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「愛と哀しみの迷宮(ラビリンス) メロドラマの深き谷を歩め」
【それでも、なお・・・~諦念と抒情~】
「夜の片鱗」1964年 松竹 監督:中村登
それは六年前、昼は工場、夜はバーで働く芳江は英次に出会い・・・。滑り落ちるように街娼にまで落ちた芳江が、原色のネオン輝く夜の街を彷徨う。各国の映画祭で上映され、そのスタイリッシュな映像と溢れる抒情性で世界を驚かせたメロドラマの傑作。
魅力的なお母様とちがって単に明るいお嬢様役の多い桑野みゆきさんにはあまり関心を抱けなかったのですが、こんな役も演じていたのですね。ご本人にとっても印象深い作品であることが想像されますが、実際はどう思ってんだか知らない。
人生を諦めた街娼としての佇まいは意外なほどクール(内なるものはままりにも哀しい)でネオン街に映える。でも全体を通して観ると結局この女優さんの魅力がより出ているのは女工員の場面だったり千石規子の所のバーで働く素人アルバイト時の明るさに落ち付いてしまったりするわけです。
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図らずも昨年亡くなった平幹二朗の良い追悼ができました。
クズなヤクザもの棹師としての特性である笑顔がとてもカワユイ。あれでやられちゃうんですな。
出入りの際に男としての機能を失ってからの変化も悲哀で良いんだな。
平幹二朗の出演作はあまり観ていないのだけれど、案外どれも良い印象。なかでも本作は今のところベストです。
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菅原文太がそれらしい組の幹部役。
時代と桑野みゆきという素材のため間接的に見せざるを得ない輪姦シーンも逆に効を奏している感。
「みれん」同様に何も解っちゃいない部外者の常識の押しつけがここでも見られました。
しかし、この園井啓介の役は本当にひどい自己中正義感で辟易としてしまいます。
そもそもあんな街でナンパした女性が素人娘だと本気で思っている滑稽さ。喫茶店での会話。話題が無くて、ダムを作る仕事の話になると饒舌になる。と同時に桑野みゆきが呆れかえってウンザリしている表情が最高に面白い。
園井啓介の役はムカつくものの本作の重要なポイントですから、突っ込みながら楽しむ作法が良いと思います。
フィルムノワールな事件に発展するラストはちょっと意外でした。
とんでもない抒情性ですね。
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シネマヴェーラ渋谷
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【それでも、なお・・・~諦念と抒情~】
「夜の片鱗」1964年 松竹 監督:中村登
それは六年前、昼は工場、夜はバーで働く芳江は英次に出会い・・・。滑り落ちるように街娼にまで落ちた芳江が、原色のネオン輝く夜の街を彷徨う。各国の映画祭で上映され、そのスタイリッシュな映像と溢れる抒情性で世界を驚かせたメロドラマの傑作。
魅力的なお母様とちがって単に明るいお嬢様役の多い桑野みゆきさんにはあまり関心を抱けなかったのですが、こんな役も演じていたのですね。ご本人にとっても印象深い作品であることが想像されますが、実際はどう思ってんだか知らない。
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人生を諦めた街娼としての佇まいは意外なほどクール(内なるものはままりにも哀しい)でネオン街に映える。でも全体を通して観ると結局この女優さんの魅力がより出ているのは女工員の場面だったり千石規子の所のバーで働く素人アルバイト時の明るさに落ち付いてしまったりするわけです。
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図らずも昨年亡くなった平幹二朗の良い追悼ができました。
クズなヤクザもの棹師としての特性である笑顔がとてもカワユイ。あれでやられちゃうんですな。
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出入りの際に男としての機能を失ってからの変化も悲哀で良いんだな。
平幹二朗の出演作はあまり観ていないのだけれど、案外どれも良い印象。なかでも本作は今のところベストです。
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菅原文太がそれらしい組の幹部役。
時代と桑野みゆきという素材のため間接的に見せざるを得ない輪姦シーンも逆に効を奏している感。
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「みれん」同様に何も解っちゃいない部外者の常識の押しつけがここでも見られました。
しかし、この園井啓介の役は本当にひどい自己中正義感で辟易としてしまいます。
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そもそもあんな街でナンパした女性が素人娘だと本気で思っている滑稽さ。喫茶店での会話。話題が無くて、ダムを作る仕事の話になると饒舌になる。と同時に桑野みゆきが呆れかえってウンザリしている表情が最高に面白い。
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園井啓介の役はムカつくものの本作の重要なポイントですから、突っ込みながら楽しむ作法が良いと思います。
フィルムノワールな事件に発展するラストはちょっと意外でした。
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とんでもない抒情性ですね。
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シネマヴェーラ渋谷
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