競輪にはまっていた時期があります。
とは言っても嗜む程度、サラリーマンのお遊びの域ですが。
そのころ、私の競輪の師匠が図書館で見つけて推薦してくれました。
当時、読んで非常に共感を持ち、感銘を受けた小説。
図書館でコピーをとってA5版に製本して愛蔵していたくらい。
今回はその再読。
現在、所収されている本は売られていないので図書館か古本屋で探すしかないと思われます。ネットの古書店で発見ゲットしたのは
全集・現代文学の発見・別巻 『孤独のたたかい』であります。
「競輪必勝法」といってもどのように車券を買うのかといったハウツー物ではありません。私の好きな転落人生物語・・・
そこまで行けない中途半端な自分としては、こういう物にはある意味憧れるのでしょうね。
当時、独身で結婚は無理と考えていましたから余計共感を感じたものです。
主人公 私は東大卒の出版社勤務。従兄弟の良雄は競輪選手。
将来を嘱望された二人だったが、良雄は酒におぼれ練習もせず。私も仕事をさぼって競輪通い。酒さえ飲まなければA級の実力はあるが、もはやB級に落ちて八百長に手を染めようかと転落していく。私も会社を首にならないのが不思議なくらい、閑職に回されA級社員から脱落。
そんな私でも女性とは巡り合う。最初の女性は賢く、競輪にすっかり浸った男から静かに去る。次に知り合いに紹介された不良少女、夏子が実に可愛らしいのだが、競輪に夢中で何ひとつ気遣ってやれず、やがては別離・・・
「結婚するなら、どんなに貧乏させられても、どんなに惨い目にあっても、帰っていく実家のない孤児を探すよりないと思ったりしたが、探すより、競輪の方が、おもしろかった。」
「どうしても競輪がやめられないのか。困ったやつだなぁ。」
と編集長に小言を言われている。
編集長の顔をよく見ると、田淵実(A級選手)に似ていることを発見した。
「どうだ。」
「はあ。」
ここで、あなたにそっくりの競輪選手がいますよと言ったら、ひっくりかえって怒るだろうと思った。
このままなら、いつか、夏子は、いなくなるだろう。自分勝手な愛し方だけれども、やはり愛している。これは愛とは認めてもらえまい。都合がいいから重宝しているだけだ。どちらにしろ、夏子に行かれたら困る。あんなにけなげで、明るくて、魅力的で、男を立ててくれて、そして気のいい女は、二度とみつかるまい。何とかしなければと思った。
そして、競輪へ行った。競輪が一番良い逃避場であった。
夏子と別れたころ、また、良雄が訪ねてきてウイスキーを飲む。
良雄も女房が子供を連れて出て行った。
「あかんなぁ」
「うん。お互いにあかんかったなあ」
「仕方ないなあ」
悲しい結末にはちょっとした落ちがありますが、これは苦笑。
昭和38年の作品で
私が競輪に通っていた頃とは比べ物にならないくらいイメージの悪い世界だったでしょう。
同じ頃作られた西村昭五郎の映画「競輪上人行状記」がありますが、これも暗く、カルトチックで日本映画を10本選ぶ時には是非入れたい作品です。
未だに、年をとったらまた、小銭を握り締めて、金網越しに競走を見に行きたいものだと思ってはいますが、最近の競輪もなかなか苦しいようで・・・
こちらが元気でいられるか、競輪の方が娯楽として成り立っているのか。
競輪小説のみならず、日本文学短編珠玉の一編です。
何だかうちのかみさんにも「申訳ありません」と心の中で手を合わせたくなった。
「孤独のたたかい」
他にもおもしろそうな短編小説が収録されているようです。
今回はこの一編の再読のみ。
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公営では、やはり競輪が一番面白い!
とは言っても嗜む程度、サラリーマンのお遊びの域ですが。
そのころ、私の競輪の師匠が図書館で見つけて推薦してくれました。
当時、読んで非常に共感を持ち、感銘を受けた小説。
図書館でコピーをとってA5版に製本して愛蔵していたくらい。

今回はその再読。
現在、所収されている本は売られていないので図書館か古本屋で探すしかないと思われます。ネットの古書店で発見ゲットしたのは
全集・現代文学の発見・別巻 『孤独のたたかい』であります。
「競輪必勝法」といってもどのように車券を買うのかといったハウツー物ではありません。私の好きな転落人生物語・・・
そこまで行けない中途半端な自分としては、こういう物にはある意味憧れるのでしょうね。
当時、独身で結婚は無理と考えていましたから余計共感を感じたものです。
主人公 私は東大卒の出版社勤務。従兄弟の良雄は競輪選手。
将来を嘱望された二人だったが、良雄は酒におぼれ練習もせず。私も仕事をさぼって競輪通い。酒さえ飲まなければA級の実力はあるが、もはやB級に落ちて八百長に手を染めようかと転落していく。私も会社を首にならないのが不思議なくらい、閑職に回されA級社員から脱落。
そんな私でも女性とは巡り合う。最初の女性は賢く、競輪にすっかり浸った男から静かに去る。次に知り合いに紹介された不良少女、夏子が実に可愛らしいのだが、競輪に夢中で何ひとつ気遣ってやれず、やがては別離・・・
「結婚するなら、どんなに貧乏させられても、どんなに惨い目にあっても、帰っていく実家のない孤児を探すよりないと思ったりしたが、探すより、競輪の方が、おもしろかった。」
「どうしても競輪がやめられないのか。困ったやつだなぁ。」
と編集長に小言を言われている。
編集長の顔をよく見ると、田淵実(A級選手)に似ていることを発見した。
「どうだ。」
「はあ。」
ここで、あなたにそっくりの競輪選手がいますよと言ったら、ひっくりかえって怒るだろうと思った。
このままなら、いつか、夏子は、いなくなるだろう。自分勝手な愛し方だけれども、やはり愛している。これは愛とは認めてもらえまい。都合がいいから重宝しているだけだ。どちらにしろ、夏子に行かれたら困る。あんなにけなげで、明るくて、魅力的で、男を立ててくれて、そして気のいい女は、二度とみつかるまい。何とかしなければと思った。
そして、競輪へ行った。競輪が一番良い逃避場であった。
夏子と別れたころ、また、良雄が訪ねてきてウイスキーを飲む。
良雄も女房が子供を連れて出て行った。
「あかんなぁ」
「うん。お互いにあかんかったなあ」
「仕方ないなあ」
悲しい結末にはちょっとした落ちがありますが、これは苦笑。
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昭和38年の作品で
私が競輪に通っていた頃とは比べ物にならないくらいイメージの悪い世界だったでしょう。
同じ頃作られた西村昭五郎の映画「競輪上人行状記」がありますが、これも暗く、カルトチックで日本映画を10本選ぶ時には是非入れたい作品です。
未だに、年をとったらまた、小銭を握り締めて、金網越しに競走を見に行きたいものだと思ってはいますが、最近の競輪もなかなか苦しいようで・・・
こちらが元気でいられるか、競輪の方が娯楽として成り立っているのか。
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競輪小説のみならず、日本文学短編珠玉の一編です。
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何だかうちのかみさんにも「申訳ありません」と心の中で手を合わせたくなった。
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「孤独のたたかい」
他にもおもしろそうな短編小説が収録されているようです。
今回はこの一編の再読のみ。
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情報ありがとうございます。
早速、調べてみました。今回のen-taxi、特集が面白そうですね。能島廉の作品復活は喜ばしき事です。みんな、読んでね。