新古今和歌集の部屋

俳諧七部集 冬の日 思へども壮年 蔵書

冬の日

 
 おもへとも壮年
    いまたころもを振はす
              埜水
はつ雪のことしも袴きてかへる

霜にまた見る蕣の  食     杜國

野菊まてたつぬる蝶の羽おれて  芭蕉

うつらふけれとくるまひきけり   荷兮

麻呂か月袖に羯鼓をならすらん  重五

桃花をたをる貞德の 冨     正平

雨こゆる浅香の田螺ほりうへて  杜國

奥のきさらきを只なきになく   埜水

床ふけて語れはいとこなる男   荷兮 

縁さまたけの恨みのこりし   はせを

口おしと瘤をちきるちからなき   野水

明日はかたきにくび送りせん   重五

小三太に盃とらせひとつうたひ  芭蕉

月は遅かれ牡丹   ぬす人   杜國

縄あみのかゝりはやぶれ壁落て  重五

こつ/\とのみ地蔵切町     荷兮

初はなの世と也嫁のいかめしく  はせを

かぶろいくらの春そかは ゆき   野水

櫛はこに餅すゆるねやほのかなる かけい

うくひす起よ帋燭とほして     芭蕉

篠ふかく梢そ柿の蒂さひし     野水

三弦からん不破のせき  人   重五

道すから美濃て打たる碁を忘る  芭蕉

ねさめ/\のさても  七十   杜國

奉かめす御堂に金うちになひ   重五

ひとつの傘の下挙りさす     荷兮

蓮池に鷺の子遊ふ夕ま暮     杜國

まどに手つから薄様をすき    野水

月にたてる唐輪の髪の赤枯て   荷兮

恋せぬきぬた臨済をまつ    はせを

秋蝉の虚に聲きくしつかさは   野水

藤の實つたふ雫 ほつちり    重五

袂より硯をひらき山かけに    芭蕉

ひとりは典侍の局か内侍 か   杜國

三ケの花鸚鵡尾なかの鳥いくさ  重五

しらかみいさむ越の独活苅    荷兮

 

 

 
【初折】
  〔表〕
はつゆきのことしもはかまきてかへる  埜水(発句 初雪:冬)
しもにまだみるあさがほのめし     杜國(脇   冬)
のぎくまでたづぬるてふのはねおれて  芭蕉(第三  秋)
うづらふけれとくるまひきけり     荷兮(四句目 秋)
まろがつきそでにかつこをならすらん  重五(五句 秋月)
たうくわをたをるていとくのとみ    正平(六句目 春)
  〔裏〕
あめこゆるあさかのたにしほりうへて  杜國(初句  春)
おくのきさらぎをただなきになく    埜水(二句目 春)
ゆかふけてかたればいとこなるをとこ  荷兮(三句目 雑恋)
えんさまたけのうらみのこりし    ばせを(四句目 雑恋)
くちおしとこぶをちぎるちからなき   野水(五句目 雑)
あすはかたきにくびおくりせん     重五(六句目 雑)
こさうだにさかづきとらせひとつうたひ 芭蕉(七句目 雑)
つきはおそかれぼたんぬすびと     杜國(八句目 夏)
なわあみのかがりはやぶれかべおちて  重五(九句目 雑)
こつこつとのみぢざうきるまち     荷兮(十句目 雑)
はつはなのよとなりよめのいかめしく はせを(十一句目 春恋)※
かぶろいくらのはるぞかはゆき     野水(十二句目 春恋)
【名残の折】
  〔表〕
くしばこにもちすゆるねやほのかなる かけい(初句 春恋)
うぐひすおきよしそくとぼして     芭蕉(二句目 春)
ささふかくこずゑぞかきのへたさびし  野水(三句目 冬)
さみせんからんふはのせきびと     重五(四句目 雑)
みちすがらみのでうちたるごをわする  芭蕉(五句目 雑)
ねざめねざめのさてもしちじふ     杜國(六句目 雑)
ほうがめすみだうにこがねうちになひ  重五(七句目 雑)
ひとつのかさのしたこぞりさす     荷兮(八句目 雑)
はすいけにさぎのこあそぶゆふまぐれ  杜國(九句目 夏)
まどにてづからうすやうをすき     野水(十句目 雑)
つきにたてるからわのかみのあかがれて 荷兮(十一句目 秋月)
こひせぬきぬたりんざいをまつ    はせを(十二句目 秋)
  〔裏〕
しうぜんのからにこえきくしつかさは  野水(初句  秋)
ふじのみつたふしづくほつちり     重五(二句目 秋)
たもとよりすずりをひらきやまかげに  芭蕉(三句目 雑)
ひとりはすけのつぼねかないしか    杜國(四句目 雑)
みけのはなおうむをながのとりいくさ  重五(五句目 花)
しらがみいさむこしのうどかり     荷兮(挙句  
 
注※ 「よとなりよめ」と読んだが「よとや(嫁入)よめり」と読むかも。
 
 
※おもへども 杜甫 曲江対酒「老大いたづらに傷む未だ衣を払わず(老大悲傷未拂衣)」より。
 
※ふけれ 鶉の鳴く事
 
※小三太 架空の名前
 
※貞徳の冨 松永貞徳。晩年は巨万の富を得た。
 
※独活苅 延喜式に越前から独活が貢納する薬とある。
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