埼玉県のマスコットである「コバトン」のことを書いているうちに、50年近くこの県に関係したり、住んだりしているのに、そのモチーフになった県の鳥「シラコバト」の実物を見たことがないことに、ハタと気付いた。
そう言えば、さいたま市の見沼田んぼにある「さぎ山記念公園」の森にサギが群れているのを見た記憶も無い。「埼玉をまともに見直してみよう」と、本気になったのはまだこの一年くらいのことなのだから。
地元の人に聞いてみても、「シラコバトを実際に目にしたことはほとんどない」という。
そこで思い出したのが、越谷市の「キャンベルタウン野鳥の森」。キャンベルタウンは4年近くいたオーストラリアのシドニーに近く、越谷市の姉妹都市。訪ねたこともある。野鳥の森は、高く大きなネットで周りをすっぽり囲んだ中で一部を放し飼いしたりしている施設である。
「野鳥の森」は、姉妹都市提携10周年を記念して、同市から鳥の寄贈を受けて建設された。
オーストラリア勤務を終えてすぐ、訪ねたのはもう何年前のことか。シラコバトはオーストラリアに関係のない鳥ながら、訪ねてみると、「入ったらすぐ右手の小屋にいますよ」。
雌雄二匹いるのを外から狙ってみたものの、警戒心が強いので、小屋の隅に逃げられ、金網のため小さなデジカメではうまく撮れない。
受付にいた親切な若い職員に頼んで、中に入ってもらって、撮ってもらったペアがこの写真である。
シラコバトは、キジバトより小型で、体型はほっそりとしていて、小顔がかわいい。頭部にかけて白っぽく、なんともスタイルがいい。思わず惚れ込んでしまう。
首の後ろに黒色の横帯があるのが特徴で、一目見たらすぐ分かる。英語では、Collared Dove。「首輪付きの鳩」。ほんとに美しくかわいいので江戸時代に飼い鳥として、外国から持ち込まれ、それが放鳥され、野生化したとのだという。
「ポポーポウ」「ポポーポウ」と鳴くそうで、童謡の「ぽ、ぽ、ぽ、鳩ぽっぽ」は、この鳴き声を模したものだとか。それほど身近に沢山いた鳩だったのだ。
それが、繁殖地だった屋敷林が減り、乱獲もあって減少。1956年国の天然記念物、65年県の鳥、88年越谷市の鳥に指定された。どういうわけか越谷市を中心とした地域に住んでいるからである。
ちゃっかり鶏場や豚舎の餌のおこぼれにあずかろうと、その周辺で目についたのに、鳥インフルエンザ対策で鶏舎防御シートが張られ、侵入口がなくなり、一時増えかけていたのに、また減少の道をたどり、レッドリスト(絶滅危惧種Ⅱ類)に挙げられたまま。
この野生の森には、オーストラリアの珍鳥クカバラやエミューなどもいる。クカバラは、「笑いカワセミ」とよばれ、ゴルフ場の木の上にとまっていて、ミスプレーをすると「ク、ク、カ、カ」と鳴いたりする世界最大のカワセミの仲間。
エミューは、ダチョウに似た羽根をなくした大きな鳥。好奇心が旺盛、後ろからガイドブックをのぞき見したりする面白い習性の持ち主。オーストラリアにはめずらしい鳥も動物も多い。
埼玉県のゆるキャラたち
“ゆるキャラ王国・埼玉県”にはいったい、どんなゆるキャラが住んでいるのだろう。
埼玉県のゆるキャラを語る際、忘れてならないのは、県のご当地キャラ軍団「ゆる玉応援団」の団長を務めるマスコット「コバトン」である。
コバトンは県の鳥に指定されているシラコバトをモチーフに県立川越工業高校の生徒がデザイン。2004年、県内で開かれた国体の大会マスコット、05年から県のマスコット、08年から応援団団長になった。
08年、埼玉西武ライオンズが日本一、東洋一になった時、監督の胴上げと一緒に選手の手で胴上げ。09年、県出身の宇宙飛行士・若田光一さんに連れられ、スペースシャトル「ディスカバリー」に同乗。同年、発見者の狭山市のアマチュア天文研究家佐藤直人さんの命名どおり、国際天文学連合(IAU)が太陽系を回る小惑星12031番に"Kobaton"(コバトン)とすることを正式に認定・・・など宇宙空間にまで活躍の場を広げ、県のPRに大きな功績を挙げている。
14年11月14日の県民の日には、新しいキャラも県庁で披露された地名が連想される名前がいいという。知事のリクエストを受けて、お笑いコンビのバナナマン設楽統さん(秩父出身)らがデザイン、名前を提案、「さいたまっち」と名づけられた。
コバトンの兄弟分で、コバトンに比べると黒目が大きく、両ほほの赤いほっぺとお腹の赤と黒の横じまが目立つ。足が長くスリムで長身、「とんとん」とコバトン語を話す。さっそく22日の「世界キャラクターさみっとin羽生」にも姿を見せた。(写真左)
先進地羽生には、まず「ムジナもん」。宝蔵寺沼に全国でここだけに自生する食虫植物「ムジナモ」と、伝説の妖怪「むじな」にちなんで命名。尻尾はムジナモの花、前頭部には特産のモロヘイヤの葉がデザインされている。モロヘイヤの葉なら分かる。ムジナモはつぶさに見たことがないので、どんな花が咲くのだろう。10年前、市の若手職員が考案。県内のご当地キャラの草分けといわれる。
地元の名物「いがまんじゅう」にちなんだ「いがまんちゃん」もいる。いがまんじゅうは、高価なもち米の代わりに、赤飯のなかにまんじゅうを入れたのが始まりとされ、元は隣の加須のものだったとか。
市にはこのほか、「ザリガニ博士」「しらさぎ婦人」「いたっち」「フナどん」「イナゴージャス」の5体のキャラもいて、計7体もいる。
他の市町村も、全国的に人気が高い深谷市の「ふっかちゃん」を初め、それぞれ趣向を凝らしていて、どのイベントにも顔を出し、子供たちに大の人気。一緒に記念撮影する姿が見られる。ゆるキャラは地元の人々や観光客を呼び寄せるツールになっていて、まちおこしの願いが込められている。
県内でイベントがある度に、ゆるキャラが登場、B級グルメの屋台が並ぶ。この埼玉式コラボレーションが、海もない、温泉地もない埼玉県の観光客誘致にどれだけ力になるか楽しみだ。