鴨着く島

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トランプ大統領「パナマ運河」でまた吼える(2025.02.06)

2025-02-06 09:34:57 | 専守防衛力を有する永世中立国
ウクライナ戦争の即時停戦の「公約」は空振りに終わったトランプ大統領だが、もう一つの「メキシコ・カナダへ25%、中国には10%の関税上乗せ」という「公約」も、中国に対しては一昨日に発動したが、メキシコ・カナダへの関税は1か月の猶予とし、3月初めに延期になった。

このフェイクっぽいやり口は、トランプ大統領一流の「まずは恫喝して、相手をうろたえさせ、その後に落としどころを決める」という手法のようだ。

俗に言う「ゆさぶり作戦」だが、日本の政治家は無論、他のどこの政治家もまねできないだろう。「超大国アメリカ」という自負あればこそのやり方だ。

その中で、パナマ運河の管轄権をアメリカに返還せよ――というのには、蒙を開かれた。

アメリカが1903年のパナマ国が独立した直後に、運河建設がアメリカ主導で始まった(1914年に完成)のだが、その際に結ばれたパナマとの条約で、建設する代わりに運河の永久管理権を認めさせ、そこに米軍を常駐させることになった。

ところが1977年になってアメリカの永久管理に対する反発を受けて、運河の「永久中立」を盛り込んだ新条約が締結され、1999年にアメリカは管理権を返還し、さらに米軍を撤退させた、という。

その後、パナマ政権に反米的なノリエガ将軍が立つと、アメリカは将軍を排除しようとパナマに侵攻している。

現状は反米ではなく、といって親米でもないようだが、このパナマ国の対中国接近の結果、パナマ運河の大西洋側と太平洋側のそれぞれの出入り口の管理運営に香港の会社が進出しているそうだ。

この香港の会社が中国の「一帯一路」プランに添っている――というのがトランプ大統領の危機意識に上ったに違いなく、彼はもう一度パナマ運河の建設に中心的な役割を果たしたアメリカに管理権を取り戻そうと考えているのだ。

これ自体ある意味では正当な訴えで、いくら中国の対米輸出になくてはならないパナマ運河とはいえ、中国系の企業が運河の出入り口を抑えて、あらゆる国の船舶の通行料金を収入源としている姿は気持ちの良いものではない。

トランプ大統領が中国への関税上乗せという経済制裁を科している中で、この中国系企業が果たして公正かつ平等でいられるかどうかが焦点になる。

アメリカの対中国紛争がこのあたりで最初に勃発する可能性もなしとしない。

クワバラ、クワバラである。

もっとも私が、この新聞記事を見た時にはっと思ったのは、上の文中で下線を引いた箇所を読んだ時であった。

アメリカの永久管理に反発したパナマが1977年にアメリカとの間で運河の「永久中立」をうたった新しい条約を結んだというのである。その結果22年後の1999年になって、米軍が撤退したのだ。

これを私は日本の米軍駐留に拡大解釈してみたい。

石破新総理は対米認識として「両国は強固な同盟国であり、更なる高みに立って行く」という趣旨のことをこれまでの国会演説や答弁で述べているが、日米同盟の根拠は1951年9月のサンフランシスコ平和条約締結の直後に結ばれた「旧日米安保」で、その後10年後の見直しで「新安保」になり1970年からは自動延長という名目で、米軍の駐留は引き続き行われるようなり、今年で75年目。

その後も日本は国際紛争に国連監視団の一員として自衛隊を派遣し、いくつかの監視団要員として出かけるようになったが、安倍政権と岸田政権では「安保関連三法」などで法的に自衛隊と米軍と一緒の軍事行動が可能になった。

今、台湾への中国の侵攻が行われるのではという危機感の下で、台湾独立を容認しているアメリカ中心の国際的防衛網が南西諸島を中心に築かれつつあるが、これはもとより日米安保が根拠となっている。

この日米安保によって日本はアメリカの対中国攻撃及び防衛の「前線基地」となり「楯」の役割を担うのだ。

石破首相の言う「更なる高み」とはこのことなのか。とんでもない話である。

いくら日本と親密な台湾と言えども、いざ中国が台湾に対して軍事行動を起こしたら台湾に米軍とともに自衛隊を派遣することになる。

そうなれば日本も中国の敵になるわけで、南西諸島のみならず、本土も攻撃の対象になるだろう。中国のロケット打ち上げ技術の高さからして、基地の多くがピンポイント攻撃にさらされるに違いない。

中国軍は「一般市民は狙わず、軍事基地及び武器弾薬庫だけを狙っている」という自己中な建前論を表明しながら市街地を破壊するだろう。

こうならない前に日本は日本の立ち位置(戦後80年間一度も戦争をしなかった平和国家)として「全方位的」に融和を訴え続けなければなるまい。

ただその際に日本の主張が「アメリカの言い成り」として軽んじられては困る。日米安保による米軍の支配がちらつくようでは信用度は大きく落ちるだろう。

対中、対ロ融和、特に後者の場合、あれだけ安倍元首相が「2島返還で良いから平和条約を結ぼう」とプーチンに何度も会って訴えたにもかかわらず、結局プーチンから取り合ってもらえなかったのは日米安保がネックになっていたのだ。

戦後80年を契機に日本とアメリカの間の相互軍事援助条約は廃棄し、同時に「永久中立(永世中立)」を宣言し、国際的に信用される平和国家に成りたいものだ(当然、原水爆禁止条約国となる)。