俊頼髄脳
おほかた、歌の良しといふは、心をさきとして、珍しき節を求め、詞をかざり詠むべきなり。心あれど、詞かざらねば、歌おもてめでたしとも聞えず。詞かざりたれど、させる節なければ、良しとも聞えず。めでたき節あれども、優なる心ことばなければ、またわろし。気高く遠白きをひとつのこととすべし。これらを具したらむ歌をば、世の末には、おぼろげの人は、思ひかくべからず。金玉集といへる物あり。その集などの歌こそは、それらを具したる歌なめり。それらを御覽じて、心を得させ給ふべきなり。これらを具したりとみゆる歌、少し記し申すべし。
風ふけば沖つしらなみたつた山よはにや君がひとりゆくらむ(古今 雑下)
白波といふは、、ぬす人をいふなり。龍田山を、おそろしくやひとりこゆらむと、おぼつかなさに詠める歌。
【略】