文章の文法的間違いの識別、修正の訓練を行うことは、正しい文法を身につける有効な方法である。また、ことばの分析能力と応用力を向上させることができる。
文法上の間違いには、いくつかのパターンがあり、それらを把握する必要がある。ここでは、間違いのパターンを項目ごとにみていきたい。
尚、内容は、中華書局《現代漢語》蘭賓漢、那向東主編2006年から取り、理解しやすいよう、言葉を追加した。
(一)“詞”の誤用
詞は、独立して運用でき、意味を有する最小の言語単位である。実詞と虚詞に分かれる。
1、実詞の誤用
実詞:(⇔虚詞)単独で文の主要成分になることができる、比較的具体的な概念を表す語で、名詞、動詞、形容詞、数詞、量詞、代詞がこれに当たる。
(1)名詞の誤用
① 在所有制問題上仍然存在着的种种疑惑,束縛着人們的思想,障碍着改革的深入進行。
例①の“障碍”は名詞であり、賓語を伴うことができない。ここでは誤って動詞として使っている。“阻碍”に改めなければならない。
② 希望你在事業上有所造詣。
例②の“有所××”の書式に入るのは動詞である。ところが、文中で名詞“造詣”zao4yi4を誤って動詞として使っている。“発展、進歩”などに改めるべきである。
③ 在這場足球比賽中,我隊很優勢,最后軽易地戦勝了対方。
例③の“優勢”は名詞であり、程度を表す副詞の“很”の修飾を受けることはできない。名詞を形容詞として誤用している訳である。ここでは、“優勢”の前に“有”を加えるべきである。
(2)動詞の誤用
① 暁声経常給他的弟弟妹妹們、表哥表弟們寄生活補貼,這種出手都不是小数字。
動詞“出手”を“這種”の修飾を受ける名詞として使っているが、この文での意味は“拿出来”、「金を出す」という意味で、この場合は名詞として使うことができず、したがって“這種”の修飾が受けられない。そこで、“出手”の後ろに“的”をつけ、名詞句とすればよい。また、この文で、“数字”は数や数量のことであるが、意味はお金の金額なので、“数目”に変えるべきである。
② 他編造了種種捏造,妄図破壊我們之間的友誼,但他永遠是徒労的。
動詞“捏造”を“編造”の賓語、また“種種”の修飾を受ける名詞として使っている。“捏造”は一般に名詞として使うことができず(辞書には名詞としての用例も出ているが、名詞句的な限られた場合のみ)、ここでは適当でない。“謡言”、“謊言”などに置き換えなければならない。
③ 連続几年糧食收成較好,農副産品的供応也十分保証。
動詞“保証”を程度副詞“十分”を受ける形容詞として使っているが、“保証”を形容詞として使うことはできず、よって“十分”を修飾することはできない。“充足”(十分である。ふんだんにある)に置き換えるべきである。
④ 他説話写文章総是重重複複的,没個痛快勁儿。
動詞“重複”を畳語法の形容詞として使っているが、“重複”を形容詞として使うことはできない。“羅唆”(ことばがくだくだしい。くどい)を畳語にして、“羅羅唆唆”とするべきである。
(3)形容詞の誤用
① 時至今日,我們是不是真的越来越聡明?我們不断寛闊眼界,却不断狭小心胸。
“寛闊”、“狭小”は何れも形容詞で、賓語を伴うことはできない。また、程度副詞“不断”の修飾を受けることができない。そこで語順を入れ替え、“眼界”、“心胸”を主語とする主述句とし、“我們的眼界越来越開闊,但我們的心胸却越来越狭小”とすればよい。
② 但是,遺憾得很,我們至今還極其罕見這様的著作問世。
“罕見”は形容詞で、賓語を伴うことができない。そこで、“著作”を主語とする主述句に改め、“這様的著作還極其罕見”とすればよい。
③ 他們最終把意見一致了。
“一致”は形容詞であるが、述語の中心は他動詞(“及物動詞”)でなければならず、“一致”ではなく動詞“統一”を用いるか、“他們最終達成了一致的意見”に全体を改めるべきである。
(4)数量詞の誤用
① 従前去城坐汽車車需要6個鐘頭,修了高速公路以后,只要3個鐘頭就到了,時間縮短了1倍。
時間の減少は分数で表示され、倍数では表示されない。短縮された時間の3個鐘頭は、もともとの6個鐘頭と比べ、元の半分であるので、“1倍”は“一半”か“二分之一”に改めなければならない。
② 他原来毎月只開200多塊銭,現在1個月能掙400多塊銭,收入翻了両番。
200から400への変化は“多了1倍”、或いは“是原来的両倍”と言うことができる。“翻了両番”は200から400、更に400から800になることを指す。もし“番”を用いて表現するなら、“翻了一番”と言うことができる。
③ 王廠長的模範作用激発了広大工人的労働熱情,産量一下子提高到百分之二十。
“提高到百分之二十”は正味の増加数量を指し、底数を含まない。したがって“提高到”は“提高了”、或いは“提高”に改めなければならない。
④ 我們県向銀行貸款,建起了一座蓄水近15万多立方米的水庫。
“近”、“多”をいっしょに使うことは論理的におかしい。ダムの貯水量により、そのどちらか一方を選択しなければならない。
⑤ 他倆個人是一対合作的好伙伴!
“倆”は“両個”の意味である。したがって、“個人”を削除するか、或いは“倆”を“両”に変えなければならない。
⑥ 他那身汗漬的労働布単帽和半新的家做黄布褂子都早已湿透了。
量詞“身”は通常、一揃いの衣服を数えるのに用いる。ここで量詞を受ける対象の名詞は“単帽”と“褂子”だが、その両方を“身”で受けることはできない。“身”のところは、“単帽”を受ける量詞として、“身”の代わりに、帽子を数える量詞、“頂”を置く。“褂子”については、量詞“件”を用い、また“単帽”の量詞“頂”が指示代詞“那”を伴っているので、同様に“和”のうしろに、“那件”を置くことで、全体のバランスをとるべきである。
(5)副詞の誤用
① 他犯這麼厳重的錯誤絶不是偶尓的。
“偶尓”は副詞であるが、ここは“是~的”構文で、名詞“錯誤”を受ける形容詞を持ってこなければならない。したがって、“偶尓”を形容詞“偶然”に変えなければならない。
② 他大哥還不是跟他一様,更怕老婆。
“更”は程度副詞で、程度が一層はなはだしいことだが、前の句で“還不是跟他一様”と言っているので、彼とは異なるはずなのに、“更”というのは論理的におかしい。したがって、“更”を削除しなければならない。
③ 没有人会否認,這些成績的取得不是大家努力的結果。
“没有”、“否認”で二重否定を構成し、“大家承認”の意味になっているにもかかわらず、後段でまた“不”で否定するというケースは通常は無いと思われる。普通に考えると、ここでは“不”を削除すべきだと思う。
(6)代詞の誤用
① 張廠長和劉経理正在研究廠里的新産品問題,他告訴他説:“資金問題一解决,馬上可以投産了。”
この文章では、誰が誰に対し言っているのか分からない。一般に会社内の話題は役職の名詞で人名を代用することができるので、ここでは何れか一方を、“廠長”、“経理”の役職名に改めるべきである。
② 従延安路到勝利橋只有六七里,勝利橋到紅旗渠只有七八里,這段距離并不遠。
この例では、“延安路到勝利橋”、“勝利橋到紅旗渠”のふたつの区間の距離を話題にしており、“這段”がその何れを指すのか分からない。例えば“前段”、“后段”のように、区間を明確にする語を加えなければならない。
③ 三王子忙解釈説,那只白兔是他射中的,身上帯着我的箭。
“説”のうしろの句は“三王子”の説明している内容の間接引用句であり、したがって“他”は“三王子”のことだが、そのうしろの“我”も格を同じにし、“他”に変更しなければならない。
④ 我的弟弟来信説:“他在工廠里很好,工人師傅很関心他。”
引用句の中のふたつの“他”は何れも手紙を書いている本人のことであるので、ふたつとも“我”に変えなければならない。或いは、間接引用句に変更し、引用句“”を削除し、コロン‘:’をコンマ‘,’に変更すればよい。
⑤ 在首都机場,他告訴我們,很小的時候,他就酷愛滑冰,后来進了哈尓濱市少年隊,這里有他的啓蒙老師。
話の場所は“首都机場”であり、彼は遠く“哈尓濱市”の少年隊に入ったのだから、“這里”はおかしく、“那里”に変えなければならない。
⑥ 劉主任已経住了両個月医院,不知他現在病情什麼様了?
この文で聞いているのは、病気の状況がどうか?ということであるが、疑問代詞“什麼”は状況ではなく、具体的事物を尋ねるのに用いる。よってここでは状況を尋ねる疑問代詞“怎麼様”を使わねばならない。
2、虚詞の誤用
虚詞とは機能語で、文法上の働きをするだけで、単独では文成分にならない語。副詞、介詞、接続詞、助詞、感嘆詞、擬声詞がこれに当たる。
(1)介詞の誤用
① 我們做任何事情,都要対于人民負責。
“対于”は対象となる事物を表し、一般に介詞句を構成し、主に主語の後に置かれたり、主題として文頭に出したりする。ところが、この例では動詞“負責”の対象物を表す。したがって“対”、或いは“向”に改めなければならない。
② 関于改善学生的生活,我們学校採取了一些措施。
“関于”関係のある事物を表す時に用いる。しかしこの例では、「~の面では」という意味であるので、“在~方面”を用い、“在改善学生的生活方面”としなければならない。
③ 在不影響収入下,尽可能減少風険過大的投資項目。
“在~下”の間には連体詞を入れなければならず、動詞句を入れることはできない。ここは、“在不影響収入的情況下”と改めなければならない。
④ 為把我国花様滑冰事業早日上世界水平作貢献。
“把”の後の名詞句は後ろの動詞の動作の対象である。しかし、この例は「~を~させる」という使役の意味合いであるので、“把”を“使”に改め、兼語式の文章としなければならない。
(2)連詞の誤用
① 姐姐在超市買了牙膏、香、紙杯、衣架和一大框日用品。
連詞“和”が連接する成分は、包含したり包含されたりすることはできない。この“和”は“等”に改めなければならない。
② 最近,160多名在職人員通過自修取得了博士和碩士学位。
“博士”と“碩士”の学位は同時に取得することはできないので、ここは“和”ではなく“或”を用いなければならない。
③ 明天的演習要看天気変化来決定上午或下午挙行。
例③、④に関し、選択の意味を表す“或”、“或者”と、“還是”の区分について、“無論”、“不管”等の後ろに来る場合は、何れも使うことができる。しかしそれ以外の場合、“或”、“或者”は選択関係を表す陳述の中で用いられ、疑問句の中で用いることはできず、その場合は“還是”を用いなければならない。 例③では、動詞“決定”の後ろの賓語の部分は疑問の意味を持つので、“或”は“還是”に改めなければならない。
④ 李冰打算報考文科或者理科?
これは疑問を表す文章であるので、“或者”を“還是”に改めなければならない。
(3)助詞の誤用
① 我認為一語人生活的太順利了倒是一種不幸。
“生活”、“太順利”の間に動詞・補語の関係があり、構造助詞は“的”ではなく、“得”に改めなければならない。
② 同学們打算仔細的欣賞田先生的書法作品。
形容詞+“的”で後ろの名詞の修飾語を構成する。ところが、例では“的”の後ろが動詞である。この場合は、“的”を“地”に改めることで、後ろの動詞“欣賞”の修飾語を作ることができる。但し、発音は何れも“de”で同じである。
③ 吃得是草,擠出来的是奶。
吃+“的”で前の句の主語を構成する。後ろの句も同様に、動詞+“的”で主語を構成している。よって、ここは“得”を“的”に改めなければならない。ちなみに、“得”は後ろに形容詞や動詞を伴い、結果や程度を表す補語を導く働きがある。
④ 対広告法的実施,一些媒体採取着不以為然的態度。
“採取”は継続しない行為を表すが、継続する行為を表す“着”を付けるのは論理的に矛盾する。したがって“着”は削除しなければならない。
⑤ 連用的詞語在内上不能重復,否則,将会犯了画蛇添足的毛病。
“了”は実現した行為を表すが、“将会”は結果の予測を表すので、互いに矛盾してしまう。この例では、その前に“否則”と仮定を表しているので、“了”を削除しなければならない。
【原文】中華書局《現代漢語》蘭賓漢、那向東主編2006年但し、日本語への翻訳と、内容の加筆、修正を加えてある。
今回はこれまでとします。次回は、ことばの組合せの誤用のパターンについて、見ていきたいと思います。
文法上の間違いには、いくつかのパターンがあり、それらを把握する必要がある。ここでは、間違いのパターンを項目ごとにみていきたい。
尚、内容は、中華書局《現代漢語》蘭賓漢、那向東主編2006年から取り、理解しやすいよう、言葉を追加した。
(一)“詞”の誤用
詞は、独立して運用でき、意味を有する最小の言語単位である。実詞と虚詞に分かれる。
1、実詞の誤用
実詞:(⇔虚詞)単独で文の主要成分になることができる、比較的具体的な概念を表す語で、名詞、動詞、形容詞、数詞、量詞、代詞がこれに当たる。
(1)名詞の誤用
① 在所有制問題上仍然存在着的种种疑惑,束縛着人們的思想,障碍着改革的深入進行。
例①の“障碍”は名詞であり、賓語を伴うことができない。ここでは誤って動詞として使っている。“阻碍”に改めなければならない。
② 希望你在事業上有所造詣。
例②の“有所××”の書式に入るのは動詞である。ところが、文中で名詞“造詣”zao4yi4を誤って動詞として使っている。“発展、進歩”などに改めるべきである。
③ 在這場足球比賽中,我隊很優勢,最后軽易地戦勝了対方。
例③の“優勢”は名詞であり、程度を表す副詞の“很”の修飾を受けることはできない。名詞を形容詞として誤用している訳である。ここでは、“優勢”の前に“有”を加えるべきである。
(2)動詞の誤用
① 暁声経常給他的弟弟妹妹們、表哥表弟們寄生活補貼,這種出手都不是小数字。
動詞“出手”を“這種”の修飾を受ける名詞として使っているが、この文での意味は“拿出来”、「金を出す」という意味で、この場合は名詞として使うことができず、したがって“這種”の修飾が受けられない。そこで、“出手”の後ろに“的”をつけ、名詞句とすればよい。また、この文で、“数字”は数や数量のことであるが、意味はお金の金額なので、“数目”に変えるべきである。
② 他編造了種種捏造,妄図破壊我們之間的友誼,但他永遠是徒労的。
動詞“捏造”を“編造”の賓語、また“種種”の修飾を受ける名詞として使っている。“捏造”は一般に名詞として使うことができず(辞書には名詞としての用例も出ているが、名詞句的な限られた場合のみ)、ここでは適当でない。“謡言”、“謊言”などに置き換えなければならない。
③ 連続几年糧食收成較好,農副産品的供応也十分保証。
動詞“保証”を程度副詞“十分”を受ける形容詞として使っているが、“保証”を形容詞として使うことはできず、よって“十分”を修飾することはできない。“充足”(十分である。ふんだんにある)に置き換えるべきである。
④ 他説話写文章総是重重複複的,没個痛快勁儿。
動詞“重複”を畳語法の形容詞として使っているが、“重複”を形容詞として使うことはできない。“羅唆”(ことばがくだくだしい。くどい)を畳語にして、“羅羅唆唆”とするべきである。
(3)形容詞の誤用
① 時至今日,我們是不是真的越来越聡明?我們不断寛闊眼界,却不断狭小心胸。
“寛闊”、“狭小”は何れも形容詞で、賓語を伴うことはできない。また、程度副詞“不断”の修飾を受けることができない。そこで語順を入れ替え、“眼界”、“心胸”を主語とする主述句とし、“我們的眼界越来越開闊,但我們的心胸却越来越狭小”とすればよい。
② 但是,遺憾得很,我們至今還極其罕見這様的著作問世。
“罕見”は形容詞で、賓語を伴うことができない。そこで、“著作”を主語とする主述句に改め、“這様的著作還極其罕見”とすればよい。
③ 他們最終把意見一致了。
“一致”は形容詞であるが、述語の中心は他動詞(“及物動詞”)でなければならず、“一致”ではなく動詞“統一”を用いるか、“他們最終達成了一致的意見”に全体を改めるべきである。
(4)数量詞の誤用
① 従前去城坐汽車車需要6個鐘頭,修了高速公路以后,只要3個鐘頭就到了,時間縮短了1倍。
時間の減少は分数で表示され、倍数では表示されない。短縮された時間の3個鐘頭は、もともとの6個鐘頭と比べ、元の半分であるので、“1倍”は“一半”か“二分之一”に改めなければならない。
② 他原来毎月只開200多塊銭,現在1個月能掙400多塊銭,收入翻了両番。
200から400への変化は“多了1倍”、或いは“是原来的両倍”と言うことができる。“翻了両番”は200から400、更に400から800になることを指す。もし“番”を用いて表現するなら、“翻了一番”と言うことができる。
③ 王廠長的模範作用激発了広大工人的労働熱情,産量一下子提高到百分之二十。
“提高到百分之二十”は正味の増加数量を指し、底数を含まない。したがって“提高到”は“提高了”、或いは“提高”に改めなければならない。
④ 我們県向銀行貸款,建起了一座蓄水近15万多立方米的水庫。
“近”、“多”をいっしょに使うことは論理的におかしい。ダムの貯水量により、そのどちらか一方を選択しなければならない。
⑤ 他倆個人是一対合作的好伙伴!
“倆”は“両個”の意味である。したがって、“個人”を削除するか、或いは“倆”を“両”に変えなければならない。
⑥ 他那身汗漬的労働布単帽和半新的家做黄布褂子都早已湿透了。
量詞“身”は通常、一揃いの衣服を数えるのに用いる。ここで量詞を受ける対象の名詞は“単帽”と“褂子”だが、その両方を“身”で受けることはできない。“身”のところは、“単帽”を受ける量詞として、“身”の代わりに、帽子を数える量詞、“頂”を置く。“褂子”については、量詞“件”を用い、また“単帽”の量詞“頂”が指示代詞“那”を伴っているので、同様に“和”のうしろに、“那件”を置くことで、全体のバランスをとるべきである。
(5)副詞の誤用
① 他犯這麼厳重的錯誤絶不是偶尓的。
“偶尓”は副詞であるが、ここは“是~的”構文で、名詞“錯誤”を受ける形容詞を持ってこなければならない。したがって、“偶尓”を形容詞“偶然”に変えなければならない。
② 他大哥還不是跟他一様,更怕老婆。
“更”は程度副詞で、程度が一層はなはだしいことだが、前の句で“還不是跟他一様”と言っているので、彼とは異なるはずなのに、“更”というのは論理的におかしい。したがって、“更”を削除しなければならない。
③ 没有人会否認,這些成績的取得不是大家努力的結果。
“没有”、“否認”で二重否定を構成し、“大家承認”の意味になっているにもかかわらず、後段でまた“不”で否定するというケースは通常は無いと思われる。普通に考えると、ここでは“不”を削除すべきだと思う。
(6)代詞の誤用
① 張廠長和劉経理正在研究廠里的新産品問題,他告訴他説:“資金問題一解决,馬上可以投産了。”
この文章では、誰が誰に対し言っているのか分からない。一般に会社内の話題は役職の名詞で人名を代用することができるので、ここでは何れか一方を、“廠長”、“経理”の役職名に改めるべきである。
② 従延安路到勝利橋只有六七里,勝利橋到紅旗渠只有七八里,這段距離并不遠。
この例では、“延安路到勝利橋”、“勝利橋到紅旗渠”のふたつの区間の距離を話題にしており、“這段”がその何れを指すのか分からない。例えば“前段”、“后段”のように、区間を明確にする語を加えなければならない。
③ 三王子忙解釈説,那只白兔是他射中的,身上帯着我的箭。
“説”のうしろの句は“三王子”の説明している内容の間接引用句であり、したがって“他”は“三王子”のことだが、そのうしろの“我”も格を同じにし、“他”に変更しなければならない。
④ 我的弟弟来信説:“他在工廠里很好,工人師傅很関心他。”
引用句の中のふたつの“他”は何れも手紙を書いている本人のことであるので、ふたつとも“我”に変えなければならない。或いは、間接引用句に変更し、引用句“”を削除し、コロン‘:’をコンマ‘,’に変更すればよい。
⑤ 在首都机場,他告訴我們,很小的時候,他就酷愛滑冰,后来進了哈尓濱市少年隊,這里有他的啓蒙老師。
話の場所は“首都机場”であり、彼は遠く“哈尓濱市”の少年隊に入ったのだから、“這里”はおかしく、“那里”に変えなければならない。
⑥ 劉主任已経住了両個月医院,不知他現在病情什麼様了?
この文で聞いているのは、病気の状況がどうか?ということであるが、疑問代詞“什麼”は状況ではなく、具体的事物を尋ねるのに用いる。よってここでは状況を尋ねる疑問代詞“怎麼様”を使わねばならない。
2、虚詞の誤用
虚詞とは機能語で、文法上の働きをするだけで、単独では文成分にならない語。副詞、介詞、接続詞、助詞、感嘆詞、擬声詞がこれに当たる。
(1)介詞の誤用
① 我們做任何事情,都要対于人民負責。
“対于”は対象となる事物を表し、一般に介詞句を構成し、主に主語の後に置かれたり、主題として文頭に出したりする。ところが、この例では動詞“負責”の対象物を表す。したがって“対”、或いは“向”に改めなければならない。
② 関于改善学生的生活,我們学校採取了一些措施。
“関于”関係のある事物を表す時に用いる。しかしこの例では、「~の面では」という意味であるので、“在~方面”を用い、“在改善学生的生活方面”としなければならない。
③ 在不影響収入下,尽可能減少風険過大的投資項目。
“在~下”の間には連体詞を入れなければならず、動詞句を入れることはできない。ここは、“在不影響収入的情況下”と改めなければならない。
④ 為把我国花様滑冰事業早日上世界水平作貢献。
“把”の後の名詞句は後ろの動詞の動作の対象である。しかし、この例は「~を~させる」という使役の意味合いであるので、“把”を“使”に改め、兼語式の文章としなければならない。
(2)連詞の誤用
① 姐姐在超市買了牙膏、香、紙杯、衣架和一大框日用品。
連詞“和”が連接する成分は、包含したり包含されたりすることはできない。この“和”は“等”に改めなければならない。
② 最近,160多名在職人員通過自修取得了博士和碩士学位。
“博士”と“碩士”の学位は同時に取得することはできないので、ここは“和”ではなく“或”を用いなければならない。
③ 明天的演習要看天気変化来決定上午或下午挙行。
例③、④に関し、選択の意味を表す“或”、“或者”と、“還是”の区分について、“無論”、“不管”等の後ろに来る場合は、何れも使うことができる。しかしそれ以外の場合、“或”、“或者”は選択関係を表す陳述の中で用いられ、疑問句の中で用いることはできず、その場合は“還是”を用いなければならない。 例③では、動詞“決定”の後ろの賓語の部分は疑問の意味を持つので、“或”は“還是”に改めなければならない。
④ 李冰打算報考文科或者理科?
これは疑問を表す文章であるので、“或者”を“還是”に改めなければならない。
(3)助詞の誤用
① 我認為一語人生活的太順利了倒是一種不幸。
“生活”、“太順利”の間に動詞・補語の関係があり、構造助詞は“的”ではなく、“得”に改めなければならない。
② 同学們打算仔細的欣賞田先生的書法作品。
形容詞+“的”で後ろの名詞の修飾語を構成する。ところが、例では“的”の後ろが動詞である。この場合は、“的”を“地”に改めることで、後ろの動詞“欣賞”の修飾語を作ることができる。但し、発音は何れも“de”で同じである。
③ 吃得是草,擠出来的是奶。
吃+“的”で前の句の主語を構成する。後ろの句も同様に、動詞+“的”で主語を構成している。よって、ここは“得”を“的”に改めなければならない。ちなみに、“得”は後ろに形容詞や動詞を伴い、結果や程度を表す補語を導く働きがある。
④ 対広告法的実施,一些媒体採取着不以為然的態度。
“採取”は継続しない行為を表すが、継続する行為を表す“着”を付けるのは論理的に矛盾する。したがって“着”は削除しなければならない。
⑤ 連用的詞語在内上不能重復,否則,将会犯了画蛇添足的毛病。
“了”は実現した行為を表すが、“将会”は結果の予測を表すので、互いに矛盾してしまう。この例では、その前に“否則”と仮定を表しているので、“了”を削除しなければならない。
【原文】中華書局《現代漢語》蘭賓漢、那向東主編2006年但し、日本語への翻訳と、内容の加筆、修正を加えてある。
今回はこれまでとします。次回は、ことばの組合せの誤用のパターンについて、見ていきたいと思います。
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