現行憲法で何でもありの安倍首相は、皮肉にも「日本国憲法の改正」を不要にしつつある

2007年01月10日 13時33分44秒 | 憲法問題
◆防衛庁が1月9日、防衛省に昇格した。防衛庁・自衛隊が昭和29年に創設されて53年を経て、自民党や防衛関係者は、やっと宿願を果たした気持ちであろう。強いて不満を言うなら、「防衛省」とは、生温い。「国防省」と命名すべきであった。今後の課題は、「大日本帝国陸海軍の再建」であり、併せて、「空軍と海兵隊」の建軍である。さらに欲を張って、「徴兵制度復活」(男女平等も適用)と「核武装」ということになる。
安倍首相は、陸海空三自衛隊の最高指揮官として防衛省で開かれた記念式典に出席して訓示した。このなかで、省昇格を「戦後レジーム(体制)から脱却し新たな国づくりを行うための第一歩」と位置付け、今後、「集団的自衛権行使の研究を進める」との考えを改めて強調したという。
◆これで「アーミテージ・レポート」で日本に示された事実上の「対日要求」のほぼ80%が達成されたとも言える。残るのは「集団的自衛権行使の容認」と「第9条を中心とする憲法改正」である。さらにあえて言えば、「原子力空母と潜水艦の建造」と究極の「核兵器」を保有することである。ここまで行ってはじめて、米英仏中ロ、インド、パキスタン、さらに北朝鮮と肩を並べる「核大国」に昇格できる。
「アーミテージ・レポート」は、アメリカのブッシュ政権で国務副長官を務めたアーミテージ氏らが政権誕生直前の2000年10月にまとめて、山崎拓元防衛庁長官ら自民党国防族に突きつけたものである。アーミテージ・レポートは、「日米のパートナーシップ」を強調し、このなかには、「有事法制の整備」「防衛庁の省への昇格」、「集団的自衛権行使の容認」などに加えて、「日本人が判断すること」と内政不干渉の姿勢を保ちつつ、暗に「憲法改正」を願望する意向も示されていた。
◆政府自民党は、公明党を抱き込み、「アーミテージ・レポート」に明記された「要求」を忠実に実現してきたのであった。アーミテージ副長官から「ショウ・ザ・フラッグ」と言われれば、軍艦旗を旗めかす海上自衛隊の補給艦をインド洋にも派遣した。
政府与党は、防衛省昇格に合わせて「自衛隊の海外派遣」をこれまでの「副業」から「本務」に格上げしている。安倍首相は、「自衛隊の海外派遣」をさらに「恒久化」する法律をつくろうとしている。
◆しかし、ここまでくると、皮肉なことに、「憲法改正はもう不要なのではないか」という疑問も生じてくる。改正するまでもなく、「日米のパートナーシップ」を果たせるなら、もう十分である。むしろ、アメリカが恐れるのではないか。「憲法という檻」に閉じ込めた獰猛な「人食い虎」を野に放つようなものだからである。
それ以上に危険なのは、安倍首相が提唱している「美しい国」の目指すところが、ひょっとしたら「軍事超大国」ではないかという疑念があるからである。日本政府の法制局はすでに破綻し、遺物化しており、最後の砦である最高裁判所は、「憲法裁判所」としての使命を放棄し無責任なままである。ブッシュ政権がイラク攻撃の「有志連合」を組んだ際、これに参加を決めたコスタリカ政府に対して、たった一人で立ち上がったコスタリカの青年ロベルト・サモラ氏が、「憲法違反だ」として裁判所に提訴したのに対し、最高裁判所が、訴えを認めて「違憲判決」を下した。このため、コスタリカ政府は、イラク参戦を思い止まったという。コスタリカでは、憲法が生きており、最高裁判所もしっかりと機能しているということである。それに引き換え、日本は、どうだろう。憲法9条は死文化しており、最高裁判所は、「狸寝入り」を決め込み、ストライキ中である。これでは、最高裁判所こそ、もう要らない。
さてさて、いま使用しているパソコンは、キーボードを叩いても「防衛省」とストレートに文字は出てこない。IT社会の必需品であり、最先端技術の一つとして現在も、日進月歩で進化しているパソコンでさえ、「戦後レジーム(体制)からの脱却」を迫られている。
【参考】
2006年9月6日、悠仁親王誕生。皇紀2666年9月6日。9月20日、安倍晋三自民党総裁に当選。党内支持率66%、国民支持率66%。2006年9月26日、第90代総理大臣として安倍首相誕生。9月29日、初の所信表明演説。「憲法第9条改正」を念頭に「憲法改正」を明言。改正条項は、「第96条」。防衛庁が「省」に変わったのが何と2007年1月9日。安倍首相は、「6」と「9」に取り付かれ続けている。その意味は、いまのところ、不明。「ご96さん」です。
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コメント (2)
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