醸楽庵(じょうらくあん)だより 

主に芭蕉の俳句、紀行文の鑑賞、お酒、蔵元の話、政治、社会問題、短編小説、文学批評など

醸楽庵だより  266号   聖海(白井一道)

2016-04-16 15:54:50 | 随筆・小説

 落選運動を支援する会


馳文科省大臣からの回答がありました。
 2016年1月31日  トピックス  文部科学大臣, 石川1区, 衆議院, 馳浩
国から約11億円の補助金を受けていた渋谷工業株式会社から金958万円の献金を受けていた馳文部大臣に1月13日付で公開質問状を送りました。
それに対して1月27日付で回答がありました。それを公表します。
回答があったことはありましたが、「挙げ足」を取られる「不安」からか
極めて形式的でした。教育を所管する大臣ですから
このような形式的な回答では子供の教育上も悪しき見本になる
かも知れないという危惧を感じます。
政治資金オンブズマン
共同代表 上脇博之様
回答書(公開質問状)
平成28年1月27日
衆議院議員馳浩事務所
冠省 貴殿からの平成28年1月13日付公開質問状に対し下記のとおり回答します。


1(質問事項第1及び第3)
ご質問の会社からの政治活動に関する寄付につきましては、すでに記者会見などで説明しているところであり、ご指摘の会社が一定の補助金の交付決定を受けた日から一定の期間の政治活動に関する寄付については誤解を招かぬように返金をしております。
なお、補助金の交付決定の有無及び内容などは政治寄付を受けた当時全く知りませんでした。今回の一連の報道で知りました。なお、補助金の内容などの詳細はご指摘の会社にご確認下さい。

2(質問事項第2)
当然のことながら「口利き」などありません。

3(質問事項第4)
平成28年に公表される平成27年分の収支報告の要旨をご覧下さい。


以上

醸楽庵だより  265号   聖海(白井一道)

2016-04-16 15:42:27 | 随筆・小説

 芭蕉の句 「辛崎(からさき)の松は花より朧(おぼろ)にて」を鑑賞する


侘助 芭蕉の『野ざらし紀行』の中に「辛崎(からさき)の松は花より朧(おぼろ)にて」という句は、どこがいいのかな。
呑助 ワビちゃんに分からないものを手前が分かるはずがないじゃないですか。でも、このような句を何というですか。名所を詠んだ句なんじゃないですか。
侘助 名勝俳句というのかな。唐崎の松は広重が近江八景の一つとして描いているから、名勝の一つなんだろうね。また唐崎が名勝になった背景には景色が綺麗だっただけではなく、大昔の歌人たちが歌に詠んだから名勝になったんだろうね。そのような名勝地を歌枕ともいうようだ。
呑助 唐崎を詠んだどんな歌があるんですか。
侘助 『万葉集』に柿本人麻呂が詠んだ歌がある。
「さざなみの志賀の唐崎幸くあれど大宮人の船待ちかねつ」
『古今集』には紀貫之が詠んだ歌が載っている。「唐崎の松は扇の要にて 漕ぎ行く船は墨絵なりけり」
呑助 人麻呂の歌は何を詠んでいるのですかね。
侘助 志賀の唐崎は、昔と変わらないが(昔ここを行き来したであろう)大宮人の船にはもう出会えなくなってしまった。無常感を詠んだのかな。
呑助 大津に都があったことを偲んだ歌なんですかね。
侘助 そうなんじゃないかと思うけれどね。
呑助 紀貫之の歌は分かりますね。唐崎は琵琶湖の扇の要のような場所なんですね。琵琶湖を行き来する舟が墨絵のように見えるというでしょうかね。貫之の時代にはもう松があったんですね。その松は現在でもあるんでしょう。凄いですね。
侘助 芭蕉は貞享二年、42歳の時に唐崎を訪ね、「辛崎(からさき)の松は花より朧(おぼろ)にて」と唐崎の松を詠んでいる。
呑助 芭蕉さんの詠んだ句は唐崎の松は桜の花より松の方が綺麗ですねと、いうことなんですか。
侘助 芭蕉は比べることを嫌ったようなんだ。だから唐崎の松は桜の花が咲いたころより朧に見える今頃が一段と見栄えがいいなぁー。このような意味らしいよ。
呑助 なるほどね。桜が咲く頃より松がお朧に見える今の方が綺麗だねと、いうことなんですね。
侘助 それだけの句なんじゃないかな。
呑助 唐崎の松の見ごろを見つけたということなんですかね。
侘助 あっ、そうなんだ。だから、この句はいいのかもしれないな。句としては「朧にて」の「にて」が句としてどうなのかなと、思うんだ。
呑助 手前だったら、「朧かな」としたいような気がしますがね。
侘助 「かな」としなかった理由を芭蕉は話している。『去来抄』の中で芭蕉は「哉といへば、句切迫れば、にてとは侍る」と言っている。
呑助 全然、分かりませんね。「哉といへば、句切迫る」とは、どういうことですか。
侘助 「哉」というと「切れ」が強くなってしまうから「にて」にしたということのようなんだ。芭蕉は「ただ花より松の朧にて面白かりしのみなり」と述べている。ただ「朧にて」詩趣があるなぁーと感じただけだと、芭蕉は言った。
呑助 今頃の唐崎の松は朧に見えていいもんだなと、いうことですか。
侘助 唐崎の松とは、どんなものなんだろうと想像を逞しくして琵琶湖の湖畔を訪ねた。思っていたよりいいじゃないか。このような唐崎の松を実際に見た時の感動を詠んだのかもしれない。
呑助 ほんのちょっとした気持ちを詠むものが俳句なんですかね。
侘助 そうなのかもしれない。移りゆく季節の中で、今の季節に感じたことを五七五の短い言葉で表現したものが俳句なのかもしれないなぁー。
呑助 日本は四季のある国ですからね。
侘助 俳句は日本の風土が生んだ文芸なんだろうな。