鴨着く島

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楠隼中高は男女共学化へ

2023-06-15 21:07:40 | おおすみの風景
肝属郡肝付町に2015年に開校した全寮制の男子校「楠隼(なんしゅん)中高校」が2026年度から女子の入学を受け入れる、つまり男女共学の中高一貫校として再出発するらしい。

現鹿児島県知事の塩田氏がそう表明した。塩田氏は先年の知事選挙でそうマニュアルに掲げていたという。

楠隼(なんしゅん)中高校は県立でありながら生徒を全国から募り、しかも全寮制中高一貫を採用しており、全国的にも稀有な学校である。

しかし県立なら県民の子弟を対象とする学校というのが普通だが、全国から集めた生徒に対して県の職員である県立高校の教諭が指導に当たるというので、私などは開校当初から不可解に思っていた。

肝付町内之浦にある文部科学省の宇宙観測所との連携をカリキュラムに入れるというのが、全国からの生徒募集の名分になったようだが、果たしてその点だけで県立高校が全国から生徒を集めることが可能なのか未だに首を傾げざるを得ないでいる。

この学校の前身は県立高山高校(もっと前は高山高等女学校)で、2015年に廃校予定となっていたのを、当時の伊藤県知事の「ツルの一声」で存続が決まり、今見るようなシステムの中高一貫校になった。

伊藤知事は自身の出身校のラサール学園(中高一貫校)をモデルに考えていた節があり、大隅地方の生徒の減少による県立高校の廃校を救うため、地元の生徒が集まらないのなら全国から生徒を募集すればよい、というアイデアに至ったのだろう。

要するに「大隅のラサール」を目指したのではないか。ラサール学園は東大入学者や医学部入学生の極めて多い学校で、そのため生徒は全国からやって来る。だが、ラサールは私立である。私立なら全国の生徒を対象に受け入れて何の問題もない。

もしかしたら伊藤元知事はラサールのようなハイレベルの私立の中高一貫校に対して、大隅に分校を出すことを打診したが断られ、結局県立でということになったのかもしれない。

その経緯はよく分からないが、とにかく高山高校の敷地に約50億という巨額を投入して建設された全寮制の中高一貫校は2015年度に始まった。

当初はそれなりに県内外から生徒が集まり、6年後の中学校の部の1期生が卒業した2020年には東大への入学者が数名出るほどになった。

しかし中学校180名、高校270名の定員に対して中学校は9割方埋まっているが、高校は高校単独での入学者がほぼゼロの状態が続いているという(2023年度は1名のみ)。

今回塩田知事は中高一貫のシステムは存続させ、中学校からの持ち上がりの生徒だけに限定するらしい。さらに女子の入学を進めるともいう。また必ずしも全寮制にはこだわらないようだ。

そうなると地元の通学圏の生徒が増えることになりそうだ。だが、ただでさえ少子化によって生徒が減少して行く地方にあって、地元の中学校との間で生徒の奪い合いが起こりはせぬかと心配になる。

杞憂ならそれに越したことはないが、私は50億もの巨額を投じることができたのなら、そこに「県立短大」を誘致できなかったかと今さらながらだが思うのだ。

大隅半島には高校以上の教育機関としては鹿屋体育大学があるが、果たして地元の高卒生の何人が通っているのか、ほとんど話題に出ないレベルでしかない。

短大を含め専門学校や普通学部系の大学に行くとなると、高卒生のほとんどは大隅を離れるのが当たり前になっている。親の負担は馬鹿にならない。地元に短大の一つでもあれば、その学部にもよるが100人くらいの単位で地元に残って勉学することが可能だろうに。