新古今和歌集の部屋

源氏物語と新古今和歌集 馴れはまさらで 葵



 このひめ君を、いまゝでよ人もその人ともしりきこえぬも、物げなきやう也、ちゝ宮にしらせきこえてむ、とおもほしなりて、御もぎの事、人にあまねくはの給はねど、なべてならぬさまにおぼしまうくる御よういなど、いとありがたけれど、 女君はこよなううとみきこえ給て、年ごろよろづにたのみきこえて、まつはしきこえけるこそあさましき心なりけれ、とくやしうのみおぼして、さやかにもみあはせたてまつり給はず、きこえたはぶれ給も、くるしうわりなき物におぼしむすぼほれて、ありしにもあらずなり給へる御ありさまを、おかしうもいとおしうもおぼされて、
年ごろおもひきこえしほいなく、なれはまさらぬ御けしきの心うきこと。とうらみきこえ給ほどに、年もかへりぬ。



第十一  戀歌一
題しらず           柿本人麿
み狩する狩場の小野のなら柴の馴れはまさらで戀ぞまされる
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