OUR HOME ISLAND - いおうとう(硫黄島)

戦前に在住していた島民が、戦後の小笠原返還後も故郷に帰ることが許されていない硫黄島についての情報発信をいたします。

慰霊の式典で今年も「故郷の廃家」を歌いました。(2)

2008年07月06日 | 硫黄島・小笠原村
「故郷の廃家」を、「少年兵たちが歌った」エピソードがパンフレット「硫黄島」に書かれている、と、昨年紹介をさせていただきました。
そこには、「故郷の両親を思い合わせ」と、書かれてます。


この1年間、この歌詞を読んで、いろいろと考えるところがありました。
オリジナルは、My Dear Old Sunny Homeという、ヘイズというアメリカ人
が作詞・作曲した曲です。
日本語に訳詩をしたのが、犬童球渓です。

元の英語の詩もホームページで検索をして
調べて、読むことができました。、鳥や植物の名前が出てきます。


私たちがよく知っている、故郷を懐かしむ内容の唱歌としては、
「うさぎ追いし、かの山、、」の「故郷(ふるさと)」があります。
誰もが歌ったことがあると思います。
「故郷の廃家」も、音楽の教科書に載っていた頃には、
誰もが知っていて歌ったことがあった、曲だったのかもしれません。

二つの歌詞の内容を比べてみると、
「故郷(ふるさと)」が、
・今も故郷はある。
・今はその場所を離れていて、遠くから懐かしんで、いつか帰りたいと
願っている。

「故郷の廃家」は、
・今は荒廃してしまっている。
・今、その場所にいて、目の前に荒廃した姿を見て、過去を懐かしんで
嘆いている。

大きな違いがあります。

前者が「空間の隔たり」に対する郷愁であるのに対して、
「故郷の廃家」は、「時間の隔たり」に対する郷愁です。

故郷を離れて、南洋の島に派遣されて、その戦いが激化していく中で、
「少年たちが歌うのを見て、市丸少将が、涙を浮かべた。」
少年兵たちが、「故郷の廃家」を、歌った時の心はどんなだったのでしょう。

「帰れないかもしれない故郷を懐かしんで、帰りたいと
願い、歌った。」のでしたら、
その気持ちに合う、歌詞の内容は、「遠く離れた故郷を思う」
「故郷(ふるさと)」の方が、あてはまる歌詞の意味内容で、
「故郷の廃家」の方ではないと思います。
「故郷の廃家」の歌詞では、「故郷」の方が、荒廃して「見る影もない。」
になってしまっているのですから、懐かしんで帰りたいと
願うという気持ちとは、ずれがあります。

「故郷が見る影もない」と嘆いている歌を、
どうして、「故郷を離れて、さびしい思いをして、激戦の地に
やられてしまった少年兵たちが歌ったのだろうか?」という点が、
不思議だと思い、あれこれ、考えるようになっていました。


私の、思うところとしてですが、

唱歌の歌詞と「帰れるか分からない激戦地の少年兵についての
パンフレットの紹介」とから、勝手なこじつけ になってしまいますが、
ひょっとすると、、と思ったのは

「帰れないと分かった。帰りたい故郷。家族に会いたい。
南洋の戦場での様子から、帰れそうだとは思えない。」と、
兵士たちが思っていたとしたら、
「既に帰れない故郷として、思い出される。」
という、「時間の隔たりへの郷愁」を、うたった
「故郷の廃家」の歌詞が、その時の少年兵たちの思い、無念さに
ぴったりだったのかもしれません。


以上は、私の勝手な、歌詞に触発されての、想像の世界でした。

もっと、普通に考えれば、
当時は唱歌として、皆がなじんで、口ずさんでいたであろう
この「故郷の廃家」を、声を合わせて、大きな声で
歌っていたと考えれば、自然です。
皆が共通で知っている歌を、声を合わせて歌えば、
元気が出るのは誰もが知っていることです。


むしろ、
「懐かしい故郷が、荒れて、往時の面影もない。」と
嘆くという歌詞の内容は、
墓参訪島で、硫黄島に行っている
硫黄島に戦前に在住していた島民には、そのまま
ぴったり、しっくりきます。

帰りたくても帰ることが許されていない故郷の島を
訪問しています。

歌詞では、「自分の家」が荒れた様子を「今」見ているのに
対して、戦前在住の島民は、家屋敷そのものを見ることはできません。
戦前にあった場所が特定できて、その場所に行ける人がいます。
およそ、「このあたりだろう。」という場所に行ける人がいます。
家のあっただろう場所に行けない人もいます。

戦前の島では一番、住民が多く繁華街だった、
祖父が商店をしていた元山は、現在の空港なので、
入ることができません。
硫黄ヶ丘近くの森が、旧村役場と学校のあった場所らしく
そこは、今の空港にかかっていないようです。

昨年も、今年も、「ひょっとすると、ぎりぎり、祖父母、
母たちが暮らした家は、空港には、かかっていないのでは?」
(最初の訪問の時に、母の兄弟の長兄、次兄の伯父たちは、
「このあたりだろう。」と、空港になっていない森の
あたりを、自分たちの住んでいた家のあった場所らしい、
と言い合っていました。) と、昔と今に詳しい人に訊いたりしていますが、
やっぱり、空港になってしまっているようです。
それでも、まだ、「このあたりなのではないのだろうか。」と、
近くを歩いたり眺めたりしました。



父島では 返還記念パレード が行われたそうです。

また、小笠原村議会の一木重夫議員がブログ 
「小笠原村議会議員 一木重夫の政治日記」で、
「硫黄島と小笠原をめぐる日米関係」というタイトルで、
とてもためになる興味深い内容を紹介して下さっています。

一木さん、
とても意義のある内容をご紹介いただき、
興味深く、読ませていただきました。
昨年に続き今年も、一緒に硫黄島訪問をしていただき
ありがとうございました。

いろいろな思い、願いをこめて、大きな声で、
「故郷の廃家」を歌うことは、とても大切なことだと考えています。

写真は、今年撮影した、祈念公園からの海と係留中のおが丸。
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慰霊の式典で今年も「故郷の廃家」を歌いました。(1)

2008年07月06日 | 硫黄島・小笠原村
硫黄島での二日間。その最初は旧島民墓地平和祈念公園での式典です。上陸すると、すぐに、全参加者が、会場に集まり、式典の開始に備えます。

暑いのですが、「これから、硫黄島での二日の、慰霊と鎮魂の活動が始まる」と、気持ちが引き締まる思いで、緊張して出席することができます。

座る位置が去年と同じような位置になりました。
来賓の方の後ろ、三列目か四列目の一番左側です。

今年は、小笠原返還40年ですので、
皆様のお言葉で、「硫黄島は返還されても旧島民が戻れない島のまま」
であることを、去年よりも強調していただいていたと感じました。

昨年も、紹介いたしましたが、出席者全員で「故郷の廃家」を
歌いました。歌詞が配られていました。

この四拍子 24小節からなる曲で、
歌うのが難しいのは、最後の8小節だと思います。

昨年は、歌詞は配られていましたが、メロディーを知らなかったので
まわりの人に合わせて、何とか歌おうとしましたが、難しい曲でした。
涙で目がかすみ歌詞は見えないし、しゃくりあげてしまって
ろくに歌えませんでした。

今年は、昨年のこのブログで、掲載したりした時に調べたり、
9月の集いでも歌いましたのでメロディーも歌詞も知っていて、
心積もりして、始まるのを待ちました。

最後の8小節は、昨年の9月の集いで歌った時にも
皆のテンポが、ずれてしまっていました。
「あれたるわがいえに」の 「る」と「わ」の間が長いので
十分に待ちきれない、リズムになっているためです。

昨年の様子を私が書いたものを、
とても幅広く歴史などに関することを深く考察、記述してくださっている
ホームページで、ご紹介くださったワシモ様の
サイトでは、多くの、ためになるお話、考えさせられる内容、
写真や俳句などを、見ることができます。
特集をメールマガジンで送付していただき購読することもできます。

そのワシモ様のサイトの掲示板で、
船での訪島は初めてだった、同行した妹が、
この歌についてコメント掲載してしまっていますが、

「到着する前の晩の船室で、メロディーを教えた。」
のですが、その理由は、
知らずに初めてだと、歌えないのは、昨年、自分が
経験していたからです。
メロディーとリズムを教えましたが、
楽器無しで声で伝えるのは、なかなか難しかったです。


今年は、できる限り、大きな声で歌いました。
取材同行のNHKのプレスのクルーが近づいて来ました。

が、私より、一列前の、私の斜め右前にいた妹がいる列に
カメラを向けていました。

私が、思い切りの大きさで歌っても、声量では、
一度それなりに教えて歌を覚えてしまったら妹に勝てず
「大きな声で歌っているのがいる」前列の方が、目立ったため
だったと思います。
撮影されただろう、その場面が、番組で使われたりすることは
ありませんでした。

中学二年生たちも、一生懸命に歌ってくれていました。

毎年、慰霊祭で、この「故郷の廃家」を参加者全員で歌って
慰霊・鎮魂の、皆の思いを集中させるということは、
とても良い、大切なことだと思います。

次は、9月14日の「旧島民の集い」で、
歌います。
伴奏楽器もなく指揮者もいないので、
なかなか合わないのですが、頑張りたいと思います。

この曲の歌詞は、
当ブログの昨年の7月投稿の記事に載せてあります。

写真は、慰霊祭が行われた旧島民墓地平和祈念公園を
入り口付近から撮影したものです。

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