(古今和歌集巻第十五 恋歌五)
(題しらず)
(伊勢)
ひとしれずたえなましかばわびつゝもなき名ぞとだにいはまし物を
よみ人しらず
それをだに思ふ事とてわがやどをみきとないひそ人のきかくに
あふ事のもはらたえぬる時にこそ人の戀しき事もしりけれ
わびはつる時さへものゝかなしきはいづこをしのぶなみだなるらん
藤原おきかぜ
怨てもなきてもいはむかたぞなき鏡にみゆる影ならずして
よみ人しらず
ゆふされば人なきとこを打はらひなげかむためとなれるわが身か
わたつみのわが身こす波立かへりあまのすむてふうらみつるかな
あらを田をあらすきかへし返しても人の心をみてこそやまめ
有そうみのはまのまさごとたのめしはわするゝことのかずにそ有ける
あしべより雲ゐをさして往くかりのいやとほざかる我身かなしも
しぐれつゝもみつるよりもことのはの心の秋にあふぞわびしき
秋風のふきと吹ぬるむさし野はなへて草葉の色かはりけり
小町
秌かぜにあふたのみこそかなしけれ我身むなしくなりぬとおもへば
平貞文
あき風のふきうらかへすくずの葉のうらみても猶うらめしきかな
よみ人しらず
静嘉堂文庫美術館
平安文学、いとをかし
―国宝「源氏物語関屋澪標図屏風」と王朝美のあゆみ
2024年11月16日(土)~2025年1月13日(月・祝)
静嘉堂@丸の内 (明治生命館1階)