昨日は鹿屋市のシルバーセンターで『男はつらいよ』を15名ほどで鑑賞した。
シリーズ第11作目の副題「寅次郎忘れな草」で、浅丘ルリ子がマドンナ役である。
浅丘ルリ子は寅さん映画にマドンナとしては最多の4回も登場するのだが、この11作が初めての出演となる。
浅丘ルリ子の役柄は地方回りの歌手「リリー」だが、大物ではないからマネージャーはつかず、ひとりで各地のキャバレーなどで唄って生きている。
北海道の網走で寅さんと知り合い、二人は束の間の意気投合を見せる。
というのも、リリーの生い立ちと寅次郎の生い立ちに重なるものがあったからだ。
リリーは「中学校を卒業して以来、故郷を離れて帰っていないのよ」と打ち明けるのだが、寅次郎は「俺も似たようなものだ」と返す。
さらに「どっちもあぶくのような人生だな」と寅次郎。その喩えに「風呂に入っている時にする屁のようなものだ。背中を回って上って行ってすっと消えるんだよ」
聴いていたリリーは可笑しくてしようがない。そしてそんな寅次郎に好意を抱く。
寅次郎はリリーと別れたあと、北海道の酪農家のもとに行き、「あぶくのような人生」に訣別すべく仕事を請け負うが3日ほどで音を上げ、寝込んでしまう。
やはりそれまでの「あぶくのような人生」から飛躍はできなかった。
そんな寅次郎を妹のさくらがわざわざ迎えに行く。
このあたりはさくらが寅次郎の保護者のようだ。実際、寅次郎はさくらを母親の代わりとして甘えている。
柴又に帰った寅次郎を追うようにリリーが柴又に現れる。地方で知り合ったマドンナが柴又の「とらや」にやってくるのは寅さんシリーズの定番だが、リリーは何と「とらや」の茶の間で早くも寅次郎に愛の告白をする。
「あたしは男から好かれようとは思わない。こっちから好きな男に死ぬほど惚れてみたい」と言いながら・・・。
慌てた寅次郎は例によって知らないそぶりをするのだが、リリーもそこを読み取って「冗談よ」と言い足す。
この寅次郎の「失恋」はいつものようには終わらない。
東京に仕事にやって来ていたリリーはキャバレーで客からイヤな目に遭ったと、泥酔して夜遅くとらやに訪ねて来るのだが、そこで寅次郎に吐いたセリフが泣かせる。
「寅さんはいいわね、こんな温かい家があるんだもの。あたしなんかと違うんだよ」
そのまま寅次郎が止めるのも聞かずに、リリーは「とらや」を後にし、行方知れずとなる。
だが、東北への商売の途中でまたリリーに出くわし、リリーとの関係はまだまだ続くことになる。
※まだ全48作のすべてを見てはいないのだが、マドンナ「リリー」に扮する浅丘ルリ子の演技はこれまで見た中では最も光っている。キャバレーで唄う浅丘ルリ子の声も素晴らしい。