古田史学とMe

古代史を古田氏の方法論を援用して解き明かす(かもしれない…)

後期重爆撃期

2013年10月03日 | 宇宙・天体

 今回は、やや趣を異にする分野「宇宙」についてのことを書きます。(この分野も私の深く興味がある領域です)
 天文学者の研究によると(※)、「月面」のクレーターの成因には「二大別」あることが判明しています。月面のクレーターには「古くて」「比較的大きい」クレーターと「若くて」「比較的小さい」クレーターと二種類あるのです。(月面のクレーターを新古に分け、さらに大きさで分けてカウントすると異なった2本の分布図ができる)このうち「古い」クレーターについては、これらのクレーターを造る元となった「小惑星」の軌道を再現すると現在「小惑星帯」(メインベルトと呼ばれる)に存在する多くの小惑星とほぼ同一の軌道であることが判明しています。
 またクレーターの「風化」の状態から判断して、これらのクレーターができたのは「太陽系生成直後」と判断されるほど古い時期にできたものであることがわかります。この時期は「後期重爆撃期」と呼ばれています。
 この「後期重爆撃期」というような時期が発生した理由は、外惑星(特に土星)の生成とそれによる既存の(特に木星)の軌道変更(擾乱)によると考えられています。

 現在の太陽系生成の時系列では、まず「内側」の軌道にある惑星から出来はじめ、その後順々に外側へと移動していき「太陽系」最大の惑星である「木星」の誕生で一旦安定したものと考えられています。それは「木星」の質量が非常に大きく、周辺の星間物質や惑星の元となった物質や「微惑星」などが大量に木星に引き寄せられ、一種の「クリーンアップ」が行われたと考えられるからです。
 太陽だけでは全ての物質が地球近傍に集まることとなり、地球や金星、また月などと衝突・落下する微惑星が無数に上ったと考えられますが、木星ができたことにより、ある程度遠距離にある物質は「木星」に集まることとなったため、太陽近傍に接近する微惑星が大きく減少したものと考えられます。このように「地球近傍」が平穏な時期が確保されたことにより、生命の発生と進化というタイムスケジュールがこなせるようになったと考えられます。
 しかし、「木星」ができて数億年後、「木星」の更に外側の遠方に「土星」ができました。「土星」も大型の惑星であり、太陽遠方に存在した星間物質や微惑星を大量に集めたものと考えられ、その質量は「木星」に次ぐものとなったのです。この結果、すでに「太陽」と「木星」の中間地点で生成され、均衡状態にあった「小惑星帯」に働く引力に不均衡が生じました。「木星」と「土星」の相互干渉により「木星」が僅かに「土星」側に引き込まれたのです。これにより、「小惑星帯」に働く「木星」の重力が僅かに減少することとなりました。(引力は距離の二乗に反比例する)これは即座に「メインベルト」小惑星に働く「太陽」の重力が相対的に増加することを意味しており、多くの小惑星がその軌道を乱され、太陽周辺まで近日点を移動させられる事態となったものです。
 このことは月のクレーターのサイズがかなり広範囲にわたっていることでもわかります。つまり、「大きい」小惑星も「小さい」小惑星も「一様」に影響を受けたと推定されるわけです。
 「引力」は「質量の積に比例し」「距離の2乗に反比例」します。月面ののクレーターサイズから見て、ある程度その大きさに範囲があると云うことは、これらの小惑星に働いた引力は「質量の積に比例する」要素よりも「距離の二乗に反比例する」要素の方が大きかったことを示すと思われ、その結果、小惑星帯にある大小様々の小惑星が一斉に「太陽近傍」に「近日点」を移動させることとなったと見られます。それらは多くが地球や月などに衝突、落下し、巨大なクレーターを無数に作ることとなったというわけです。(地球の場合は「風化作用」などにより確認できなくなっていますが、月などにはそれがそのまま保存されている、というわけです。)

  その後、長い期間を経て「小惑星帯」は僅かに木星側に移動して、再度均衡状態となったと考えられます。その後の「天王星」と「海王星」の誕生(これらも大型惑星です)はさすがに遠距離過ぎてほとんど「メインベルト」に影響を及ぼさなかったものと考えられます。
 その後、「太陽系」には「後期重爆撃期」に匹敵するような「強い引力」が働くようなイベントはありませんでしたが、時折、幾度か微少小惑星が群れを成して太陽近傍まで接近するような軌道変更イベントがあったと考えられています。それは「小惑星同士」の衝突による破片の発生がそれです。特に「白亜紀」末期に地球に落下し、恐竜滅亡の引き金を引いた小惑星との衝突は、コンピュータシミュレーションにより「1億6000年前」ぐらいにかなりサイズの大きい小惑星同士の衝突があり、その結果多くの破片が発生し、このうちある程度サイズの大きいものが太陽近傍に接近する軌道に変化し、これがこの時期「地球」(月も)や「金星」あるいは「水星」など「内惑星」にかなり多量に落下、衝突が発生したと考えられています。
衝突破片は「小さいものほど多く」、「大きいものは少ない」と考えられますが、サイズの大きいものは太陽の重力との相互作用により大きく軌道を乱され、結果的に近日点が太陽近傍まで接近するような軌道に変わったものと考えられます。このようなもののうち特に大きなものとの衝突により、その惑星全体に大きな影響を与える事件が起こったものです。(月の「ティコ」クレーターなども、その生成時期が8000万年前と推定され、「恐竜絶滅」の原因となった小惑星衝突と同時期と考えられ、同じ生成要因であると考えられています)
 現在もかなりの数の小惑星が、その近日点を太陽付近に持っており、それらのいくつかは地球にかなり接近する軌道を持っているとされ、要注意とされます。「はやぶさ」がターゲットとした「イトカワ」もそのような小惑星の一つでした。このため「小惑星」を監視するシステムが内外で構築されつつあります(一部は既に稼働している)。
 しかし、軌道傾角が大きいもの(黄道面と直交に近いもの)については、その監視や発見が手薄になりがちです。太陽系内に起源を持つものは軌道傾角は余り大きくはありませんが、太陽系の外から来るものはそうとは限りません。
 「銀河系」は太陽系付近で二億年に一回転というスピードで回転しており、太陽系全体としてその回転運動の一翼を担っています。しかし、この回転速度は個々の星系で異なっており、皆が一様に回っている訳ではありません。周囲との速度差は大なり小なり必ずあるものであり、中にはその速度差が秒速40km以上になるものもあります。
 JAXAが打ち上げた火星観測衛星「のぞみ」は(火星軌道に乗せるのは失敗したものの)太陽系内を人工惑星として飛翔するうちに「太陽系外」からと思われるダストと衝突していたのが判明しています。そのようなもののうちサイズの大きいものが「地球」と衝突した場合は、速度が大きい分衝撃も大きく、地球の表面や生態系に大打撃を与えることが推定できます。しかも、このように太陽系外に起源のあるものはいわば「どこから飛んで来るか判らず」また「速度が非常に大きい」という特徴を持っています。
 これらを「事前」に発見し対処すると云うことはほとんど不可能と思われます。まさに「宇宙」は危険がいっぱいという訳です。
 

 (※)「Science」の2005年9月16日号に掲載されたもの

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