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「ブルーに生まれついて」2015年 米 監督:ロバート・パドロー
BORN TO BE BLUE
1950年代、黒人のアーティストたちが中心だったモダンジャズ界へと飛び込んだ、白人のトランペッターでボーカリストのチェット・ベイカー。優しい歌声と甘いマスクで人気を博した彼は、「マイ・ファニー・ヴァレンタイン」などの名曲を放つ。しかし、ドラッグに溺れて破滅的な生活を送るようになる。そんな中、自身の人生を追い掛けた映画への出演を機にある女性と遭遇。彼女を支えにして、再起を図ろうとする彼だったが……。
チェット・ベイカーの一番辛い低迷期にフォーカスを当てた伝記映画という事で日本公開されたら観賞は義務という事にしようと思っていた作品です。
ちょっとモチベーション的に気乗りがしなかったんですが、あまり期待していなかったせいか、案外良かったです。
事実に基づく部分とフィクションが散りばめられた作品らしく、どこが事実でどこがフィクションかは、詳しい解説に依らなければ解りませんが、ジャズ映画として見れば、その辺は問題では無いでしょう。
実際に1987年頃にチェット・ベイカーのドキュメント映画が撮られていたそうで、劇中の伝記映画のシーンを回顧シーンに使っているのは面白い試み。
残念ながらイーサン・ホークの猿顔がどうしても自分の中でのイケメンのチョット・ベイカーのイメージと会わなかったのですが、本人のトランペットと歌は頑張っていて最後の演奏シーンでは充分にチェット・ベイカーをイメージできました。
劇中かなりの部分が恋人ジェーンとのイチャイチャシーンで恋愛映画要素もあります。
これに関しては自分の女優の夢を追い求めながらもドン底ののチェットを支えるジェーンを演じた黒人のカーメン・イジョゴがとても良く、ある意味女性映画の側面も持っているかと。
ダメ男とそれを支える健気な女の構図はもちろん好物です。
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全編を通して麻薬に苦しみながらも立ち直ろうとするチェットの何とも言えない危うさに満ちている。
常に誘惑が潜んでいたりする即物的なものは当然の事ながら、
ジェーンがまるで筆おろしのように誘うベッドシーンもそんな一つ。
嫉妬深く甘えん坊なチェット。
お互い実家の両親を訪ねるシーンの微妙な気拙さ。
チェットと父親との会話の危うさ。若干天狗入ってるチェットに「何で女みたいな声で歌うんだ?」ってのがイイね。
プロデューサー・ディックに再起の道を頼って断られた時に手にする植木鉢なんかも・・・危うい危うい。
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チェットがヘロインに手を染めたきっかけを話す場面がありますが、チャーリー・パーカーへの強い尊敬から来たものというのは、せつないですね。
マイルスとディジー・ガレスピーを演じる役者さんたちのモノマネぶりはちょっと笑えます。
マイルスはずいぶん意地悪で嫌な感じですが、いかにも言いそうな台詞。
当然、全編に渡ってジャズが流れるのも良いです。ミンガスの「Haitian Fight Song」が流れましたが、これはちょっと違和感。ミンガスは嫌いじゃないしこの曲は特に好きですけど他のジャズとの融合は難しいとあらためて思った次第。
もう少しウエストコーストジャズ・シーンが感じられるかとも思いましたが・・・。それはまた別の作品で味わいましょう。
ラストの「I've Never been In Love」から「Born to be Blue」への入り方は映画としてカッコ良いです。
スタンダードの名曲をタイトルにしていますが、なまじ日本語訳の邦題を付けるから迂闊にも気づかなかったじゃないの。
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さて、チェット・ベイカーのリーダーアルバム。所有レコードCDはたったの4枚。
若い全盛期のものばかり。これは復帰後まで手が回ってないというか、爺ぃのチェットにはあまり興味が沸かなかったんですね。
はっきり言って男性ジャズ・ヴォーカルはチェット以外は聴きません。
今度は復帰後の物も聴いてみましょうか。「技術の衰えが返って味わいになってる」らしいです。
■CHET BAKER
Chet
Chet Baker & Art Pepper PLAYBOYS
Chet Baker Sings(CD)
The Trumpet Artistry of Chet Baker
角川シネマ新宿
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BORN TO BE BLUE
1950年代、黒人のアーティストたちが中心だったモダンジャズ界へと飛び込んだ、白人のトランペッターでボーカリストのチェット・ベイカー。優しい歌声と甘いマスクで人気を博した彼は、「マイ・ファニー・ヴァレンタイン」などの名曲を放つ。しかし、ドラッグに溺れて破滅的な生活を送るようになる。そんな中、自身の人生を追い掛けた映画への出演を機にある女性と遭遇。彼女を支えにして、再起を図ろうとする彼だったが……。
チェット・ベイカーの一番辛い低迷期にフォーカスを当てた伝記映画という事で日本公開されたら観賞は義務という事にしようと思っていた作品です。
ちょっとモチベーション的に気乗りがしなかったんですが、あまり期待していなかったせいか、案外良かったです。
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事実に基づく部分とフィクションが散りばめられた作品らしく、どこが事実でどこがフィクションかは、詳しい解説に依らなければ解りませんが、ジャズ映画として見れば、その辺は問題では無いでしょう。
実際に1987年頃にチェット・ベイカーのドキュメント映画が撮られていたそうで、劇中の伝記映画のシーンを回顧シーンに使っているのは面白い試み。
残念ながらイーサン・ホークの猿顔がどうしても自分の中でのイケメンのチョット・ベイカーのイメージと会わなかったのですが、本人のトランペットと歌は頑張っていて最後の演奏シーンでは充分にチェット・ベイカーをイメージできました。
劇中かなりの部分が恋人ジェーンとのイチャイチャシーンで恋愛映画要素もあります。
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ジェーンがまるで筆おろしのように誘うベッドシーンもそんな一つ。
嫉妬深く甘えん坊なチェット。
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お互い実家の両親を訪ねるシーンの微妙な気拙さ。
チェットと父親との会話の危うさ。若干天狗入ってるチェットに「何で女みたいな声で歌うんだ?」ってのがイイね。
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チェットがヘロインに手を染めたきっかけを話す場面がありますが、チャーリー・パーカーへの強い尊敬から来たものというのは、せつないですね。
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マイルスとディジー・ガレスピーを演じる役者さんたちのモノマネぶりはちょっと笑えます。
マイルスはずいぶん意地悪で嫌な感じですが、いかにも言いそうな台詞。
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当然、全編に渡ってジャズが流れるのも良いです。ミンガスの「Haitian Fight Song」が流れましたが、これはちょっと違和感。ミンガスは嫌いじゃないしこの曲は特に好きですけど他のジャズとの融合は難しいとあらためて思った次第。
もう少しウエストコーストジャズ・シーンが感じられるかとも思いましたが・・・。それはまた別の作品で味わいましょう。
ラストの「I've Never been In Love」から「Born to be Blue」への入り方は映画としてカッコ良いです。
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スタンダードの名曲をタイトルにしていますが、なまじ日本語訳の邦題を付けるから迂闊にも気づかなかったじゃないの。
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さて、チェット・ベイカーのリーダーアルバム。所有レコードCDはたったの4枚。
若い全盛期のものばかり。これは復帰後まで手が回ってないというか、爺ぃのチェットにはあまり興味が沸かなかったんですね。
はっきり言って男性ジャズ・ヴォーカルはチェット以外は聴きません。
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今度は復帰後の物も聴いてみましょうか。「技術の衰えが返って味わいになってる」らしいです。
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■CHET BAKER
Chet
Chet Baker & Art Pepper PLAYBOYS
Chet Baker Sings(CD)
The Trumpet Artistry of Chet Baker
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