現代版・池田勇人、下村治よ、出てこい!

2007年04月12日 15時05分02秒 | 政治
 NHKが4月11日放映した「その時歴史が動いた」(第284回)は、実に感動的だった。「所得倍増の夢を追え~高度経済成長の軌跡」と題して、池田勇人首相が打ち出した「所得倍増計画」の生みの親である大蔵官僚出身のエコノミスト・下村治を取り上げている。周囲から顧みられることのなかった「所得倍増計画」に目をつけたのが、岸信介首相の後釜を狙っていた大蔵官僚出身の政治家・池田勇人ただ一人だった。「士は己を知る者のために死す」というけれど、大蔵省の後輩・下村治というエコノミストとその研究成果に目をつけた池田勇人は偉い。人と人との出会いの素晴らしさを感じざるを得ない。最近の高級官僚や政治家と違い、当時の高級官僚や政治家のなかには、真に国民生活を憂え、学問的裏づけを持って世の中をよくしようと考える志士のような人物がいたのである。池田勇人は、広島県竹原市の造り酒屋の出、下村治は、佐賀県佐賀市の出身。「化け猫騒動」で有名な鍋島藩藩士・山本常朝の「葉隠」の一節「武士道とは死ぬことと見つけたり」が思い出される。
 下村治が目指したのは、敗戦のより荒廃した国土のなかに巣食う「格差是正」であった。驚くべきは、池田内閣が着手して始まった高度経済成長を示すGNPの足取りが、下村治の計画した「右上がりグラフ」の上を辿っていたことである。予測通りにこんなにうまく行っていたのかと、つくづく感心させられた。
 時代背景も経済環境も違うとはいえ、現代日本が抱えて苦吟しているのも、「格差是正」である。地域格差、企業間格差、所得格差に対して、政治家も財務官僚も解決策を見出していない。この意味で「現代の池田勇人、下村治よ、出てこい」と叫び、願わざるを得ない。
 全く偶然ながら、4月12日午前、来日中の中国・温家宝首相が、国会に招かれて演説した。中国は東京オリンピック(昭和39年10月)に遅れること44年を数える2008年に北京オリンピックを開催する。いままさに高度経済成長の真っ最中である。東京オリンピック後の昭和40年に証券大不況に見舞われて、危うく失速しかかる。下村治は、「赤字国債発行」を提案し、佐藤政権がこれを採り入れて、日本経済は危機を免れる。
 中国政府も、おそらくは同様の危機に直面するはずである。そればかりか、高度経済成長の副作用とも言える「公害問題」や「交通事故大量発生」に悩まされることになる。すでに中国政府は、環境汚染対策に苦しんでいる。中国は、いつまでも「靖国神社」や「教科書」「歴史認識」ばかりを取り上げて、「反日運動」にうつつを抜かしている暇はない。
 下村治は「日本は江戸時代のような姿になるのがいい。文化とか芸術とか教養に力を入れる時代になるべきだ」という言葉を残し、低成長時代の日本経済の進路を示唆ししたという。心に響く名言である。
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