新古今和歌集の部屋

年中行事絵巻 祇園会1 摸写コレクション


年中行事絵巻は、後白河院の下命で藤原光長が画いたものである。詞書は、三位雅経とあるが、小松茂美によれば藤原教長としている。
これを江戸時代の後水尾院が、住吉如慶、具慶親子に池尻宮内卿を通じて貸し与え、摸写させたものが現存している。
なお、住吉如慶は、土佐光吉の次男で、後水尾院より住吉姓を与えられ、法橋の位を授かった。寛文元年(1661年)に出家し、如慶と名乗った。
現在、住吉家伝来の摸本十六巻は、明治の終わり頃、田中有美、親美親子が買い求め、田中家の秘庫に入った。

オリジナル本については、万治四年 (1661)正月十五日の二条邸から出火した火事により、大内、仙洞御所、公卿邸119、寺院16、民家558軒を焼き付くした際に、灰塵となった。

それ以外の摸本としては、
①鷹司本 宮内庁書陵部
②芸大Ⅰ本 東京芸術大学蔵
③京大本 京都大学蔵
④陽明文庫Ⅰ本 陽明文庫蔵
⑤東博本 東京国立博物館蔵
⑥角川本 角川家蔵
⑦陽明文庫Ⅱ本 陽明文庫蔵
⑧松岡本 宮内庁書陵部
などが知られる。
その他、伏見稲荷大社本、小堀靹音旧蔵本、芸大Ⅱ本他がある。
①は住吉家本とは別系統。⑤は狩野探幽摸写本の系統。

当該摸写本は、年中行事絵巻の内、祇園会、そして伏見稲荷大社神幸祭の奔馬が疾駆して鐙が外れ、牛車、見物人が逃げ惑い、驚いた牛が暴走し、市女笠を轢いてしまった部分である。
伏見稲荷の一部が混入した理由は不明である。

住吉家本に比べると、同じく彩色を施されて無いが、住吉家本は、墨で塗り潰している部分も当該摸写本は、線のままである。
住吉家本
そして一ヶ所女性の衣に朱で模様が描かれている。

そして、紙の張り合わせが縦横にある。
つまり、オリジナル本を摸写した下絵と考えて良い。

惜しむらくは、一ヶ所最近破けて穴が開いている。何が描かれているか分からず、安物の下絵だと、扱いをぞんざいにしたのかも知れない。

参照文献
日本絵巻大成8巻
年中行事絵巻
小松茂美・吉田光邦著
初版:1977年12月
発行:中央公論社

平成29年12月20日 拾點壱肆
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