和泉の日記。

気が向いたときに、ちょっとだけ。

命の価値

2024-04-27 13:16:14 | 小説。
お前に生きる価値はないと言われ続けている。
世間が、社会が、政治が。
僕を殺そうと躍起になっている。

病に臥せって10年以上経つ。
「死ぬまで働け」
と社長に明言され、幸い死にはしなかったものの動けなくなった。
さあ会社の言う通りにしたぞ、どう責任を取ってくれる?
と思っていたらそのままクビになった。
お前を養う余力はウチの会社にはないと。
要するに、最初から使い捨ての命だったのだ。

じゃあ、責任はブラック企業を許している社会にあると思った。
社会は僕の命の責任を取れ。
そう呪いながら、10年以上・・・というわけだ。

いよいよ、体調が悪くなってきた。
僕の心はもう生きていくのに耐えられない。
死を選ぼう、と思った。

そして、どうせ死ぬなら一人で逝くのは寂しいな、と思った。

僕は弱い。
それはシンプルに肉体的な意味で弱い。
大の男を殺すのは無理だろう。
ならば、僕でも殺せて、僕よりも遥かに命の価値が高い女子供を選ぼう。
社会を呪い続けた僕は、すんなりとその考えに至った。

ねえ、あの時の社長さん。
僕は貴方を殺せない。
だから、貴方の奥さんを、子供を、あるいは孫を殺すよ。

社会の皆さん。
貴方達が屑だゴミだと蔑んだ僕は、貴方達の一番大事なものを壊すよ。
命の価値に明確な違いを付けたんだ。
その違いを利用するのは当然だよねえ?

価値のない僕が、価値のある者を殺す。
それができるのは、最早社会のバグみたいなものだろう。
そのバグに、精々怯えながら過ごすといい。

僕の気持ちを、少しでも分かってくれるかい?

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