魂という物質は、確かに存在するのだよ。
質量約21グラム、色は乳白色、基本的には常温で液状。
人間の体内隅々に、少しずつではあるが存在しているのだ。
昔から、噂や都市伝説、あるいは先人たちの知恵として語られてきた。
君たちも恐らく聞いたことがあるだろう。
しかし、どこか話半分――嘘や誤解、迷信だと思っていたのではないかね?
かく言う私もそうだった。
そもそも、私の出発点は決して「魂の存在を証明すること」ではなかったのだ。
だから、いち学者として、というよりいち常識人として、当たり前に信じていなかった。
ところがどうだ。
人体を調べていけば、魂という物質の存在なくしては証明できないことがあるではないか。
もちろん悩んだね。それはもう、常に頭の片隅にこびりついていた。
そんな状態だったからだろうね。
偶然目にしたそれが魂であると、私は即座に仮定することができた。
他のすべての学者がそれを見逃していたのは、見えなかったからじゃない。
魂の存在を100%否定していたからだ。
私は、違った。否定してはいたが、せいぜい99%といったところだ。
残りの1%が、発見に繋がったのだろうな。
おっと。閑話休題、話を戻そうか。
ああ、そうだそうだ。魂とは、という話だったね。
人は誰しも魂を持っている。
それは死によって空気中に拡散されるわけだ。
そして、新しい命に宿り、循環する。
この循環の途中で、稀に視認されることがあるね。
いわゆる人魂、幽霊といったものがそれだ。
そう、世で言われている超常現象。
その大半は観測者の誤認だが、一部ホンモノが混ざっているのだよ。
それが、魂。
いいかい、魂とは多様だ。
環境や自身の状態によって、様々に変化する。
そこに一般の物理法則は通用しない。
ああ、唯一適用されるものとして質量保存の法則があったね。
先も述べたが、人ひとりの魂は約21グラム。
これは不変だ。
つまり。
21グラムの魂が欲しいなら、人をひとり殺せばいいのさ。
簡単だろう?
実に単純明快な話じゃないか。
現在、空気中から人工的に魂を採取する方法は確立されていない。
それはどこにあるとも知れない魂を捕獲するのが困難だからだ。
しかし、密閉空間で人間を殺せば、その空間内には確実に21グラムの魂が存在する。
ならば、採取は容易い。
いや、容易くはないな。しかし不可能ではない。時間さえかければ、いずれ採取できる。
さあ、そうやって手に入れた、ありふれた――しかし貴重な魂。
それをどう利用しようか?
それはもう、いかようにでも。
一番分かりやすいのは、兵器だな。
毒に変化させてばら撒けば21グラムで町一つ滅ぼせよう。
硬質化させればわずか21グラムのナイフや刀剣になる。
高速で射出すれば弾丸が残らない銃になるかも知れんな。
まあ、その辺の応用技術は今後の課題だし、あるいは利用者の自由だ。
私の目的は、あくまでも採取と観察だからね。
と、これが魂という物質の概要だ。
分かったかい?
こんな講義が聞けるなんて、君は実に運がいい。
私も、他人に話す機会がなくてね。
君という講習生がいてくれて、実は助かったのだよ。
質問はないかな?
うん、そいつは重畳。
理解の早い生徒で非常に嬉しいよ。
それでは、私の講義はこれで終わりとする。
無論――
君の魂は、今後の研究に大いに活用させてもらうよ。
協力感謝する。
さようなら。
質量約21グラム、色は乳白色、基本的には常温で液状。
人間の体内隅々に、少しずつではあるが存在しているのだ。
昔から、噂や都市伝説、あるいは先人たちの知恵として語られてきた。
君たちも恐らく聞いたことがあるだろう。
しかし、どこか話半分――嘘や誤解、迷信だと思っていたのではないかね?
かく言う私もそうだった。
そもそも、私の出発点は決して「魂の存在を証明すること」ではなかったのだ。
だから、いち学者として、というよりいち常識人として、当たり前に信じていなかった。
ところがどうだ。
人体を調べていけば、魂という物質の存在なくしては証明できないことがあるではないか。
もちろん悩んだね。それはもう、常に頭の片隅にこびりついていた。
そんな状態だったからだろうね。
偶然目にしたそれが魂であると、私は即座に仮定することができた。
他のすべての学者がそれを見逃していたのは、見えなかったからじゃない。
魂の存在を100%否定していたからだ。
私は、違った。否定してはいたが、せいぜい99%といったところだ。
残りの1%が、発見に繋がったのだろうな。
おっと。閑話休題、話を戻そうか。
ああ、そうだそうだ。魂とは、という話だったね。
人は誰しも魂を持っている。
それは死によって空気中に拡散されるわけだ。
そして、新しい命に宿り、循環する。
この循環の途中で、稀に視認されることがあるね。
いわゆる人魂、幽霊といったものがそれだ。
そう、世で言われている超常現象。
その大半は観測者の誤認だが、一部ホンモノが混ざっているのだよ。
それが、魂。
いいかい、魂とは多様だ。
環境や自身の状態によって、様々に変化する。
そこに一般の物理法則は通用しない。
ああ、唯一適用されるものとして質量保存の法則があったね。
先も述べたが、人ひとりの魂は約21グラム。
これは不変だ。
つまり。
21グラムの魂が欲しいなら、人をひとり殺せばいいのさ。
簡単だろう?
実に単純明快な話じゃないか。
現在、空気中から人工的に魂を採取する方法は確立されていない。
それはどこにあるとも知れない魂を捕獲するのが困難だからだ。
しかし、密閉空間で人間を殺せば、その空間内には確実に21グラムの魂が存在する。
ならば、採取は容易い。
いや、容易くはないな。しかし不可能ではない。時間さえかければ、いずれ採取できる。
さあ、そうやって手に入れた、ありふれた――しかし貴重な魂。
それをどう利用しようか?
それはもう、いかようにでも。
一番分かりやすいのは、兵器だな。
毒に変化させてばら撒けば21グラムで町一つ滅ぼせよう。
硬質化させればわずか21グラムのナイフや刀剣になる。
高速で射出すれば弾丸が残らない銃になるかも知れんな。
まあ、その辺の応用技術は今後の課題だし、あるいは利用者の自由だ。
私の目的は、あくまでも採取と観察だからね。
と、これが魂という物質の概要だ。
分かったかい?
こんな講義が聞けるなんて、君は実に運がいい。
私も、他人に話す機会がなくてね。
君という講習生がいてくれて、実は助かったのだよ。
質問はないかな?
うん、そいつは重畳。
理解の早い生徒で非常に嬉しいよ。
それでは、私の講義はこれで終わりとする。
無論――
君の魂は、今後の研究に大いに活用させてもらうよ。
協力感謝する。
さようなら。