芥川賞作家 目取真俊逮捕される
侘助 四月一日午前9時半ごろ、名護市辺野古のアメリカ軍基地、キャンプシュワブに向けて海上から抗議活動を仲間と行っていた作家の目取真俊さんが、基地周辺の立ち入り禁止区域に許可なく入ったとしてアメリカ軍に拘束され、海上保安部に引き渡され、日米地位協定に伴う「刑事特別法」違反の疑いで逮捕された。
呑助 地位協定とは何なんですか。
侘助 日米安全保障条約に基づいて、在日米軍の権限などを定めているんだ。 米軍基地内での管理権や基地の外での警察権も認めているんだ。米兵らの犯罪について日米両国の裁判権が競合する場合、第一次裁判権は公務執行中の場合は米軍が、その他は日本側が持つことなどを規定していると日本の外務省は説明している。
呑助 日本国内の米軍基地に属する米兵が基地の外で日本人に犯した犯罪に対して日本は裁判権がないんですか。
侘助 いや、公務執行中の場合は米軍が第一次裁判権を持つという。単に米兵が夜、平服で酒を飲みに基地から出た場合、犯した犯罪の裁判権は日本側にあるということのようだ。
呑助 公務として自動車を運転中、人身事故を起こし、車にぶつかった人が死んだ場合でも日本の警察は事故を起こした米兵を捕まえることができないんですか。
侘助 その時、日本の警察が事故を起こした米兵を捕まえたとしても、公務中の事故であるなら、日本の裁判官はその米兵を裁くことはできないということだ。米兵が私用で基地の外に出て人身事故を起こした場合、基地の中に逃げ込んでしまえば、日本の警察は米軍基地に入ることはできないようだよ。
呑助 中学の時、明治政府は諸外国と結んだ条約が治外法権だったため、条約改正に苦労したという話を習ったような記憶がありますが、日本にいる米兵は治外法権なんですか。
侘助 だから、沖縄のタクシー運転手さんは米兵が運転する車を見ると決して近づかないという話を聞いたことがあるよ。
呑助 沖縄の米兵は江戸時代の武士のような存在なんですね。
侘助 、沖縄に限らず、日本国中どこにいっても米兵である限り、特権を持った人間なのかもしれないな。
呑助 日本はアメリカの植民地なんですかね。
侘助 思いやり予算という基地維持費用を日本人が負担した上に米兵に特権を与えている。日本政府の役人たちや自公政権の政治家たちは日本人なのかね。日本人の安全を考えない政府というのは本当に日本人の政府なのか、疑問に思うね。
呑助 今からでは二〇年近くになりますかね。沖縄に来た米兵が日本人の女の子に暴行した事件がありましたね。その時、週刊誌で読んだ記憶があるんですよ。アメリカの貧しい黒人兵が言っているという話を読みましたよ。日本に行けば「やりたい放題だ」とそう思って沖縄に来たとね。
侘助 そういう噂が新兵になった米兵の中にあるんだろうね。沖縄では、いや日本では米兵に特権があるんだという意識を持っているのかもしれないな。米軍の指揮官たちの間にも米兵の士気を削ぐようなことはできないと。これから人殺しの戦場に送り出す米兵に婦女子への暴行や交通事故等の事故で罰することはできないという気持ちなんだろうね。
呑助 きっとそうですよ。
侘助 作家の目取真俊さんが拘束されたのも、米兵にとっては遊び半分で新基地建設に反対する日本人をからかったぐらいの気持ちなのかもしれない。こんな米兵の存在を許す日本政府というのは独立国としての誇りをもった政府なのだろうかね。
呑助 ほんとうですよ。
侘助 いつだったか、「ニュウズウィーク」にオバマと安倍晋三が車に乗った写真が出ていた。安倍は主人に仕える代官のようだった。