かゞり火
かへりうく覚しやすらふ。たえず人さぶ
らひてともしつけよ。夏の月なき程は
庭のひかりなきいとものむつかしくおぼつか
なしやとのたまふ。
かゞり火にたちそふ戀のけぶりこそ
世にはたえせぬほのふ也けれ。いつまでとかや。
ふすぶるならでもくるしき下もえなり
けりと聞えたまふ。女君あやしの有さまや
とおぼすに、
行ゑなき空にけちてよかゞり火の
たよりにたぐふけぶりとならば
絵入源氏物語 万治三年(1660年)本
静嘉堂文庫美術館
平安文学、いとをかし
―国宝「源氏物語関屋澪標図屏風」と王朝美のあゆみ
2024年11月16日(土)~2025年1月13日(月・祝)
静嘉堂@丸の内 (明治生命館1階)