が「やりたい」というのを聞いてみると、待ち時間が結構あるようだった。
スーパーフラックス「Refuge for Resurgence, Window View」:文明世界が海中に沈み、それを廃墟となった高層ビルの窓から眺めるという作品。
ジョヴァンニ・ベッティ+カタリーナ・フレック「Invisible Mountain」:イタリアのアルプス山脈で氷河がとけるのを防止するために、白い布で氷河を覆うという活動を紹介したもの。この布は環境負荷が高いプラスチック製であり、2年に1回交換しなければならないくらい、すぐに劣化するという皮肉な現実なのである。
その時の山の稜線を再現するように布が展示されている。
キャシー・ジェトニル=キジナー+アカ・ニワイアナ「Rise:From One Island to Another」:マーシャル諸島の詩人とグリーンランドの作家が共同で作成した詩を朗読する作品。島は氷河と並んで環境変化が最も早く出やすい場所の一つなのだろう。
クアヨラ「Remains:Vallee de Joux」:スイス山奥の森を記録したもの。遠くから見ると森に見えるが、近くに寄ってみるとデジタル処理されたポリゴンであることが分かる。何となく「松林図屏風」のことを思い浮かべる。
国松希根太「WORMHOLE」:北海道の巨木を使った彫刻。無言ながらに何かを語りかけてくるかのような存在感がある。
チェ・ウラム「Red」:開いたり閉じたりする赤い花。生と死の境目を行き来しているかのようだ。
ワビサビ「LAST SNOW」:札幌と世界各都市の積雪量を表現したり、中谷宇吉郎の研究紹介などの展示。
h.o「WRITING THE FUTURES」:未来の人に手紙を書き、またその返事を受け取るというコーナー。
WACOM「Last Ink」:展示会場を出ると、いろいろ書き込みのできる、参加型コーナーがあった。
フジ森「自分だけの雪の結晶、ゆきフレーム」:画像の真ん中にある緑色のモヤっとしたものは、私の姿が取り込まれたものらしい。
これにて終わり。
現在を起点にして、人の未来を考えさせるということでは、非常に示唆に富んだ展覧会であったと思う。そしてなおかつ、アート作品としての力に優れたものも多く、良い展覧会だったと思う。写真では伝えきれないものが多く、ぜひ興味を持った人には現物を見てほしいものである。