古今著聞集
公事第四
104 後鳥羽院白馬節會習禮の事
後鳥羽院、ひそかに大内に御幸なりて、白馬節會の習禮ありけり。院は大臣の大將とて、内辨をつとめさせをはしましけり。官人坊門大納言忠信、番長家季朝臣にてぞ侍ける。右大將にて後久我太政大臣におはしけるに、番長には造酒正信久をなされたりけり。大納言に信久ふかくかしこまりたりけるを、大納言みて、
随身に随身のかくばかりするやうやある
といはれければ
随身も随身にこそよれ
といひたりける、いと興ある事也。
此日の事ぞかし、彈正弼國章、内侍となりて、下名をもちて東のはしのもとへあゆみいでたりけるに、陣につきたる諸卿たえかねて、みなわらひたりけるとなん。