「サッカー文化フォーラム」夢追い人のブログ

1993年のJリーグ誕生で芽生えた日本の「サッカー文化」。映像・活字等で記録されている歴史を100年先まで繋ぎ伝えます。

ナビスコカップ名変更、村井チェアマン英断の重み

2016年06月21日 19時54分23秒 | Jリーグ・三大タイトル

本日のニュースで、ナビスコカップの冠名が「「JリーグYBCルヴァンカップ」(略称:ルヴァンカップ)に変更になることを知りました。

ニュースのタイトルだけを見た時は、とうとうナビスコカップも終了か、と思いましたが、スポンサー会社が9月1日から社名変更することに伴う名称変更と知り、ホッとするとともに、なぜ大会途中での変更になったのか不思議でした。

ニュースを読み進むと、どうやらスポンサー会社からの強い要望ではなく、Jリーグ村井チェアマンからの提案だったようです。

これは凄いことです。通常なら「では、大会名変更は来季から」と提案するのはJリーグ側であり、「大会途中に変更では無理があるでしょうから」と渋々応じるのは会社側です。

それを、Jリーグ側から「決勝トーナメントから変えましょう」と言ってもらえるのですから、会社側もこんなありがたいことはない話です。

会社の商号変更が9月1日からだそうで、決勝トーナメントは前日の8月31日から始まるそうです。会社にとっては、これ以上ないタイミングで冠変更がスタートします。

村井チェアマンは記者発表の席で「(ヤマザキナビスコの)飯島社長とお会いした際、(商号変更は)社運を賭けた一大事業とお聞きし、来年からの変更ではなく、このタイミングで一緒に大会名称も変更させていただけないかと申し出た」と説明したそうです。

これを読み「これこそがトップの決断だ」と快哉を叫びました。名称変更と簡単に言いますが、大会名を変更するとなれば、さまざまな分野で変更処理が必要になり、手続き・事務処理が膨大なことから、普通に考えれば組織としては、できるだけソフトランディングできる方法を選びたいものです。

けれども、それは内輪の事情であって、この場合、最も重要なのはスポンサーとのパートナーシップを強くすることです。

そこを理解しておられる村井チェアマンは、ヤマザキナビスコ飯島社長の話をお聞きになって、「自分たちさえその気になれば、社運を賭けた一大事業に共鳴することができると考えられたのだと思います。

この英断は実は大きな価値があります。ヤマザキナビスコ社(9月1日からはヤマザキビスケット社)とのパートナーシップをより強固にしたことは言うまでもありませんが、それにも増して、将来的なJリーグの価値を有形無形に高めるだろうと思います。

Jリーグは、数多くのスポンサーの支持なくして成り立ちません。それらスポンサーは「Jリーグ」という組織機構が、どこに軸足を置いて仕事をしているのか、いつも、じっと見ています。自己保身のスタンスが垣間見えたり、主客転倒の考え方を平気で披瀝するような組織機構なら、時間とともにスポンサーは少しづつ離れていきます。

Jリーグが隆盛を保つか衰退していくかは、今回のような時にどう振る舞うかによって違ってくるのです。

私は村井チェアマンの英断に心から敬意を表するとともに、多くのサッカーファンにも、その意味合いを理解していただきたいと思い、ニュースを知ったあとすぐに筆をとりました。

このブログで村井チェアマンについて取り上げたのは、4月5日に「AED背負い仲間の命救った甲府サポーター」について村井チェアマンが紹介されていた件以来2度目です。

4月5日の時は、村井チェアマンがスポニチアネックスというネット版スポーツ紙に持っておられる「村井チェアマン直言」というコラムを拝読したことから書いたものです。その後、しばらくコラムを読んでいませんでしたので、今回またコラムをたずねてみました。

すると6月14日付けで「直言」欄ではなく「村井チェアマン 社会貢献目指す姿こそパートナーシップ 」という取材記事が目に入りました。

その記事では、村井チェアマンがリーグ戦のタイトルパートナーである明治安田生命の根岸秋男社長と、J3リーグ第12節YS横浜―栃木の試合を観戦した時のことが紹介されています。

読んで気づいたのは「Jリーグは4年前から、協賛企業についての名称をスポンサーからパートナーに改めた。これは我々とパートナーとの関係が単なるお金と露出のトレードオフではなく、それぞれの成長をともに考えていきたいという思いからである。」という部分でした。

そのことを知らないでいた私は、今回も「スポンサー」と書いてしまいました。

村井チェアマンが、ナビスコカップ名を大会途中から変更しましょうと申し出たのは、実は、根っこにある考え方が、「我々とパートナーとの関係が単なるお金と露出のトレードオフではなく、それぞれの成長をともに考えていきたいという思い」にあるからなのです。

私は、この欄でしばしば、JFAなどの組織に対して厳しい書き込みをしてきました。2014年6月28日の書き込みでは、ブラジルW杯で日本代表が無残な結果に終わったことを受けて、日本代表バッシング一色だったこともあり、「W杯日本代表バッシングから、いくつか真摯に考えるべきこと」とタイトルをつけています。

そして、特に舌鋒鋭かった「日刊ゲンダイ」が項目としてあげているキーワードを中心に指摘したい、と書きました。その一番目が「Jリーグは恐らく解体」です。

その中で私は『膨らみ続けたチーム数が、経営悪化のため撤退続出となった時の社会的イメージダウンというリスクに、日本サッカー協会もJリーグも正面から向き合っていないと言われて久しい。その理由として、それらの組織に安住する「サッカー貴族」「サッカー官僚」といった、既得権益者たちが、自分たちの身を切ることに消極的だからという点も、批判の対象となっている。』と書きました。

その年、明治安田生命はJリーグトップパートナー、J3タイトルパートナーとしてJリーグとのかかわりを深め始めました。翌年からはJリーグ全体(J1,J2,J3)のタイトルスポンサーとしての契約を締結しています。

したがって、私が書き込んだ頃、もしJリーグ関係者がその書き込みを読んでいれば「言われなくとも着々と布石は打ってるよ、どこの馬の骨だか知らないが、何も知らないくせに」ぐらいに思ったに違いありません。

村井チェアマンは2014年1月に就任されており、私の書き込んだ6月時点では、いわば新機軸を打ち出す準備期間だったことと思います。

明治安田生命が4年間にわたるJリーグ全体のスポンサーとなったことで、経営事情の苦しいクラブも、この間は小康を保てると思います。おそらく村井チェアマンは「その後どうするか」を日々模索しておられるに違いありません。

私ならそのことで頭が一杯になります。明治安田生命との契約が終わったあとの2019年シーズンには、幾つかのクラブの、いわば不良債権が表面化しないだろうか、果たして財務改善は図れるだろうか等々。

その年に向けて、どう対策をとっていくか、村井チェアマンにとっても楽な道のりではないと思いますが、今回のナビスコカップ名変更の英断が、その時になってJリーグの助けに活きてくるような気がします。

 

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