坂戸市が06年から女子栄養大学と共同で続けている葉酸を一日に400㎍(マイクログラム)摂取しようという「葉酸プロジェクト」が18年1月、NHKの「ためしてガッテン」でも取り上げられ、老人の認知症予防の面からも注目されている。
葉酸とは、字のとおり、ほうれん草、小松菜、春菊、にら、豆苗、イチゴ、アスパラガス、ブロッコリー、オクラ、モロヘイヤなど濃い緑色の葉を持つ野菜や焼きのり、煎茶、レバーなどにも含まれる水溶性のビタミンB群の一つだ。
妊娠初期時に胎児が正常に発育するために重要なビタミンで、妊娠のごく初期に赤ちゃんに神経管閉鎖障害が起こり、無脳症や二分脊椎症(運動機能や排尿、排便機能に問題が生まれる)になるのを防ぐため、妊婦に飲ませるものだった。厚生労働省は2000年、妊娠を計画している女性に対し、1日当たり400μg以上の摂取を推奨している。
米国など世界81か国では穀類への葉酸添加を義務付けている。女子栄養大学では、葉酸が体内で働くために必要なビタミンB12とB16を同時に摂取できる「葉酸米」を開発している。
葉酸はまた、認知症や動脈硬化、心筋梗塞、脳卒中、うつ病、骨そしょう症の予防にも効果がある。日本人の約15%は遺伝子の関係で体内で葉酸を活用する能力がない。厚生労働省の基準では、成人1日あたり240マイクログラムの摂取が推奨されている。
動脈硬化の原因となる「ホモシステイン」から必須アミノ酸である「メチオニン」を生成するのに葉酸が必要とされ、不足するとホモシステインが血中に蓄積し、動脈硬化の危険が高まると考えられている。
坂戸市は、伊利市長が音頭をとり、2006年に「健康づくり政策室」を設置し、女子栄養大学の研究を健康づくりに活かす“葉酸プロジェクト”に乗りだした。
厚生労働省の1日当たり摂取推奨量240μgに対し、400μgの摂取を提唱している。このプロジェクトは2006年に内閣府より地域再生計画に認定されている。
葉酸を強化した食品開発も進めており、葉酸入りパン「さかど葉酸ブレッド」を地元企業と共同開発し学校給食にも導入しているほか、レトルトカレー、うどん、ドレッシング、たまごなどにも葉酸食品を拡大している。
地元農産物を活用したヘルシーメニューを提供する店舗を「健康づくり応援店」として認定する制度も始め、ホームページで紹介している。
その成果が現れ始めており、医療費の伸び率は県下最低の増加率に低下し、介護保険1人当たり給付費も減少を続けているという。