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玄海1号機の耐性評価提出 = 九電の自己評価では“安全”

2012-08-14 12:46:46 | 地域情報
2012年8月14日(火)

 九州電力は、玄海原発1号機の耐性評価(ストレス・テスト)の

1次評価結果を、経済産業省原子力安全・保安院に提出した、と云う。

玄海1号機の耐性評価提出=九電
 (時事通信) - 2012年8月13日(月)16:59


  

 これまでの九州電力のやってきたことを考えても信用できる内容では無い!

 尤も、報道された この評価結果を見ても安全どころか不安だらけである。

 まず一つ取り上げると「耐震性評価数値」である。

玄海原発1号機の耐性検査、1次評価を提出
 (読売新聞) - 2012年8月13日(月)20:45


 安全性は 約 【1.61倍】 だと云う。

 何に対して 【1.61倍】 なのかというと、「設計時に想定した揺れ」に対して。

 それでは、その「設計時に想定した揺れ」は如何程かと云うと

 【540 Gal】 (重力加速度は、980 Gal) だと云う。

 すなわち、540 Gal × 1.61倍 = 870 Gal

 870 Gal とは、【重力加速度】にも満たない極めて低い耐震性である。

 阪神淡路大震災や、東日本大震災では、多くの地点で【重力加速度】を超え、

2000 Gal 前後の数値も至るところで出現した。

 以前にも書いたが、原発と比べればはるかに危険性が小さい

私どもが設計する機械の場合でも、通常許容応力度の2倍程度の安全性は

確保している。 協力関係にあるカナダのメーカーでは3倍。

 鉄鋼で言えば、許容応力度の2倍(1/2)は、破壊強度の5倍(1/5)だ。

参考:鉄鋼(SS400)の場合
 許容応力度:1600kg/cm2 (長期),2400kg/cm2 (短期)
 破断応力度:4100 kg/cm2
 に対して、通常 800kg/cm2 以下で使用するよう設計する。
  (会社によって安全率設定は異なります)
 


 そういう『常識』から比べても、原発の耐震安全率は、極めて低いと

言わなければならない。

 新聞社各社にも、この程度の機械安全に関する初歩的知識を持った記者は

居るはずなのにも関わらず、どの新聞も原発の耐震性 (この例では870 Gal

について、この面から問題点を指摘するつもりはないようだ。

九電、全原発の耐性評価終了 玄海1号機「安全」報告
 (朝日新聞) - 2012年8月13日(月)18:41


   (朝日新聞までが見出しに「安全」と表示する有り様)

 この「決定的強度不足」は、何も玄海原発1号機だけの問題では無い。

日本中の全ての原発が、この程度のお粗末な耐震性しかないのである。

 その上、玄海原発は脆性遷移温度が老朽化を示していたにも関わらず、

そのインディケーターや計算方式に問題があったようにすり替えて

危険性を覆い隠して【老朽化問題ない】(西日本 - 8/13)としている。

九電、玄海1号安全評価を提出 老朽化問題ない
 西日本新聞 - 2012年8月13日(月) 19:27


 既に福島原発があのような惨状を示しているにも関わらず、危険性を

まともに評価せず、「安全」と自己主張する気が知れない。

     ****************

 話は変わるが、

【経済産業省原子力安全・保安院は10日、専門家の意見聴取会を開き、
 九州電力川内原発(鹿児島県)など5原発を「敷地内に活断層がない」
 と、結論付けた。】(読売新聞 - 8/10) と云う。

 1年も経たない前に、玄海原発付近に活断層の疑いを指摘されたばかり

なのに、新たに調査しないで、過去の掘削データだけで、活断層が無い

と決めつけたらしい。 

保安院も学者も原子力村住民だからある意味では、当然の結論であろう。

(というか、そういう結論を出してくれる有識者を集めたんだろう。)

 しかし、「敷地内に活断層がない」 なら

安全なのか? と云う問いには全く答えになっていない。

 福島原発の事故は、必ずしも敷地内の断層のズレによって起こった訳では

無く、東北沖はるか数百kmで起こった断層のズレによる大地震で第一撃に

さらされて高圧電線の鉄塔が倒れたことが主要な原因と言われている。

その後の津波によって予備電源も喪失してあの事態に至った。

 「敷地内に活断層がない」 ことなど何の担保にも成らない。

川内など5原発、「敷地内に活断層ない」と結論
 (読売新聞) - 2012年8月10日(金)21:32



  (上の画像は、西日本新聞 - 2011年6月1日 00:17付け )


玄海原発に関する活断層などの【関連記事】

全国の原発 地下の亀裂再点検 
 NHK - 2012年8月11日 14時52分


活断層再点検:「もんじゅ、美浜は現地調査を」 保安院
 毎日新聞 - 2012年08月11日 02時13分


川内など5原発、「敷地内に活断層ない」と結論 
読売新聞 - 2012年8月10日21時32分



「福島震撼、検証玄海」崩壊 安全神話(2)  
 佐賀新聞 - 2011年03月27日

   
     (上記 佐賀新聞記事より)

活断層連動「影響なし」 九電 玄海原発など保安院に報告 佐賀 
 産経新聞Web (佐賀発) - 2012.3.1 02:37


地震動に関する知見を踏まえた活断層の連動に関する報告概要
 九州電力 - 2012年2月29日



こちらは、九州電力の報告書
玄海原子力発電所及び川内原子力発電所 敷地内の断層評価について 
 九州電力株式会社 - 2012年7月3日

 しかし、タイトルを見ていただいたら解るように、単に
 「敷地内に活断層が無かった」と言っているだけで、この報告書に
 おいてさえ玄海原発周辺に活断層が多くあることは認めている。



**************

玄海原発の危険性などの【関連記事】

九電が非公開扱いしていた 玄海原発の M8.1 に 『想定 “上げた” 試算』 公表
 JUNSKY blog 2011 - 2011年6月1日(水)


九電・玄海原発の耐震設計に“人為”ミス? (入力数値を1/10に過小評価)
 JUNSKY blog 2011 - 2011年7月23日(土)


福島第二原発2号機の耐震安全性の解析データに誤り 九電玄海に続き・・・
 JUNSKY blog 2011 - 2011年8月11日(木)


関西電力・高浜原発も! 【耐震性評価のデータ入力 “ミス”?】
 JUNSKY blog 2011 - 2011年8月23日(火)


九州電力の身勝手と安全軽視!(脆性遷移温度関連記事)
 JUNSKY blog 2011 - 2011年11月26日(金)


大元の想定が極めて低く、強度安全率も2倍未満の危険な原発は即時停止を!
 JUNSKY blog 2011 - 2011年12月15日(木)


九電 原発ストレステスト結果 「安全性に十分余裕」(朝日) と無批判な見出し!
 JUNSKY blog 2011 - 2011年12月16日(金)


玄海・川内原発事故シミュレーション (西日本新聞 5/11)
 JUNSKY blog 2012 - 2012年5月11日(金)


佐賀・玄海原発1号機原子炉「58年間健全」:保安院  嘘ばっかり!
 JUNSKY blog 2012 - 2012年8月1日(水)


 これだけの問題が解決されていないのに、「安全」とはよく言えたものだ!


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玄海1号機の耐性評価提出=九電
 (時事通信) - 2012年8月13日(月)16:59
 

 九州電力は13日、定期検査で停止中の玄海原発1号機(佐賀県玄海町)に対するストレステスト(耐性評価)の1次評価結果を、経済産業省原子力安全・保安院に提出した。地震は設計時に想定した揺れ(540ガル)の約1.61倍までの安全性を確認。防水対策を強化し、津波は想定(2.1メートル)の約6倍の13メートル(対策前は6.6メートル)まで安全とした。

 また、電源車の配備などにより、全電源を喪失した場合も約65日間は原子炉の冷却が可能と評価。原子炉に亀裂や腐食はなく、耐震安全性に影響はないという。 



九電、玄海1号安全評価を提出 老朽化問題ない
 西日本新聞 - 2012年8月13日(月) 19:27
 

 九州電力は13日、玄海原発1号機(佐賀県玄海町)の安全評価(ストレステスト)で「十分に安全」とする1次評価結果を経済産業省原子力安全・保安院に提出した。想定以上に老朽化しているとの指摘で遅れていたが問題ないと判断。これで九電管内全6基の評価結果が出そろった。

 評価結果によると、原子炉にある核燃料は、高圧発電機車の配置などの緊急安全対策で、基準地震動(540ガル)の約1・61倍の揺れや、13メートルの津波に耐えられるとした。ただ 地震に対する1・61倍という値は、九電の6基中で1番低い。



九電、全原発の耐性評価終了 玄海1号機「安全」報告
 (朝日新聞) - 2012年8月13日(月)18:41
 

 九州電力は13日、玄海原発(佐賀県玄海町)1号機のストレステスト(耐性評価)の1次評価結果を国に報告した。設計時の想定を上回る地震や津波にあっても「安全性に余裕がある」とした。九電はこれで、保有する玄海、川内(鹿児島県薩摩川内市)両原発の全6基の評価を終えた。

 1975年に運転を始めた玄海1号機は九電の原発では最も古い。昨年5月には、原子炉圧力容器の劣化を示す数値が想定以上に高いことが分かり、老朽化の影響が指摘されている。再稼働の危険性を指摘する意見も専門家から出ているが、九電は「圧力容器の強度は保たれている」という前提で評価を実施した。



玄海原発1号機の耐性検査、1次評価を提出
 (読売新聞) - 2012年8月13日(月)20:45
 

 九州電力は13日、定期検査で停止中の玄海原子力発電所1号機(佐賀県)について、ストレステスト(耐性検査)の1次評価をまとめ、経済産業省原子力安全・保安院に提出した。

 東日本大震災後の安全策強化で、従来の想定の6倍超となる高さ13メートルの津波でも、東京電力福島第一原発事故のような炉心溶融は起きないとした。地震の揺れも、想定の約1・6倍の869ガル(ガルは加速度の単位)まで問題ないとした。

 再稼働の前提となる1次評価提出は26基目。しかし、保安院などによる検討を経て、再稼働にこぎ着けたのは、関西電力大飯原発3、4号機(福井県)だけ。残った24基の耐性検査をどう判断するかは、9月発足の原子力規制委員会に委ねられる。九州電力は「社内の評価作業を終えたので提出した」と説明している。



川内など5原発、「敷地内に活断層ない」と結論
 (読売新聞) - 2012年8月10日(金)21:32
 

 全国の原子力発電所の敷地直下に活断層があるかどうかを調べている経済産業省原子力安全・保安院は10日、専門家の意見聴取会を開き、九州電力川内原発(鹿児島県)など5原発を「敷地内に活断層がない」と、結論付けた。

 川内以外の4原発は九電玄海原発(佐賀県)、四国電力伊方原発(愛媛県)、日本原子力発電東海第二原発(茨城県)、東北電力女川原発(宮城県)。

 聴取会の専門家4人が、各原発の敷地内の断層について
〈1〉原子炉直下で地震を起こす
〈2〉敷地近くの活断層に引きずられて動き、地盤をずらす
〈3〉遠くの地震が影響して地盤をずらす
 ――のいずれかに該当するかどうかを検討。
 過去の掘削調査の結果などから、5原発はどれにも当てはまらないと判断した。

 一方、福井県の関西電力美浜原発と日本原子力研究開発機構「もんじゅ」は〈2〉に、関電高浜原発は〈3〉に、それぞれ該当する可能性があるとして、結論を出すための追加調査を求めた。中部電力浜岡原発(静岡県)と中国電力島根原発(松江市)も〈3〉に該当する。


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【大儲けのJALが「法人税ゼロ」税金で救済された企業の社会的責任は】 DOL 山田厚史 

2012-08-14 12:17:20 | 政治
2012年8月14日(火)

 今日は、ひとつ前の記事でリンクを張ったダイヤモンド・オンラインに

掲載された山田厚史の記事を紹介します。

 インターネットでは5分割になっているものを一挙に掲載します。

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大儲けのJALが「法人税ゼロ」
 税金で救済された企業の社会的責任は

  山田厚史:ダイヤモンド・オンライン - 2012年7月19日(木)08:40
 

 V字型回復した日本航空(JAL)の「納税問題」が波紋を広げている。今年3月期の純利益は1866億円。世界の航空会社が集まる国際航空輸送協会(IATA)全体の約30%の利益をたった1社で稼ぎだした計算になる。しかも本来なら764億円の法人税を納めなければならない。それが納税はゼロ。儲けは過去の赤字で相殺された、というのだ。


繰越欠損金の効用

 高収益をバネにJALは今秋にも東京証券取引所に上場する。「日の丸航空復活」を思わせる快挙とも見えるが、税金で救済された企業が元気になっても税金は払わずに済む、これってどこかおかしくないか。払わずに済むのは昨年度分だけでない。今年も来年も、またその先も、9年間JALは納税を免れる。

 昨年の税制改正で、欠損金の繰り越しは9年間に延長された(それまでは7年間)。その恩恵を受け9年間でJALは推定4000億円の納税額を自らのキャッシュフローに取り込むことができる。新鋭機B787を30機くらい買える金額が手元に残るというわけだ。
ライバル会社のANAは真っ青だ。

「企業努力で正常な経営を保ってきた会社より、つぶれて身軽になった会社が儲かり、税金まで免除されるのでは、対等な競争にならない」(ANA企画部)。

 国会は消費税の是非を巡り政局がらみの動きになっている。ところがJALは雲の上で視界良好の免税飛行を満喫しているのだ。

 植木社長は「繰越欠損金はルールとして制定されており、JAL特有の支援ではない。業績だけ見て不公平とする議論は受け入れられない」と税金を払わないことは当然のこと、という姿勢だ

「欠損金の繰り越し」は諸外国でも制度化されている。植木社長の言うとおりJALだけに与えられた救済措置でもない。だが制度として存在する「欠損の繰り越し」は、自らの経営努力によって黒字になった企業に認められるご褒美のようなものだ。

 JALのように国策で救済され、税金と企業再生機構という特段の措置によって再建された企業を想定した制度ではない。


運輸官僚たちの責任

 一昨年から始まった救済劇を振り返ってみよう。会社更生法の申請が2010年1月。その後の資産査定などを経て、JALの債務超過は1兆円を超えた。

 不採算路線、世間相場より高い人件費、それに加えて年金の積み立て不足、航空機評価額の過大計上など放漫経営が次々に明らかになった。競争相手のANAに比べ、格段に悪い経営内容だった。

 国境を越えた統廃合が進む世界の航空業界は、倒産したエアラインに甘くはない。たちまちにしてライバル企業に吸収されるのが普通だ。国土交通省は「JAL・ANA2社体制存続」という方針を掲げ救済に乗り出す。当時の前原誠司国土交通相は「法的措置を取らない」と自力再生を強調。しかし経営内容が明らかになるにつれ「倒産やむなし」へと傾いた。それでも身売りやANAとの合併という荒療治は避け、会社更生法で再建する道を選んだ。

 その結果、経営内容を全く知らされていなかった株主まで「株主責任」をとらされ株券は無価値になった。金融機関は総額5215億円の債権放棄に応じ預金者のカネがどぶに捨てられた。従業員は1万6000人が解雇され、今も裁判で争っている人もいる。地方空港が頼りにしていた路線の4分の1が廃止された。

 倒産の責任者は歴代の経営者だが、実際に経営してきたのは運輸官僚である。運輸省(現国土交通省)航空局の時代から、航空官僚がJALの実質的経営者だった。

 銀行業行政が護送船団方式といわれた時代、大蔵省銀行局は銀行の経営に対して絶大な影響力を持っていた。預金金利、貸し出しの基準金利、貸付額、店舗などすべて官僚が仕切り、銀行は業務を執行する事業体に過ぎなかった。同じ関係が運輸省と航空会社にも当てはまる。路線、運賃、機種、安全管理すべて官僚が決め、航空会社は飛行機を飛ばす事業体に過ぎない。歴代社長は運輸省との連絡役である企画畑か、従業員を管理する労務畑から出た。

 JALの倒産も、責任は国土交通省航空局にある。その「戦犯」が前原大臣を押し立てJAL救済の絵を描いたのが今回の姿である。

「JAL・ANA2社体制」は運輸省時代からの遺物である。航空自由化が進み、欧州でも一国一社が崩れ始めている世界で、官僚統制の重荷を引きずる日本の航空産業において、果たして2社生き残れるか、大きな疑問となっている。

 JALが企業再生支援機構によって一時国有化されたら、破綻処理の出口は、「買い手を捜すこと」が当然の手順だった。となれば真っ先に手を挙げるのはANAだったろう。その手順を取らず再上場させた背後に、「2社体制」の方が航空会社を互いに牽制させながら主導権を握れるという国土交通省の隠れた意図が読み取れる。また、JALの消滅は航空官僚の失敗を認めることになるからでもある。

 本来なら行政をしくじった航空官僚こそリストラされるべきなのに、「2社体制温存」で焼け太りしたのが実態だ。

 責任を押しつけられたのは個人投資家、預金者、従業員である。

 そのうえさらに税金が免除され、JALは強くなる。「免税4000億円のプレゼント」が実現すれば、ANAと力関係は逆転する。

 ANAも航空官僚の支配下にあったが、国策として生まれたJALに比べれば、民間色が濃く独立性も高かった。債務超過にならなかったのはそれなりの経営努力があったからだ。ところが今や逆転。JALは国策で5215億円も借金が棒引きされた。経営を圧迫する金利負担が軽くなった。しかも過去の放漫経営が生んだ1兆円を超える赤字が「繰越欠損金」として納税免除の財源になる。国交省は新路線を認可し、JALは新鋭のB787を45機も発注して攻勢に出る。


かつての闇が今は宝の山

 JALの経営を分析している会計専門家・細野祐二氏によると「粉飾会計と紙一重である不明朗な経理処理が、いまや宝の山になっている」と指摘する。それは密かに行ってきた「機材関連報償費」という日本の航空業界にだけある不透明な手口だ。

 航空機には定価がない。JALがボーイング社からB747を買う時、例えば100億円の取引価格を帳簿には150億円と記載し、割り引かれた50億円を「機材関連報償費」として収入に計上する。その年の収入は膨らみ、見せかけの利益が大きくなる。一方で、その分だけ資産(この場合は航空機)が水増し計上される。

 国土交通省も知っていたことで「好ましい会計処理ではなかったので06年から取りやめさせた」(航空局審議官)という。JALが破綻したときこうした水増し計上が表面化して膨大な欠損金が生まれた。こうした不透明な会計が「繰越欠損金」に隠れているが、JALは中身の公表を拒んでいる。

 水増し計上は、リース会社を間に入れて社外に損金をプールするなど複雑な会計処理が行われてきた。こうした操作が負の資産となり経営内部に隠蔽され、ついに破綻につながったのである。闇の処理が、いまや税を免れる宝の山になっている、と細野氏は指摘する。

 政府は消費税増税を進めながら法人税を安くしようとしている。そんな時に、その法人税さえ払わないのが、国策で救済されたJALという構図だ。4000億円もの納税を免れる負の財源は、運輸官僚とかつてのJAL経営者の間で密かに進められた不透明な処理にある、としたら世間は納得するだろうか。

 増税の旗を振る自民党でも、国土交通部会航空問題プロジェクトチームが動き始めた。早朝の勉強会が何度か開かれ「JALの救済は国策として行われたことであって、自分の力で蘇ったと思っては困る。利益が出たら、まず世の中にお返しするのが筋だ」「地方空港を作ろうと汗をかいた関係者への配慮もなく、不採算路線をバッサリ切って、自分たちは大儲けして再上場というのは許しがたい」などという意見が噴出した。

 JALは東京証券取引所に再上場への審査を求めているが、自民党の13日の会合では「再上場に反対する決議」がなされた。破綻後のJALは、企業再生支援機構だけでなく関係する民間企業も新株を持ったが、当事者だけが重要情報を持っていたのは「インサイダー取引」が疑われる、というのだ。

 こうした動きの背景には、「法律に従えば免税は当然」というJAL経営陣への反発がある。民主党内部にも、問題視する声が広がっている。

 京セラ名誉会長の稲盛和夫氏が乗りだし、経営哲学を一からつくり直したはずのJALだが、世間の目は厳しい。JALの内部にも「こうなったら税金を払うしかない」という声も上がり始めた。

 稲盛氏が説く「利他の精神」と税金免除をどう折り合わすか。大企業に甘い税制を考え直す機会でもある。




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