「コーマは一日にしてならず」(巨大帝国ローマは一日で出来上がったのではない)が本当の成句だが、このローマを「ウクライナ停戦」に読み替えると、アメリカ新大統領のトランプが「わたしが大統領になったら24時間で終わらせる」と豪語していたことへの揶揄になる。
この豪語は大統領選挙の真最中にしばしば口から出ていたのだが、ところがトランプにとって想定外なことが起きている。
それは北朝鮮兵の参戦である。
去年の12月から始まった北朝鮮兵のロシアへの入国と西部戦線への投入は、もちろんロシアのプーチンと北朝鮮の金正恩との間で交わされた合意に基づくものだが、新聞報道などによると、北朝鮮兵の参戦(及び弾薬の提供)を取引材料として金正恩側が経済援助と軍事技術の近代化(ドローン攻撃への対処法など)を目論んだのではないかという見方が多い。
プーチン側としてもこの2月で3年になるウクライナ侵攻が泥沼化し、多くのロシア兵を犠牲にしているので、「背に腹は換えられない」ということわざ通り、取引に応じたのだろう。
それにしてもこのウクライナ戦争、局地的な戦争として3年という期間は長過ぎる。
プーチンは最初ウクライナ周辺での「大規模軍事演習」というペテン的な触れ込みで始めた侵攻によって、当時まだ大統領になって1年か2年目で喜劇俳優上がりのゼレンスキー大統領など今度のシリア大統領アサドが亡命したように、すぐに国外逃亡するだろうと読んでいたのだろうが、あに計らんやであった。
それこそ「ウクライナなど一日でお手上げにする」はずだったのが、全くの裏目に出てしまったわけだ。
「民主的な選挙」によって選ばれたゼレンスキ―大統領は、それまで政治経験も行政経験も司法経験も経たことはない。この意味では1期目のトランプ大統領に似ている。
われわれ日本人の多くも1期目のトランプを甘く見ていたように、ロシアのプーチンもゼレンスキ―を見下していたのだろう。
ゼレンスキ―自身の亡命か、内乱による国外逃亡か、どちらにしてもゼレンスキ―政権など「フェイクだ」くらいに見ていたのではないか。
それが何と3年も続いている。仮にもしロシアがゼレンスキ―大統領に直接手を下そうものなら世界の民主勢力は黙っていないだろうし、ロシア国内の反プーチン派ものろしの火を上げるだろう。
あの戦争請負屋のプリゴジンや反プーチン派の巨頭だったナワリヌイ氏は抹殺されてしまった。だからこそさらに反プーチン派の火種はくすぶり続けているはずである。
ロシアの次の大統領選挙がいつなのかは知らないが、前回は明らかにプーチン政権による選挙干渉が行われていた。しかしそのことを含めてロシア国内での反プーチン派は多数派になりつつあるのではと期待する。
しかし「戦時中なので、選挙は行わない。戦時内閣は超法規的な存在だから」などという理由で民主的な選挙を行わないとなれば、反プーチン勢力はプーチン降ろしへの実力行使に出るかもしれない。
そのことは憶測にすぎないが、火種が常にくすぶっているのは事実だろう。
さてアメリカ大統領のトランプは「ウクライナ戦争など24時間のうちに終わらせて見せる」ことがおそらくプーチンの拒否によって現実味が無くなったらしく、今度は、
「石油の価格を下げるようアラブ諸国に圧力を掛けることにする。そうすれば石油等の資源で潤っているプーチン政権への大きな制裁になり、戦争遂行能力にダメージを与える」
と言い始めた。
あの「大見え」の割には、何と迂遠なことか。
その一方で、イスラエルのガザ戦争は、トランプの大統領就任式の2日前に「停戦合意」を見ている。これは親イスラエルであるトランプが「無駄な人殺しは止めよ」と就任前に叫んでいたのが功を奏したようだ。
衰退しつつあるとはいえ現在なお最大の経済国家、最大の軍事国家であるアメリカのトップの動向は大きいものがある。新大統領トランプの「アメリカファースト」政策の功罪やいかに。
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