今年のノーベル賞の平和賞に日本の被爆者団体「日本原水爆被害者団体協議会」(通称・被団協)が選ばれた。
ノーベル平和賞で日本人が授与されるのは故佐藤栄作元総理以来、ちょうど50年ぶりだ。
佐藤元総理は「非核三原則」を唱えて受賞したが、今度の被団協は同じ「非核」でも根本から違う。
佐藤氏のは地政学的な絡みでの受賞だが、こちらは実際に原爆に遭遇した被害者自身が「核軍縮(非核)の差し迫った必要性を世界に訴え続けて来た」(ノーベル賞委員会の授賞理由)ことが評価された。
核兵器廃絶ではすでに7年前にICAN(NGO核兵器廃絶国際キャンペーン)が平和賞を授賞しているが、その時と同時受賞でもおかしくなかった。
被団協が設立されたのは、1954年にあの米国の水爆実験による被害「福竜丸事件」が起き、その2年後の1956年のことであった。
以来、途切れることなく原水爆禁止のスローガンを掲げてきており、国際的にも行動を広げて来た。
被団協による「ノーモア・ヒロシマ、ノーモア・ナガサキ、ノーモア・ウォー」が国連で叫ばれたのは象徴的な出来事だった。
遅きに失した感があるが、2年前半から未だに続いているロシアによるウクライナ侵略戦争で、ロシア側の指導者(戦争犯罪人)プーチンが、核兵器の使用を口の端に上せたりしたことが弾みになったのだろう。
加えて、ロシア対ウクライナではロシア側だけの核保有だが、1年前から始まったイスラエル対パレスチナの戦争では、ハマスやヒズボラといった反イスラエルゲリラ組織の核保有国イランとの繋がりが明確になった。
このイスラエルとイランの対立はまさに核保有国同士の対立であり、そうなると双方で核の先制使用が取り沙汰される可能性が出て来た。
この対立に冷や水を浴びせる意味でも、日本の核廃絶主唱団体である被団協が平和賞を受賞した意義は大きい。
しかしながら日本政府は相変わらず、「米国の核の傘による戦争抑止力は絶対に必要」と、口では「核廃絶」(昨年の広島サミットにおける岸田首相の言葉)を訴えるのだが、全くの二枚舌であり、ますます世界の顰蹙を買うに違いない。