責任を取る、というのはどういうことなんだろう。
そんなことを考える。
僕には、考えることしかできないから。
責任を取る。
責任を持つ。
言葉の印象から最初に浮かぶのは、結婚、だろうか。
責任を取って結婚するとか、結婚は男の責任だとか。
よくそんな言い回しを聞く。
ここではつまり、相手の期待に沿った行動を取るということか。
例えば10年付き合った彼女がいて、今更結婚しないと言い出せばどうだ。
彼女からしたら、私の10年を返して、と言いたくもなるだろう。
女性は特に婚期というものに敏感だ。
一般に適齢期と言われる20代を共にした彼氏が結婚しないと言えば。
それはもう、一大事と言わざるを得ない。かも、しれない。
だからそんな裏切りはしない。
そういう意味で、責任を取る。
損害の補填、という意味合いもあるだろう。
例えば、お店の商品を壊してしまった。
よって、それを購入することでお店の損害を補填する。
保障する。賠償する。弁償する。
そういう意味で、責任を取る。
仕事の責任なんてものも大雑把に言えばこれに含まれるだろう。
プラスのことを、プラスであるように約束する。
マイナスのことを、ゼロないしはプラスになるよう約束する。
そういったことが、責任を取るということなんだろうと思う。
さて。
「じゃあこの場合、僕はどうしたら責任を取ったことになるんだろうね?」
答えない。
目の前の彼は、微動だにしない。
腹部には深々と鋭いナイフが刺さったままで。
血溜まりは乾く気配もない。
喋らなくなった。
動かなくなった。
――死んでしまった。
その原因は、多分僕にあるのだろう。
だったら、僕はどうしたら責任を取ったと言えるんだろうか。
もう少し遡ろう。
では、何故僕は彼を殺したのか?
恨みがあったからだ。
僕は酷く酷く傷ついて、生きているのも馬鹿らしくなって、死のうとして。
待てよ、と思って。
復讐をしたのだ。
つまり――僕の傷の責任を、彼に取らせたのだ。
僕は傷ついた。
悲しみ、嘆き、怒った。
その傷は決して癒えることはない。
このマイナスはどう補ってもゼロには戻らない。
ならばせめてゼロに近いマイナスにしよう。
そう思った結果が、この復讐劇なのだ。
彼は、彼の行いの償いをした――否、僕がさせたのだ。
「ああ、これで差し引きゼロってことにすればいいのか」
彼が僕を傷つけた。
僕が彼を殺した。
僕の傷は、それでも決して癒えないけれども。
それは――いわゆるアレだ。
「釣りはいらねえ、取っときな」
これにて決着。
めでたし、めでたし。
そんなことを考える。
僕には、考えることしかできないから。
責任を取る。
責任を持つ。
言葉の印象から最初に浮かぶのは、結婚、だろうか。
責任を取って結婚するとか、結婚は男の責任だとか。
よくそんな言い回しを聞く。
ここではつまり、相手の期待に沿った行動を取るということか。
例えば10年付き合った彼女がいて、今更結婚しないと言い出せばどうだ。
彼女からしたら、私の10年を返して、と言いたくもなるだろう。
女性は特に婚期というものに敏感だ。
一般に適齢期と言われる20代を共にした彼氏が結婚しないと言えば。
それはもう、一大事と言わざるを得ない。かも、しれない。
だからそんな裏切りはしない。
そういう意味で、責任を取る。
損害の補填、という意味合いもあるだろう。
例えば、お店の商品を壊してしまった。
よって、それを購入することでお店の損害を補填する。
保障する。賠償する。弁償する。
そういう意味で、責任を取る。
仕事の責任なんてものも大雑把に言えばこれに含まれるだろう。
プラスのことを、プラスであるように約束する。
マイナスのことを、ゼロないしはプラスになるよう約束する。
そういったことが、責任を取るということなんだろうと思う。
さて。
「じゃあこの場合、僕はどうしたら責任を取ったことになるんだろうね?」
答えない。
目の前の彼は、微動だにしない。
腹部には深々と鋭いナイフが刺さったままで。
血溜まりは乾く気配もない。
喋らなくなった。
動かなくなった。
――死んでしまった。
その原因は、多分僕にあるのだろう。
だったら、僕はどうしたら責任を取ったと言えるんだろうか。
もう少し遡ろう。
では、何故僕は彼を殺したのか?
恨みがあったからだ。
僕は酷く酷く傷ついて、生きているのも馬鹿らしくなって、死のうとして。
待てよ、と思って。
復讐をしたのだ。
つまり――僕の傷の責任を、彼に取らせたのだ。
僕は傷ついた。
悲しみ、嘆き、怒った。
その傷は決して癒えることはない。
このマイナスはどう補ってもゼロには戻らない。
ならばせめてゼロに近いマイナスにしよう。
そう思った結果が、この復讐劇なのだ。
彼は、彼の行いの償いをした――否、僕がさせたのだ。
「ああ、これで差し引きゼロってことにすればいいのか」
彼が僕を傷つけた。
僕が彼を殺した。
僕の傷は、それでも決して癒えないけれども。
それは――いわゆるアレだ。
「釣りはいらねえ、取っときな」
これにて決着。
めでたし、めでたし。