佐藤功の釣ったろ釣られたろ日誌

釣り・釣りの思い出・釣り界のこと・ボヤキ.etc

だぼ鯊の戯言(たわごと)

2020-05-13 19:00:00 | 釣り

逃げろやアカメ

「釣りガール」がメバリングで三十センチ超えを両手に花、「学生アングラー」がテクトロで良型シーバスを爆釣、なんて光景も最近は珍しくありません。このように近年、ショアでのルアーやエギング、オフショアのバーチカルジギングなどでは、古い時代の釣り観念を打ち砕くハプニングが多々報告されています。

 

逃げろやアカメ

   ずっと遠くへ!

 

その習性上、動く標的を黙って見過ごせないフィッシュイーター(魚食魚)たちが易々とルアーアングラーの術中に落ちる…ちょっと切ない気になるのは私だけでしょうか。

切ない、といえば、ヘビー級のルアー対象魚として知られるアカメ。あるところで地元の古老がこんな話をしてくれました。

《その昔、河口域で干潮時に海へ帰り損ねたでっかいアカメがタイドプールで甲羅を干しているのがしばしば目撃されました。村人は声をかけ合って農機具の鍬(くわ)や鋤(すき)を担いで掘りに行ったものです》と。

たぶん浅瀬で居眠りをしていて不覚を取ったのでしょう、そんな漫画チックなキャラクターの持ち主。「おやおや、しまったな、お前!」と味方したくなります。

実は四十三年前、七センチほどの四万十川産のアカメと出会いました。自宅の水槽で五年飼育、五三センチにもなり手に余って寄贈した東京の海水水族館で二十年、再会した時は優にメーターオーバーに成長していました。このわが子のようなアカメがご縁で、漫画家の矢口高雄さんと拙宅で半日アカメ談義の時を。

それからしばらくして週刊少年マガジン「釣りキチ三平」の「四万十川のアカメ」が上梓され、空前のアカメ釣り時代の幕が切って落とされたのです。それからのアカメ狂騒曲の経緯はことさら僕が申す事もないでしょう。

ついに二年前、正確には二〇一二年晩秋NHKでは「ダーウィンが来た・生きもの新伝説=四万十川に潜入!巨大魚アカメ」の衝撃的ドキュメンタリーを全国に放映しました。僕は以前、アカメが単なる興味本位の珍奇な大物釣りの対象魚になり果ててしまったときに味わった喪失感に似た脱力感に襲われました。

なにが衝撃的だったか…現場で釣り上げた八十センチほどのアカメの体に動きを記録するセンサーや超小型のビデオカメラを背負わせて放流。アカメ自身に「アカメラマン」になってもらって幻の魚の、謎のベールを剥がそうという試みだったからです。    

移動中に川岸のヨシ原を長時間休憩場所として利用する、獲物を追うアカメのダイナミックなハンティングの実写=急上昇、攻撃、急反転=などなどアングラーの目には攻略のポイントとなりそうな「内部告発」のヒントも数々明かされていました。

でも誤解しないでください。どこかの掲示板で「メカアカメって虐待?」なんて書き込みがありましたが、決して前代未聞の調査を行った東京大学大気海洋研究所の先生方に恨み言を申し上げるつもりはございません。科学は真実に迫るものですから…。

それでは、いったいお前さんは何が言いたいのか、と、読者諸賢に訝られそうですね。

ハイ、釣りキチ三平が最終章でロープをほどいて「潜水艦(アカメ)」を四万十川河口の沖合へ見送ったように、「逃げろやアカメ、ずっと遠くへ!」と、みんなに声をかけてあげたいのです。(イラストも・からくさ文庫主宰)

 

 

コメント (3)
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