主要マスメディアやTwitter等SNSで、主として『検察の暴走』という側面から
この判決を描いているのに対して、【河北新報】は、事件の本質を改めて問う
論調を掲げている。 こういう冷静な社説は、ほぼ唯一の存在だと思う。
多くのマスメディアは、検察審査会や強制起訴のあり方を問題にし、一部は
検察審査会に恣意的な“証拠”を示した、検察の責任を問うている。
この間、この事件だけではなく、数々の「冤罪事件」で警察や検察の暴走が
露呈していただけに、そういう側面からの批判は当然である。
しかし、一方で政治家による資金管理団体を使った違法行為を免罪するわけ
には行かない。 Twitter上で、かまびすしく「小沢無罪」を叫んでいた人々は、
『検察の暴走』ばかりに目が行っていたように見受けられる。
これに対して河北新報の本日付の社説は、次のようにタイトルを掲げている。
陸山会事件/問われるべきは法の不備だ
河北新報・社説 - 2012年11月13日(火)
その一部を抜書きすると、以下のようである。
【4億円という巨額の資金をめぐる収支報告書の内容について、政治家が十分に知らなかったなどということは一般国民の感覚では信じ難い。そうした判断に沿って起訴を求めたのは、何ら不思議なことではない。】
【検察官が独占する起訴の権限を、一部の事件で市民に委ねることは裁判員制度と並ぶ司法制度改革の柱だ。その道を閉ざしたり、狭めたりすることがあってはならない。】
今回の裁判と判決は、国民の素朴な疑問には何も答えず、重箱の隅をつつく
手続き論ばかりに終始していたように思う。
手続きの合法性を問えば、現在のザル法では有罪にできない可能性が高かった。
検察官役の弁護士は、もっと国民の根本的な疑問に沿った論陣を張り、小沢氏の
政治手法の実態を暴露するべきであった。
論戦の組み立方が最初から誤っていたのではないだろうか?
この判決から、一部メディアに「検察審査会」制度と「強制起訴」制度そのものに
疑問を呈する傾向があるが、不足する処は改善しつつ、もっと良いものにすること
こそが求められているのであって、廃止などは本末転倒の論議である。
それと、殺人事件や強盗事件ではなく、こういう事件こそ「裁判員裁判」で
審議されるべきではないだろうか!
これは「裁判員裁判」施行前からの私の持論である。
****************
小沢氏に無罪判決 指定弁護士、立証活動に限界
(産経新聞) - 2012年11月13日(火)08:05
指定弁護士は多大な時間と労力を注いできたが、検察のような組織力がない中で、民意に応えるだけの捜査を行うためには現行の支援態勢では不十分と言わざるを得ない。
「政治とカネ」は来る総選挙の争点にもなりうる国民の一大関心事。政治資金の真の透明化のためには政治家の監督責任強化や連座制の導入など、規正法の抜本的見直しが求められる。
小沢氏再び無罪 検察審制度の見直しは早計だ
(読売新聞) - 2012年11月13日(火)01:32
判決は、土地購入原資として小沢氏が提供した4億円が簿外処理された事実を認めた。陸山会による政治資金のずさんな会計処理を指摘したものだ。
しかし、公開の法廷で解明を求めた検察審の判断には、もっともな面があった。政治資金疑惑に対し、小沢氏が合理的な説明をしなかったためだ。
検察審制度には裁判員制度と同様、刑事司法に国民の視点を反映させる意義がある。強制起訴は6件にとどまる。まずは事例を積み重ねることが大切だろう。現時点で見直すのは早計である。
産経新聞、読売新聞が、「検察審査会」制度などに対して改善を求めつつも
肯定していることは、私には意外ではあったが歓迎すべき傾向である。
一方で、東京新聞・社説は、「検察の暴走」が中心テーマとなっている。
小沢代表無罪 検察の“闇”を調べよ
東京新聞・社説 - 2012年11月13日(火)
*******************************************
(左のアイコンをクリックして
もらえたら嬉しいです)
*******************************************
陸山会事件/問われるべきは法の不備だ
河北新報・社説 - 2012年11月13日(火)
二審判決もやはり、国民の視点からは納得し難い内容になった。秘書に任せっきりにしていれば当の政治家の責任が問われないというのは、法律の欠陥以外の何物でもない。
資金管理団体「陸山会」の土地取引をめぐり、政治資金規正法違反(収支報告書虚偽記載)の罪で強制起訴された「国民の生活が第一」代表の小沢一郎被告(70)の控訴審判決で、東京高裁が12日、東京地裁に続き無罪を言い渡した。
裁判は大きなヤマ場を越えたことになるが、問題は何も解決していない。国会で政治資金規正法などを改正して「連座制」の導入などに踏み出さない限り、不透明な政治資金の根絶は無理だ。
事件の発端は、秘書の寮を建てるため2004年に陸山会が行った土地購入だった。小沢氏が4億円の資金を陸山会に貸し付けた。だが、土地代金の支出が同年の収支報告書に記載されず、翌05年分に先送りされていた。
また、小沢氏が出した4億円はなぜか報告書に記載されず、簿外処理されていた。
虚偽記載の事実は高裁も認定しているが、要は小沢氏の関与の有無。東京地裁は04年の報告書に記載しないことを当時の秘書から報告されて了承したものの、違法性を認識していなかったと無罪にした。
高裁は秘書による意図的な虚偽記載の一部を否定したほか、小沢氏との共謀はなかったと結論付けた。
しかし、秘書ばかり罪に問われることがまかり通っては、「政治とカネ」の問題の解決はとても望めない。国会や各政党には政治家に甘すぎるお手盛りの法律を正し、結果責任を厳しく追及できるようにすることが迫られている。
この事件では当初、政治資金管理団体による不動産取得や、4億円の「原資」が何だったのかに疑問が呈された。まだ遅くはないから、国会はその解明にも取り組むべきだ。
検察が不起訴にした後、検察審査会の議決で強制起訴されたことも今回の事件の大きな特徴だ。
結果は一、二審とも無罪になったが、審査会はその職責を果たしたのではないだろうか。
4億円という巨額の資金をめぐる収支報告書の内容について、政治家が十分に知らなかったなどということは一般国民の感覚では信じ難い。そうした判断に沿って起訴を求めたのは、何ら不思議なことではない。
強制起訴された事件の立証はそもそも難しいわけだから、制度を整備することこそ必要だろう。場合によっては追加捜査が必要になり、検察官役になる指定弁護士の負担は大きい。その数や報酬も含め、検察審査会や強制起訴制度の改善を進めるべきだ。
検察官が独占する起訴の権限を、一部の事件で市民に委ねることは裁判員制度と並ぶ司法制度改革の柱だ。その道を閉ざしたり、狭めたりすることがあってはならない。
河北新報・社説 - 2012年11月13日火曜日
小沢氏に無罪判決 指定弁護士、立証活動に限界
(産経新聞) - 2012年11月13日(火)08:05
検察審査会の議決という「民意」で始まった小沢一郎氏の公判は、2審も無罪となった。検審が、現職の政治家に被告人としての負担を強いても法廷に立たせる選択をしたのは、不可解な会計処理の「真相解明」を求めたからにほかならない。だが1年余の裁判でも核心部分の解明に至らず、強制起訴制度の課題がより鮮明になったといえる。
特に、わずか1回の審理で結審した控訴審は、指定弁護士の立証活動の限界を示した。1審判決は、元秘書と小沢氏の間の「報告・了承」を認めるなど、指定弁護士側の主張をくみながらも「故意の立証が不十分」として無罪を言い渡した。
指定弁護士側は1審後、小沢氏の関与を示す「新証拠」探しに奔走したが、関係者に聴取を断られるなど、困難を極めた。事件以前に勤務していた元秘書2人の調書を作成したが、東京高裁はこの調書を含む取り調べ請求をすべて退けた。
指定弁護士は多大な時間と労力を注いできたが、検察のような組織力がない中で、民意に応えるだけの捜査を行うためには現行の支援態勢では不十分と言わざるを得ない。
一方で、政治資金規正法の限界も浮き彫りとなった。規正法は、政治資金収支報告書に真実を記載する義務を会計責任者に負わせている。政治家に刑事責任が及ぶのは会計責任者との共謀が認められた場合など限定的だが、共謀関係の捜査は物証が少ないため簡単ではない。
これまで現職国会議員が逮捕、起訴されたのは、平成15年の坂井隆憲元衆院議員のみだ。
「政治とカネ」は来る総選挙の争点にもなりうる国民の一大関心事。政治資金の真の透明化のためには政治家の監督責任強化や連座制の導入など、規正法の抜本的見直しが求められる。
(産経新聞 陸山会公判取材班)
小沢氏再び無罪 検察審制度の見直しは早計だ
(読売新聞) - 2012年11月13日(火)01:32
国民の生活が第一の小沢一郎代表が、再び無罪となった。
小沢氏の資金管理団体「陸山会」の土地取引を巡る政治資金規正法違反事件で、東京高裁は1審の無罪判決を支持し、検察官役の指定弁護士の控訴を棄却した。
判決は、土地購入原資として小沢氏が提供した4億円が簿外処理された事実を認めた。陸山会による政治資金のずさんな会計処理を指摘したものだ。
その一方で、判決は、小沢氏が元秘書から取引の経緯について詳細な報告を受けていなかった、と認定し、「政治資金収支報告書の記載を適法と認識した可能性がある」と結論づけた。
指定弁護士は上告の可否を検討するという。だが、上告は憲法違反や判例違反がなければ認められず、小沢氏の無罪が確定する見通しが強まったと言えよう。
この裁判は、一般市民で構成される検察審査会の議決に基づき、政治家が強制起訴された初のケースだ。2度の無罪判決で、制度の見直し論議が再燃するだろう。
しかし、公開の法廷で解明を求めた検察審の判断には、もっともな面があった。政治資金疑惑に対し、小沢氏が合理的な説明をしなかったためだ。
政治資金規正法は、自由で公正な政治活動を実現するため、政治資金の公開制度を定めている。政党助成法の施行で、政治資金に国民の税金が投入されてからは、資金の流れの透明性を確保する要請が高まっている。
陸山会が土地取引で億円単位の巨額の金を動かしながら、収支報告書に事実と異なる記載をしていたのは、規正法の趣旨に反する行為だったと言える。
検察審制度には裁判員制度と同様、刑事司法に国民の視点を反映させる意義がある。強制起訴は6件にとどまる。まずは事例を積み重ねることが大切だろう。現時点で見直すのは早計である。
ただ、限られた証拠での立証を強いられる指定弁護士の負担の重さなどを指摘する声がある。制度の改善に向けた検証は必要だ。
今回の裁判で、批判されるべきは、検察審に虚偽の捜査報告書を提出し、起訴議決に疑念を抱かせた検察である。検察官による供述の誘導や強制も判明した。検察は猛省しなければならない。
検察は虚偽報告書を作成した当時の検察官らを不起訴とした。この処分への不服申し立てが市民団体から検察審に出されている。検察審は厳正に審査すべきだ。
小沢代表無罪 検察の“闇”を調べよ
東京新聞・社説 - 2012年11月13日(火)
「残念、責任感じる」=判決批判も―会見で指定弁護士
(時事通信) - 2012年11月12日(月)13:37
「思った以上の判決」=上告断念求める―小沢氏弁護団
(時事通信) - 2012年11月12日(月)13:04
*******************************************
(左のアイコンをクリックして
もらえたら嬉しいです)
*******************************************