気象情報で「春一番」というのがあり、その定義は2月4日前後の立春から春の彼岸(中日は3月20前後)までの間に吹く南寄りの暖かい風のことである。
長く寒くまた暗い冬の陰鬱な天候を吹き払ってくれるような響きのある言葉で、特に雪の多い北日本に住む人にとっては季節の変わり目を肌で感じるうれしい風だろう。
関東でも雪こそ降らないが、空っ風が日に日に寒さを増して時折りはみぞれが降って人々を戸外から家の中へと追いやる。長い冬将軍が2か月ほども居座るから春一番は身体も心も解放してくれる有難い風だ。
暖かいはずの九州地方でも、春一番は大きな話題になる。暖かさに身体が馴れてしまうと、最低気温が5℃くらいでも非常に寒く感じるものだ。
だから春一番が吹き最低気温が10℃を越えようものなら、朝早く庭に出るのに何のためらいもなくなる。
今朝はどうも最低気温が25℃を下回ったらしい。
朝の6時前、日が昇り始めるころに愛犬ウメの散歩に出ることが多いが、今朝は戸外に出てもムッとするような熱気はなく、半袖の腕の熱感覚が明らかに違っていた。
ひんやりしていたのだ。おまけに北寄りの東風がほど良く吹いている。ウメもやや元気そうに見える。うれしそうにも見える。
とある畑の近くを通ったら、昨日耕運したばかりなのだろうほっこりとした畑土が見渡す限り続き、ウメはその畑に何を嗅ぎ取ったのか鼻をひくつかせて動こうとしない。
草むらの中に鼻を突っ込んで嗅ぎまわるのは良くあることだが、広い畑に何を嗅ぎ取ったのか、中に入ろうとするのを慌てて引き留めた。
耕運の前に鋤き込んだ堆肥に交じっている鶏糞か何かの匂いだろうか。ウメにはウメなりの感覚(嗅覚)がある。
私は私なりに秋の到来を今朝の涼しさに感じた。
ようやく熱帯夜と猛暑日に苛まされた長い夏の終わり、そして秋の始まりを今朝の風に感じた。
「秋一番」という気象用語は無いのだが、自分にとってはまさに「秋一番」だ。もし「春一番」の定義にならうとすれば、「立秋から秋分の日までに吹く北寄りの風」となろうか。
ようやく今年の酷熱の長い夏から解放されるようだ。
ただし、残念ながらこの有難い風は台風10号がもたらしたもので、台風一過がどうなるかは分からない。
台風10号の進路予測はかなり南寄りになり、明後日には鹿児島県本土に上陸する可能性も出て来た。
今年の夏の酷暑と少雨を解消するのは台風頼みになる――と自分は見立てていたのだが、どうやら当たりそうだ。